『血ぃともだち』初日舞台挨拶記事など

『血ぃともだち』初日舞台挨拶についての記事が上がっています(「初日」といってもそもそも1日の上映しかなかったんですが)。

その記事の紹介と、この映画を見ての個人的所感を書かせていただきます。

押井守監督、唐田えりか・尾碕真花・日比美思・天野菜月の主演映画“お蔵入り”寸前で「本当に参った」 1回限りの上映こぎつげ安堵 | ORICON NEWS

押井監督は「つくづく若い人と映画やるって難しいなと。その後のこともあって、本当に参った。こんなに祟られた映画初めてっていう」と苦笑い。「4年目にして、ようやく公開できたっていう。いろんなことがありすぎて、今回さすがにダメかと思った。お蔵入りになる映画があっても仕方ないかと思ったけど、そうすると、申し訳ないと。女の子たち、すごく頑張ったから。あれだけ頑張ったのに世に出ないのは申し訳ない。関係者のおかげでなんとか」と奮闘ぶりを明かした。

 押井監督は、今作の撮影について「あれだけ切迫した現場初めて。基本的に現場では怒らないんだけど、ブチ切れた(笑)。とにかく時間がない、ロケ地まで遠い。片道2時間半。泊まるお金もない。往復5時間かけて現場通って、女の子たちが若いから(夜の)8時までしか撮影ができない。とにかく時間がない」と告白。「とにかく大変な現場になっちゃった。高校生の学園モノって、だいたい(キャスト陣が)20代前半くらいだけど、リアルじゃない、実年齢の人間でやらないといけないと思ったのが運の尽きだったよね」とぶっちゃけていた。

押井守監督:「こんなにたたられた映画は初めて」 お蔵入り寸前「血ぃともだち」語る - MANTANWEB(まんたんウェブ

主人公を演じた4人について「明らかに違う人間なんだよね。異文化という言葉があるけど。リドリー・スコットという監督は、異文化をテーマにしてきた。『ブラック・レイン』『エイリアン』もそうだった。異文化をめぐる葛藤を映画にした。女子高生の世界は、異文化じゃないか?と捉え直した。女子高生という異文化とどう付き合うか?をテーマにしようとした。中盤で一シーンだけど、自分たちで撮影してもらった。スマホで好きに撮影させた。ここはぜひ見てほしい。私が一番気に入っているシーン。いろいろな方法があると改めて思った。あの表情は、僕らでは絶対に撮れない。だからといってスマホで映画を撮るのは難しいかもしれない」と語った。

 一夜限りではあるが、上映されることになり「映画に対する恩返しのつもりで作った。アニメーションで稼がせてもらった。最近はそうでもないけど(笑い)。できるだけのことをやろうとした。いつも僕が撮ってきた映画と違うんです。普通の映画です。深く考えても無駄です。女の子たちをいかに生き生きと撮るか、生命感を忠実に撮ろうとした。ひねりまくった映画とは違う。僕の狙いは、とにかく監督人生で、一回だけ若い役者さんを素直に撮ろうとした。何とも言いようがない。いつもだったらひねくれた言い方をするけど」と思いを明かした。

唐田えりから4人主役の映画「血ぃともだち」一夜限り上映会 押井守監督「女の子たち頑張った」 - シネマ : 日刊スポーツ

押井監督は「4年前の映画なので、いろいろありまして、とにかくいろんなことがありまして。本来なら今日は4~5人、かわいい女の子が並ぶはずだったんですが、今日はおやじ2人です」と話し、ワークショップで演出を担当した山口淳太氏とトークした。

監督絶対主義を掲げる映画実験レーベル「シネマラボ」第4弾で、本来なら20年4月に公開予定だったが、コロナ禍の影響もあり4回の延期があった。さらに押井監督は「若い人いろいろあるから、本当にまいった。こんなにたたられた映画初めて」と意味深に語り、お蔵入りの可能性もあったとした。

舞台挨拶では質疑応答の時間は設けられなかったため全く追求されませんでしたが、明言はしなかったものの押井氏による公開が延期になったことについての発言は単に新型コロナの影響だけではなく、出演者の芸能界スキャンダルの影響があったことを示唆しています。元々本作は2020年4月に公開予定だったということで、確かに日本で各種イベントの中止などが始まったのは2020年2月頃からですが、出演者の不倫スキャンダルが報じられたのは2020年1月。その後2020年後半には小規模な映画館での上映も再会されはじめているのに(『ビューティフルドリーマー』は2020年11月公開)、この『血ぃともだち』についてはスルーされました。また、『血ぃともだち』と同一設定が多数ある『ぶらどらぶ』第一話が2020年12月に無料配信、その後、2021年2月からオンデマンド配信開始されたことをあわせると「『血ぃともだち』はスキャンダルのほとぼりが冷めるのを待っているうちに、完全に公開時期を逸した」という感じでしょう。舞台挨拶開始前に「舞台挨拶の模様は、(マスコミによって)写真やTV放送、またDVDに収録される可能性が……」と発表されていましたが、そもそもDVDの類いが発売されるのかも極めて怪しいという印象です。これだけ完全赤字確定なら、もういっそのことYouTubeかどこかで無料公開してしまってもいいのではないかと。

『血ぃともだち』は『ぶらどらぶ』の実写版プレフィルム

企画の立ち上げの経緯は『血ぃともだち』『ぶらどらぶ』双方において互いをNGワードとしているためどちらが先か、どのような形なのか不明ですが、『血ぃともだち』の設定は『ぶらどらぶ』とほぼ同じであり、吸血鬼のマイ、保険医の血祭血比呂など同名キャラクターがほとんど同じ設定で登場しています。『血ぃともだち』の“献血部”4人の女の子の設定も、『ぶらどらぶ』に登場するキャラクターの設定に影響を与えていることは明らかで、『ぶらどらぶ』のプレフィルムという印象です。正直『ぶらどらぶ』のデタラメな勢いの良さを見た後だと、『血ぃともだち』では「若い女の子を綺麗に録っている」以外に魅力は見いだせない感じでした。そんな「綺麗な若い女の子」を録ることに特化していたのに、その女の子のひとりが不倫騒ぎ起こして、さらに先に『ぶらどらぶ』が公開されたとなれば配給会社が『血ぃともだち』の公開をしぶるのは当然と思われました。押井監督は「若い役者さんを素直に撮ろうとした」とコメントしていますがまさにその通り、押井氏は「それだけだと自分が撮る意味がないので、ヴァンパイアという要素だけ付け足した」と語っていますが、『ぶらどらぶ』で吸血鬼ネタを見た後だと「若い役者」だけの映画になってしまっているという印象を否めませんでした。オチらしいオチもありませんでしたし……。

>この映画は、NHKで放送されたメイキングと同時に見ることで面白くなるというものでしょうか。ロケ場所に宿泊する予算もないので毎日往復で5時間かけて撮影場所に移動、また「リアルな女子高生を撮りたい」と思って実際に若い未成年の役者を起用したら、労働基準法のため午後8時までしか撮影ができない(ということを押井氏が失念していた)、そのため撮影は常に慌ただしく、現場で滅多に怒ることがないという押井氏が、助監督の金子氏に対しブチ切れていた(その様子がNHKで放送され、押井氏は空手道場で「金子さんがかわいそうだ」と言われたとか)とか、かつてない切迫した現場だったそうです。ただワークショップとして、実撮影前に約1ヶ月半芝居の稽古などをしていた(若い役者だからそのスケジュールを確保できた)ことが功を奏してどうにか成立したということでした。

そのNHKでのメイキングと一緒に見る機会が再度与えられれば良いのですが……。