- 実写映画のホビット(The Hobbit)については、ホビット(映画)を参照してください。
ホビット†
概要†
カテゴリー | 種族 |
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スペル | Hobbit(単) / Hobbits(複) |
その他の呼び名 | 小さい人(Halflings)*1 ホルビュトラン、ホルビトラン(Holbytlan) フェリアンナス、ペリアンナス(Periannath) |
解説†
『ホビットの冒険』『指輪物語』の主人公ビルボ・バギンズとフロド・バギンズらが属する種族。
一般の人間よりもずっと小柄な小人で、地面に掘った穴の住居に住み、多くの者はたっぷりの食事と平穏な日常を何より愛する。だが、容易に逆境に屈しない芯の強さも隠し持っていた。
この種族がどうやって中つ国に生まれたのかは、アイヌリンダレなどには示されておらず、上古の歴史にも登場していないため、来歴ははっきりしていない。ただ、人間(イルーヴァタールの乙子)の一支族であるのは間違いがないとされている。
奇妙な生き物に満ちていた当時の中つ国にあって、ホビットは内向的でエルフやドゥーネダインの歴史に係わることがほとんどなかったため、ホビット庄のあるエリアドール付近を除き、その存在は他の種族にまったく知られていないか、あるいは無視されていた。ただロヒルリムの間に「北方には地面に穴を掘って住むホルビュトランがいる」という伝承がわずかに伝わっているのと、ゴンドールに「フェリアンナス」という語彙が残されている程度であった。*2
賢者達の中で灰色のガンダルフだけはホビットと親しく交流し、ホビット学に暁通するに至っていた。
「ホビットというのは、まことに驚嘆すべきともがらじゃ。わしがかねていっておった通りじゃぞ。ホビットの暮らし方ぐらい一カ月もあれば知り尽くせる。ところが、百年つき合ってみたって、いざという場合のホビットたちには驚かされるほかはないな。」*3
特徴†
外見†
美しいというより、人の好い顔立ち。髪の毛は巻き毛で、色は一般に茶色(ごく稀に金髪)。ストゥア族のみ顎鬚が生え、その血を濃く受け継ぐ東四が一の庄の住人も顎鬚を生やす。作中では触れられていないが、ホビットの耳は僅かに尖っているとする記述をトールキンは残している。*4
身長は第三紀末では3フィート以上4フィート以下(約90~120cm)だったが、現代では2フィート以上3フィート以下(約60~90cm)と縮んでいる(ランガの項も参照)。大抵は太って腹が出ている。ホビットの間では痩せることは異常事態と見なされた。
足は足首から下が毛で覆われており*5、足裏が革のように丈夫なため、靴は履かずに裸足で過ごす。ただし東四が一の庄では、雨でぬかるむ日にはドワーフの長靴を履く。
能力†
寿命は90~110歳程度。33歳で成人と見なされる。
身を隠す技に熟達しており、普通の人間やドワーフでは不可能なほど密やかに動き、いざとなれば素早く姿をくらませることができる。視力と聴力も鋭い。
力は強くなく蛮勇を奮うこともないが、特に精神的な耐久力が高く、困難な状況や外圧に対しては驚くほどの頑強さを示し、いよいよの時は大胆不敵となる。やむを得ず戦う時には投石が得意で、また鋭い視力をもった優秀な弓の射手にもなる。
手先は器用だが、過剰な細工物や工芸品に打ち込むということは少なく、水車や手漕ぎ車といった仕掛け以上に複雑なものを発明しようとはせず、好まなかった。
泳げない者が多いため、一般的に水場や舟に乗ることなどを恐れ(ストゥア族や、その流れをくむブランディバック一族などはこの限りではない)、海を「死のしるし」と捉えていた(もっとも実際に海を見て、その話を聞かせたというホビットは皆無に等しかった)。塔のような、二階以上の高さのある建物も好まず、高い場所にいると落ち着かなかった。
文明・文化†
素朴な農耕民族。狩猟を行うものは弓矢を使う。食べることを好み、可能なら一日に6回食事をし、なるべく正餐を2回食べる。そのため料理も得意であり*6、時間の多くを食料を生産することと消費することに費やす。またパイプ草を吸うという芸当はホビットから始まり、他の種族に広がっていった。
親戚血縁関係を重視する。お茶会やパーティを頻繁に開くことを好み、自分の誕生日には他人に贈り物をする習慣がある。“今すぐ使うことはないが、捨てる気にはならないもの”をマゾムと呼んで溜め込む習性があり、マゾムを贈り物にすることも多い。
争い事を好まない。第三紀末には非常に内向的な種族になっており、ホビット庄の民は庄外の世界のことにはほとんど関心を示さなくなっていた。元来はアルノールの法などに由来する古くからのしきたりと、平凡な生活を非常に愛し、そこから外れるような行動を白眼視する傾向が強い(トゥック一族は、ホビットの中でも「変わり者」が多いことで知られていた)。
服は明るい色(特に緑と黄色)のものを好む。
住居†
緩やかな丘の斜面に、穴を掘って住居としたホビット穴に住むことを好む。丸いドアと円い窓がホビット穴の特徴だった。袋小路屋敷のように屋敷と呼べるほど巨大なホビット穴はスマイアルと呼ばれる。
やむを得ず地上に家を建てることもあるが(作業用の仕事場はいつも地上に建てていた)、できるだけホビット穴に似せて丸いドアと窓を付け、ずんぐりと横に膨らんだような外見にした。その場合でも城や塔のような、巨大で二階以上の高さのある建物は造らず、好まない。建築の技術はドゥーネダインからもたらされたものと思われるが、エルフからもたらされた可能性もあるとされる。
氏族†
アンドゥインの谷間にいた頃は多い順にハーフット族、ストゥア族、ファロハイド族の三つの支族があったが、第三紀末にはほとんど混血している。ハーフット系がホビットの大部分を占めるが、トゥック一族やブランディバック一族など、ファロハイドやストゥアの特徴を強く受け継いでいる者達もあった。
言語†
アンドゥインの谷間にいた頃は、近隣に住んでいた北国人の言葉である、ローハン語の古語に近い言葉を使っていたと思われるが、エリアドールへの移住に伴い西方語を使い始め、ブリー郷に定住する頃には本来の言葉は廃れていった。だが、彼らの西方語にはホビット庄独特の響きや用法があり、アルノールやローハン、ゴンドール等のそれとは違いがあった。また一部の古い固有名詞や名前には、かつての彼ら自身の言葉が残っていた(マゾム、スマイアルなど)。一方それとは別に、ストゥア族の流れを汲む者たちが用いた風変わりな名や語もあった。これはストゥア族が
文字を書く習慣は、アルノールのドゥーネダインから学んだと思われる。文字を理解するホビットは全体の半数程度だが、その者達はしげしげと親戚縁者に手紙を書いた。
偏見†
他の種族とほとんど関わりを持とうとしない。かつては人間や、東街道を東西に旅するドワーフと交流があったが、それもどんどん少なくなっていった。しかしブリー郷のホビットは人間と共に暮らしている。ホビットは人間のことを「大きい人」と呼び、しばしばその鈍重さを馬鹿にした。また一般的に、エルフとかかわりを持つことを怖れる(ファロハイド族はこの限りではない)。
歴史†
他の種族の歴史には登場せず、彼ら自身による歴史も存在しないか散逸したため、詳しいことはわかっていない。
記録を遡れる限り、第三紀の初めから中頃にかけてはリョヴァニオンのアンドゥインの谷間の上流域に住んでいたらしい。近隣には北国人(ロヒルリムの祖先)がおり、彼らの文化や言語から少なからぬ影響を受けたことがわかっている。1050年ごろから(おそらく緑森大森林の影を恐れて)西方への移動を始め、複数のルートに分かれて霧ふり山脈を越えてエリアドールに入った。1300年頃にはブリー郷にその最古の居住地を築く。
1601年、アルセダイン王アルゲレブ二世より許可を得て、ブリー郷からマルコとブランコの兄弟に率いられた多くの者がバランドゥイン川より西の土地へ移住し、ホビット庄を築いた。
2941年のソーリンとその仲間の遠征と五軍の合戦、および3018~3019年(大いなる年)の指輪戦争によって、ホビットの存在は初めて他種族に注目されるようになり、ホビット自身も自らの歴史や文化への興味に目覚めていった。
現代でもホビットは彼らが当時から住んでいた地域、すなわち旧世界の北西部(ヨーロッパ)に住んでいる。だが今ではすっかり衰退してしまい、数も大変少なくなっている上、臆病な隠れ潜む民となっているため、発見するのは困難である。
主なホビット†
- フレデガー・ボルジャー
- ハムファスト・ギャムジー
- トルマン・コトン
- ローズ・コトン
- マゴット
- オソ・サックビル=バギンズ
- ロベリア・サックビル=バギンズ
- ロソ・サックビル=バギンズ
- テド・サンディマン
種族名について†
ホビット(hobbit)とは、彼らが自らの種族を表すのに使った言葉であり、元々はストゥア族とファロハイド族がハーフット族に付けた名と考えられている。そしてその語源はローハン語にホルビュトラ(holbytla)の形で残る語*7と思われる。
他の種族からは主に西方語で小さい人(halfling)と呼ばれた(直訳は「半分の者」であり、この呼称に関してはランガの項を参照のこと)。ホビットにしてみれば自分たちは何も半分(half)ではないため、このような呼称はあまり好まなかった。
ホビットたちがゴンドールを訪れたときには、シンダリンで‘halfling’の意であるペリアン(perian)と呼ばれた*8。
ホビットとは、ホビット庄およびブリー郷で用いられたクドゥク(kuduk)の名をトールキンが英訳したものにあたる。クドゥクは、元々のローハン語で「穴に住む者(hole-dweller)」の意の、kûd-dûkan(クード=ドゥーカン)が語源と考えられている。このkûd-dûkanを古英語として表現したのが「穴の家を造る者(hole-builder)」の意のホルビュトラである。
小さい人(halfling)にあたる西方語の原語はバナキル(banakil)であった。
ローハン語での呼称 | ホビットの自称 | 西方語での他称 | シンダリンでの呼称 | |
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西境の赤表紙本における原文表記 | kûd-dûkan | クドゥク(kuduk) | バナキル(banakil) | ペリアン(perian) |
トールキンによる翻訳表記 | ホルビュトラ(holbytla) | ホビット(hobbit) | 小さい人(halfling) | ペリアン(perian) |
ハーフリング(小さい人)†
ハーフリングは、「小さい人」の英語表記であるHalflingをそのまま片仮名にしたもので、一部の翻訳ではこの表記になっている。この表記による種族は、トールキンによる作品以外でも使われている。詳細は他作品に与えた影響を参照。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』では、Halflingの言葉が使われているところも軒並み「ホビット」と訳されている(ラーツが'Halflings'を捕らえろと部下に命じている場面など)。
ゲーム『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における設定†
プレイヤーの種族として選択が可能。マップにはホビット庄が再現されているほか、ホビットが東方から西方(ホビット庄)へと移住したという原作の設定を独自に解釈し、移住前に分離した子孫の生き残りがエテン高地やエネドワイスなどに小さな集落を作っている。またアンドゥインの谷間では、かつてあやめ野に住んでいたホビットの集落を見出すことができるが、既に廃墟となっており、一つの指輪の痕跡を探す白の手の者達に占拠されている。谷間の上流域である、ラングフラッドの源泉(Wells of Langflood)には、西方へ移動を行わなかった一族の集落がある。
また冒険に出かけた、主にトゥック一族のホビットのNPCを、ホビット庄の外で見かけることがある。
ホビットのうち、霧ふり山脈の東に残った一族(スメーアゴル、デーアゴルの一族)としてRiver Hobbitという種族が設定されており、プレイヤーキャラクターとしても選択可能。
他作品に与えた影響†
テーブルトークロールプレイングゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Wikipedia:ダンジョンズ&ドラゴンズ)』で、小さい人(Halfling)に由来する“ハーフリング”という種族がプレイアブルキャラクターとして登場していることで有名。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』初期の版では、種族名に“ホビット”がそのまま使われており、種族の特徴もトールキンによるホビットの設定をほぼそのまま使っていた。だがエルフやドワーフといった単語・種族と異なり“ホビット”はトールキンによる完全な造語・設定かつ書籍のタイトルでもあったため(『ホビットの冒険』の原題は“The Hobbit”)、著作権的理由により『ダンジョンズ&ドラゴンズ』での種族名は“ハーフリング”に変更され、種族の特徴にもアレンジが加えられた。
その後『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の流れを汲む『ウィザードリィ』などのゲームなどで“ホビット”の名称がさらに使い続けられたケースもあるが、他のファンタジー作品でも“ハーフリング”という名の種族が登場するようになり、種族名や特徴にさらなるアレンジも加えられたものも登場するようになっている。
映像化作品では、1988年に公開された映画『ウィロー』において、ネルウィン族という低身長の種族を描いていることが有名(実際に身長が低い役者を集めて撮影が行われた)。
備考†
インドネシアのフローレス島で2003年に発見された、小型のヒト属の可能性がある化石はホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis)と命名されているが、ホビットの異名がある(Wikipedia:ホモ・フローレシエンシス)*9。
Include/ホビット†
コメント†
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