- ベレリアンドのナンドール・エルフの統率者デネソール(Denethor)については、デネソール(レンウェの息子)を参照してください。
- ゴンドールの統治権を持つ10代目の執政デネソール一世(Denethor I)については、デネソール一世を参照してください。
デネソール二世†
概要†
カテゴリー | 人名 |
---|---|
スペル | Denethor II |
種族 | 人間(ドゥーネダイン) |
性別 | 男 |
生没年 | 第三紀2930~†3019年3月15日(享年89) |
親 | エクセリオン二世(父) |
兄弟 | 少なくとも2人の姉*1 |
配偶者 | フィンドゥイラス |
子 | ボロミル(息子)、ファラミル(息子) |
解説†
ゴンドールの統治権を持つ26代目の執政にして、実権を持った最後の執政。ボロミルとファラミルの父。妻はドル・アムロスの大公イムラヒルの姉であるフィンドゥイラス。
次第に暗くなっていく時代で王が不在のゴンドールを統治した。
老練かつ賢明な支配者であったが、非常に自尊心が高く、他者にも自身にも厳しい性格だった。
彼なりに妻のフィンドゥイラスを深く愛していたが、彼女が早逝した後は以前にもまして寡黙で気難しくなったという。二人の息子のうち、自分に似ていない兄のボロミルを特に寵愛していた。弟のファラミルには冷酷に接することが多かったが、心の奥底ではファラミルのことも愛していた。
またその自尊心ゆえ、ゴンドールに現れた王位継承者であるアラゴルンと、その援護者であるガンダルフを警戒していた。
壇の下の広くて奥行きのある一番低い踏段に、黒くて飾りのない石の椅子が一脚あって、そこに一人の老人が自分の膝を見つめながら坐っていました。手には金の飾りのついた白い杖が握られていました。 …
その時老人は顔を上げました。ピピンは堂々たる骨形と象牙のような皮膚の彫りの深い顔貌を見ました。暗色の深くくぼんだ目と目の間には湾曲した長い鼻がありました。かれはボロミルよりむしろアラゴルンを思い出させました。*2
若年期†
第三紀2930年、ゴンドールの執政エクセリオン二世の嫡男として生まれる。
デネソールの若年期にサウロンがモルドールに帰還し、その脅威はいよいよ大きなものとなっていった。父エクセリオンはゴンドールの助けとなる者なら誰であれ重用し、わけてもソロンギルと呼ばれる北からやってきた武将は陸海で活躍、ゴンドールの大将として人々の名望を集めていた。
当時すでにデネソールは老練さと賢明さを備えていたのみならず、剛勇にも優れた武人であったが、父からも周囲からも常にソロンギルに次ぐ者と見なされていた。
ソロンギルの正体はイシルドゥルの世継である北方の野伏の族長アラゴルン二世であったが、デネソールは当時からその正体に気付いており、自身の立場を脅かす存在として大いに警戒していたという。やがてソロンギルは異国へ去ったが、いずれ執杖を受け継ぐデネソールの競争者となるのを避けたのだと考える者が多かった。
ソロンギルが去った四年後にエクセリオンが死ぬと、デネソールは執政位を継承してゴンドールの実質的な統治者となった。
執政として†
執政となったデネソールは、老練な支配者として知られるようになる。彼は賢明だが頑迷でもあり、助言には耳を傾け、しかるのち自らの思いに従って物事を決めた。
彼の代にガンダルフはゴンドールでほとんど歓迎されなくなったが、これはソロンギル(アラゴルン)と親しいガンダルフをデネソールが警戒したためであった。だが下の息子のファラミルはガンダルフを敬愛し彼に師事したため、デネソールの不興を買った。
デネソールとファラミルは西方の血が強く発現しており、遠くを視ることも、人の心を読み取ることもできた。特にデネソールは遠方の物事を詳細に見知ったために人々から驚嘆されたが、後にわかったようにそれはパランティールの使用によるためでもあった。
自らの代にモルドールから攻撃が加えられると予見したデネソールは、ミナス・ティリスを守るランマス・エホールの防壁を再建・強化させるとともに、イシリエンの遺民を募ってイシリエンの野伏を編成し、かの地での偵察と遊撃の任務に当たらせた。
上の息子のボロミルは西方の血をほとんど発現していなかったが、剛勇に優れた大将としてゴンドールを防衛し、人々の支持を一身に集めていた。そんなボロミルをデネソールは他の何にも増して愛した。
パランティールの使用†
デネソールは即位後まもなくから、広がりゆくモルドールの影の脅威と、自尊心の高さから、それまでの執政があえて試みなかったパランティールを密かに使用するようになっていた。
彼はアノールの石を通じてイシルの石を持つサウロンと戦い、国内外の情報を集めていた。
だがパランティールの使用とサウロンとの戦いは、頑強な精神の持ち主であるデネソールをも消耗させ、彼はドゥーネダインにしては異例なほど早くに老け込んでいった。また、サウロンはデネソールを支配することはできなかったものの、映し出す映像を捻じ曲げることで実際以上にモルドールの戦力を強大に見せ、デネソールを次第に絶望に追いやっていった。
妻のフィンドゥイラスが早逝したのも、一つには心優しい彼女がそれに気付き、心を痛めたためであったという。ボロミルに次いで妻を愛していたデネソールはフィンドゥイラスの死後、ますます頑迷になっていった。
ついには自分に仕えるのでなければ何者も信用せず、戦の趨勢はすべて自らとサウロンとの精神の対決の結果もたらされるものと信ずるに至ったという。
指輪戦争†
大いなる年、サウロンはいよいよ大兵力でもってゴンドール攻撃を開始し、指輪戦争が始まった。
オスギリアスはボロミルとファラミルによって辛うじて防衛されたが、やがてファラミルが夢の中で繰り返し謎のお告げを受けるようになる。デネソールはその言葉の内、「イムラドリス」が裂け谷を指す古称であることのみを兄弟に教える。そのためファラミルはお告げの謎解きを乞うため裂け谷を求めて旅立とうとしたが、危険であるとしてボロミルが代わって志願した。デネソールもファラミルもこれに反対したものの、ボロミルの決意を変えることはできず、ボロミルは裂け谷で指輪の仲間に加わった末、パルス・ガレンで命を落とした。
ボロミルが最後に吹き鳴らした角笛の音は、はるか遠くのゴンドール領内にいたデネソールとファラミルの耳にまで届いたと言われており、後に二つに割れた角笛がアンドゥインで発見され、手許にもたらされたことで、デネソールはボロミルの死を悟る。
やがてモルドールによるミナス・ティリス包囲が近づき、デネソールは七つの烽火山に点火してローハンの救援を求めるとともに、ドル・アムロスをはじめとする辺境の諸侯国から援軍を呼び寄せる。城下の人々は疎開させられてミナス・ティリスは戦時体制となり、デネソール自身も率先して質素な食事を執り、常時鎖帷子と剣を身に帯びる武装した生活を送っていた。
ボロミルの死の真相は、指輪の仲間の一人であったペレグリン・トゥックがガンダルフに連れられてやってきたことで明らかとなった。だがデネソールは息子を失った悲しみすら手段として使い、ペレグリンの心から一つの指輪の行先やアラゴルン二世の到来をも読み取った。デネソールのガンダルフへの不信は弱まるどころではなく、加えて指輪をモルドールに送ったのはデネソールにとっては愚の骨頂としか思われなかった。
だがペレグリンは、ボロミルに命を救われた恩に報じるためデネソールに奉公を申し出る気高さを見せ、冷えて頑なになっていたデネソールの心をも感動させる。デネソールはペレグリンの奉公を嘉納して城塞の近衛兵としてそばに置き、彼なりに優しい態度でペレグリンに接した*3。
だがボロミルの死を惜しむデネソールは、ファラミルに対してはいよいよ冷淡かつ過酷に接するようになる。
モルドールから出撃した大軍によってアンドゥインの通行権が危機に陥ると、デネソールはファラミルをアンドゥイン防衛のための望みない戦いに赴かせた。そのためファラミルは負傷し、黒の息に侵され、高熱で意識不明のまま都に帰還する。
瀕死の息子を目にしたデネソールは、ようやく自分が心の奥底でファラミルを愛していることを悟った。
狂気と死†
「燃えておる、もう燃えておる。やつらはあれの
身内 に火をつけおった。だがまもなくすべてが燃えるわ。西方世界は衰微した。すべては劫尽の大火となって燃え上がり、一切が終わるのだ。灰だ! 灰と煙となって風に運び去られるわ!」*4
ただ一人残った息子が瀕死に陥ったことで、さしもの強靭なデネソールの精神もついに挫ける。デネソールは気力の弱った状態でパランティールを使用し、サウロンに捻じ曲げられて実態以上に強大に見せかけられたモルドールの軍勢の映像を目撃して絶望、ついに狂気に陥った。
デネソールは臥せるファラミルと共に白の塔に引きこもってペレンノール野の合戦の指揮を放棄し、やがてペレグリンを侍従の任から解くと、ラス・ディーネンの執政家の廟所に赴いて意識不明のファラミルを巻き添えにした焼身自殺を図った。
これはベレゴンドの抵抗によって遅らせられ、ついにペレグリンに連れられてガンダルフが現場に到着したことでファラミルは救出される。するとデネソールはパランティールの秘密を明かして自由の民には希望など残されていないと示し、ガンダルフを自分から統治権と息子と臣下の全てを奪っていく者だと見なすと、執政の杖を折り、燃え盛る薪の上に身を横たえて命を絶った。
デネソールはアノールのパランティールを抱えたまま焼身自殺し、以後この石は非常に強い意志の持ち主によらなければ、火の中で焼けて萎びていく老人の手しか映らなくなったという。
ゴンドールの執政職は回復したファラミルが継ぎ、彼の下で王の帰還がなされたため、デネソールは実質的なゴンドールの統治権を持った最後の執政となった。
略歴†
- 2930年 生誕。
- 2951年 21歳。サウロン、モルドールで公然と名乗りを上げる。
- 2954年 24歳。滅びの山が噴火し、イシリエンの住人が逃げ去る。
- 2957年 27歳。ソロンギルがゴンドールにやってくる。
- 2976年 46歳。フィンドゥイラスを娶る。
- 2978年 48歳。ボロミル生まれる。
- 2980年 50歳。ソロンギルがゴンドールを去る。
- 2983年 53歳。ファラミル生まれる。
- 2984年 54歳。エクセリオン二世逝去。執政位を継ぐ。
- 2988年 58歳。フィンドゥイラス逝去。
- 3000年 70歳。モルドールの影伸びる。
- 3017年 87歳。ガンダルフがミナス・ティリスを訪問。彼に古文書閲覧の許可を与える。
- 3018年 88歳。大いなる年。オスギリアス攻撃される。ボロミル、裂け谷を求めて旅立つ。
- 3019年 89歳。大いなる年。ボロミルの死。ファラミルの負傷。ペレンノール野の合戦。3月15日、焼身自殺。
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映画『ロード・オブ・ザ・リング』における設定†
原作では、ファラミルが負傷するまでは冷静かつ合理的に軍の指揮を行い、ローハンへの援軍要請などを行っている。だが映画では、ローハンへの援軍要請のための烽火を点火させず、赤い矢もローハンに送っていない(狼煙は、ガンダルフに指示されたペレグリン・トゥックが点火した。赤い矢は登場しない)。一方で、ファラミルに無謀なオスギリアス奪回を命じるなど、最初から非常に高い自尊心、ガンダルフへの猜疑心などが示されている。
デネソールがパランティールを使っていたという設定は登場しない。彼はミナス・ティリスに迫り来るモルドールの軍勢を肉眼で見て、それで絶望する。またベレゴンドも登場しない。
ファラミルを巻き込んで焼身自殺を図る点は同じだが、死亡の状況はやや異なり、飛蔭に蹴られて火が燃え移ったまま都の第七層まで疾駆し、大岩の先端から投身する形になっている。
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ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
二人の姉の名前はヴァンヤロス(Vanyalos)とテレニス(Terenis)となっている。うちヴァンヤロスはロッサールナハの領主フォルロングの、テレニスはレベンニンの領主(名前は不明)の妻となっている。
コメント†
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