みず辺村べむら合戦かっせん

概要

カテゴリー歴史・事件
スペルBattle of Bywater
異訳水の辺村の戦い
その他の呼び名ホビット庄の掃蕩(Scouring of the Shire)

解説

第三紀3019年ホビット庄暦1419年)11月3日に行われた、指輪戦争最後の戦い。緑野の合戦以後にホビット庄で戦われた唯一の合戦でもある。

サルマンの手下である人間ごろつきが支配するようになっていたホビット庄に、後に旅人たちと呼ばれるフロド・バギンズサムワイズ・ギャムジーペレグリン・トゥックメリアドク・ブランディバックが帰国。彼らはホビットを蜂起させ、水の辺村においてごろつきの一団と衝突の末これを撃退した。

開戦にいたるまで

第三紀2851年の白の会議ガンダルフからホビットパイプ草のことを聞かされたサルマンは、ガンダルフがこの種族を大いに気にかけていることを訝しみ、ホビット庄を詮索するようになる。それとともに入手したパイプ草に夢中になったサルマンは、南四が一の庄にパイプ草農園を持つサックビル=バギンズ家と密かに取引をはじめ、指輪戦争が迫る頃には大量の軍需物資を同家から調達するようになっていた。

その結果、莫大な資金を手に入れたロソ・サックビル=バギンズは、それを元手に庄内各地の農場や生産施設、旅籠屋などを次々と買収。その労働力としてサルマンの息のかかった機械仕掛けやごろつきを庄内に引き入れるようになり、次第に庄の実権を掌握するようになった。
この横暴に抗議しようとした庄長である小足家のウィルがごろつきにより留置穴に監禁されると、ロソは庄察頭転じて「お頭」を名乗り、大幅に増員した庄察の権威とごろつきの暴力をかさに庄民の暮らしを徹底して統制するまでになる。
これに反発したセインパラディン・トゥック二世大スマイアルに籠城して徹底抗戦の構えを見せたため、ごろつきは武装してトゥック郷を包囲。両者は膠着状態のままにらみ合う形となった。

一方、指輪戦争アイゼンガルドは陥落し、サルマンは荒野をさまよう乞食となる。サウロンの没落後、故郷へ帰還する指輪所持者の一行に行きあったサルマンは、ホビットへの恨みから彼らの故郷をめちゃくちゃに破壊することを目論み、9月に自らホビット庄へやってきた。
ごろつきの親玉「シャーキー」として庄に君臨したサルマンは、ロソを監禁・殺害するとともに、ごろつきに命じてホビット庄全土を荒廃させていった。

3019年11月1日、4人の旅人たちであるフロド・バギンズサムワイズ・ギャムジーメリアドク・ブランディバックペレグリン・トゥックがホビット庄に帰郷し、故郷がごろつきに占拠されていることを知る。11月2日に緑竜館前で待ち構えていた6人のごろつきを斥けた旅人たちは、故郷をごろつきの支配から解放することを決意する。

「だめだ。ぼくたちは今すぐ何かしなければいけない。」
「するって、何を?」と、ピピンがいいました。
「ホビット庄を立ち上がらすのだ!」と、メリーがいいました。*1

メリアドクが吹き鳴らしたマークの角笛に呼び出された水の辺村の住人は、お百姓のコトンを筆頭に蜂起を決意。報復のためホビット村から引き返してきたごろつきの一団を撃退し、隊長を射殺して20名を捕虜とした。
その間ペレグリンはトゥック郷に赴いて水の辺村蜂起の報をもたらし、セイン・パラディンは撃って出て包囲陣のごろつきを敗走せしめる。
そしてセイン蜂起の報は庄内各地に飛び火することとなった。

「水の辺村の合戦」

11月3日朝、セインパラディンが遣わした100人の援軍を連れてペレグリンが到着し、総勢数百人のホビット水の辺村に集結する。一方、ホビットの蜂起を鎮圧するため100人ほどのごろつきみつまたに集結、水の辺村に迫っていた。偵察を放って無警戒な敵の情報を十分獲得したホビット側は、メリアドクとペレグリンの指揮の下ごろつきの一団を迎撃する準備を整える。

ホビットは東街道から分かれた水の辺村へ向かう道の曲がり角の先に荷車の遮蔽物を設置し、道の両側の生垣の上にずらりを射手を配置。道を曲がってまんまと遮蔽物に行く手を阻まれたごろつきの一団は、荷馬車からなる別の遮蔽物で退路も断たれることになった。メリアドクは居並ぶ射手を示して投降を呼びかけたが、これに応じようとしたのは一部のごろつきだけでそれも仲間に襲われ、大部分のごろつきは囲みを突破しようと抗戦した。
まず20人ほどのごろつきが後ろの遮蔽物を突破しようとして6人が射殺され、残った者がホビットを2人殺して囲みを突破して末つ森の方向へ逃走した。だがすでに一帯のホビットすべてが蜂起していたため、遠くまで逃げ延びることはできなかった。残った80人ほどのごろつきはめいめい囲みにとりついたが、包囲を突破することはできず大部分が弓と斧により倒された。
ごく一部の獰猛なごろつきだけが西へ囲みを突破することに成功し、逆にホビットを攻撃したが、東から回ってきたメリアドクとペレグリン率いる一隊に迎え撃たれ、ウルク=ハイに似た首領格がメリアドクによって討ち取られた。
メリアドクが手勢を後退させてごろつきの残党を射手の円陣の中に包囲したことで、戦闘は終了した。

ごろつきは70人近くが死に、10人あまりが捕虜となった。ホビットは19人が殺され、30人ほどが負傷したが、この戦いでホビット庄は自由を取り戻した。

戦後

こうして一四一九年の水の辺村の戦いは終わりました。ホビット庄で戦われた最後の戦いであり、一一四七年に遠く北四が一の庄緑野行われた戦い以後ただ一つの戦いでもありました。その結果、幸運にもこの戦いによって失われた命の数こそは非常に少なかったとはいえ、それは赤表紙本の中の一章を占め、またこれに加わった者たち全員の氏名が巻きものに記録され、庄の歴史家たちはそれを諳んじていました。*2

死んだごろつき戦さ坑に埋められ、戦死したホビットは山腹の共同墓地に埋葬された。
この戦いでコトン一族は声望を高め、指揮官のメリアドクペレグリンは筆頭に記憶された。しかしフロドはとうとうを抜かず、仲間のホビットが無用な殺生をするのを留める役割を果たした。

戦いの後、フロド率いるホビットたちは袋小路屋敷に赴き、ごろつきの首領であったシャーキーことサルマンに対面する。フロドはサルマンにナイフで刺されても*3なお彼を助命しようとしたが、結局サルマンは蛇の舌に刺殺され、蛇の舌もフロドが止める間もなくホビットの射手によって射殺された。
サルマンの悪意によってホビット庄が被った損害は大きかったが、ホビットたちは懸命に働き、サムワイズの配慮と彼がガラドリエルから贈られた庭土の力もあって、その傷のほとんどは癒やされた。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • この戦いがないとフロドが西へ旅立つ意味が相当薄れてしまう。戦争して帰ってきて母国は平和そのもの、という映画版はいかにもアメリカ的。 -- 2016-06-05 (日) 14:31:07
    • サルマンとグリマの末路やホビットも理想的な種族じゃない等、あるとないとでは全然変わってくる。 -- 2016-06-05 (日) 23:52:51
  • 映画だとアクション要素の強い方が印象に残っちゃうから、これがないとフロドが影が薄くなるんだよな。 -- 2016-06-09 (木) 02:13:19
    • でも原作通りに挿入すると、輪をかけて「フロドはへたれ」とか言われそうです(汗 -- 2016-06-09 (木) 10:42:54
    • ↑それは水の辺村の合戦の有無ではなく、全般的なフロドの描き方のせいでは。映画のフロドは自主性が弱く描かれてしまっているので、そういう意見を持つ人が出るのでしょう。 -- 2016-06-09 (木) 17:08:30
      • だから「輪をかけて」と書いたんですよ。水の辺村の合戦では、フロドは息巻くホビットたちを諫める役に徹していましたから、映像化しても分かりやすいアクションシーンには、ほとんど関わらないでしょうからね。 -- 2016-06-09 (木) 20:38:01
      • でも戦闘に顔を出してるだけである程度は出番があったはず。映画はほとんどペレンノールに持ってかれてフロドたちのシーンはCMみたいな感じになってたから。 -- 2016-06-10 (金) 02:46:11
  • ワーナー兄弟社が映画もっとつくる言ってるけど、この辺の映画化もありなのかな(追加分でシャーキー末路は別にしてたか) -- 2023-04-26 (水) 13:47:06
  • 褐色国の内戦の敗者が水辺の戦いに従軍していたとされ、サルマン軍の人間の士気は低かったとされている。 -- 2023-04-26 (水) 16:18:12
    • そういやこの変な妄想する人いたなぁ…。 -- 2023-11-17 (金) 14:13:49
  • 伏兵を配した上で敵の退路を断ち包囲殲滅すると言う高等戦術は黒門の戦いから学んだんだろうな。攻守逆ではあったが。 -- 2023-11-17 (金) 02:36:08
  • 旅の途上で経験してきた戦いは文字通り戦争・戦記って感じだけど、この合戦の流れはヒャッハー達の流入の経緯も含めてヤクザとの抗争みたいな趣がある。 -- 2023-11-17 (金) 18:05:23
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