映画『立喰師列伝』、ゲーム『機動警察パトレイバーかむばっく ミニパト』記者発表会/立喰懇談会

8月26日、プロダクションI.G多摩スタジオ(仮)にて、映画『立喰師列伝』 ゲーム『機動警察パトレイバーかむばっく ミニパト』記者発表会/立喰懇談会が行なわれた。その中にまぎれ込むことができたので、リポートを書きたい。

『機動警察パトレイバーかむばっく ミニパト』はまんま『ミニパト』のゲーム版(PSP専用)である(『機動警察パトレイバーかむばっく ミニパト』公式サイト)。

タイトル 機動警察パトレイバーかむばっく ミニパト
ジャンル アドベンチャー
発売予定日 2005年11月2日
予価 5040円(税込)
プレイ人数 1人
対応周辺機器 メモリーカード(容量未定)
ハード PSP

石川光久、西尾鉄也、押井守、藤咲淳一、鵜之澤伸脚本・監督は『やるドラ』シリーズを手掛けた藤咲淳一氏。総監修は押井守氏(といっても現場は藤咲氏に任せていたらしい)。キャラクター作画は勿論西尾鉄也氏で、このゲームのために4桁に達する絵を描いたとか。ゲームはアドベンチャーパートとシューティングパートに分かれており、プレイヤーは泉野明となる。特車二課の日常をアドベンチャー形式で体験していき他の隊員とのコミュニケーションを取り(時にはハリセンで殴り合うこともあるようだ)、事件が発生したらシューティングパートになる。他にも、『パトレイバー』TVシリーズ及びOVAシリーズでお馴染みの地下迷宮(地下水路)も登場するそうだ。

そもそもなんでこのゲームの発表を『立喰師列伝』の発表とやったかというと、『立喰師列伝』はアニメ『ミニパト』の表現技法を使った実写作品、そこで「これは抱き合わせするしかない」(プロデューサーの鵜之澤伸氏談)ということだそうである。

押井氏はもともと『ミニパト』を「ゲーム向きの題材」だと思っていたらしい。そこで鵜之澤氏のところに話を持ちかけ、「『パトレイバー』のゲームは悲惨なものが幾つかあったりしたけど」(鵜之澤)『ミニパト』がゲーム化されることになった。「本来はPS2で開発していたんですが、たまたまPSPというミニパトっぽいハードが出たので、それで出すことにしました」(鵜之澤)
ところが本来押井氏は、『ミニパト』ゲームを4本作りたいと思っていた。「春夏秋冬で4本出す。それぞれに(アニメ『ミニパト』でオープニングテーマを歌った)兵藤まこのオープニングをつけて、終わったら兵藤まこのアルバムが作れる、そういう約束だった。ちゃんと4本文の準備をしていたのに、ところが上がってみるとオープニングも歌もなく一本だけ、相変わらず嘘つき」(押井)
これは藤咲氏が『BLOOD+』制作に入って忙しくなったため「取り敢えず1本」ということになったそうだが、押井氏は続きを作らせるため鵜之澤氏と交渉し、結果鵜之澤氏は「30000本売れたら残り3本作る」と公言した。
さて監督の藤咲氏は「ゲームを作ると決まったとき押井さんと話をして、『パトレイバー』という特殊な部隊をモティーフに、永遠の夏休み、ずっと続く文化祭前日という雰囲気をゲームでやりたいなあと、コント集みたいなのをゲームに仕立てられたら面白いなあと思ったんです。前に神山健治さんが作った劇場版とか、"これで終わり"というのをなかったことにしていけしゃあしゃあと作らせて貰いました」
作画の西尾氏は「基本的には劇場版『ミニパト』と何も変わっていないんですが、映画を作ってから時間的ブランクがあったためキャラの描き方を忘れていたので、カンを掴むのに時間を要しました。映画の場合だとドラマなりストーリーなりに従ってそれにあった絵を描けばいいんですが、ゲームの仕事を始めてやって驚いたのは、色んなシチュエーションに使い回せるように、野明の笑った顔怒った顔泣いた顔を大量に描かされて、そのうち写経しているような気分になりました(笑)」という話であった。
その後I.Gの石川光久氏は「『立喰師列伝』はものすごく儲かると押井さんも言ってる」「それを見込んでうん億も借金してこのスタジオ(多摩スタジオ)を建てた」「『ミニパト』のゲームも絶対売れるから、『立喰師列伝』もゲームにして、チケマガみたいに映画前売り券と一緒に売りたい」などと発言。だが押井氏は「元は取れると言っただけ、儲かると言った覚えはない。『ミニパト』のゲームは僕らとしても精一杯いいものを作った、あと売るのは鵜之澤の責任だ」、鵜之澤氏は「『ミニパト』が50000枚売れれば『立喰師列伝』のゲームも出るかもしれない。30000枚売れたら『ミニパト』はあと3本作る、でも兵藤まこのアルバムが出るかは知らない」などと応酬していた。

『機動警察パトレイバーかむばっく ミニパト』の発表のあとは、2006年春に公開予定の押井守監督映画作品『立喰師列伝』の発表となる。『立喰師列伝』が何かということについては『立喰師列伝』原作本についての説明を見ていただくとし、まずこちらではまず石川氏が次のように語った。

オシメーション石川「I.GのWebサイト押井コラムというのがあるんですが、この中に『2階の厄介息子の席を奪うな』というのがありました。変わり者に席を用意するのが進歩した社会の絶対条件で、ビル・ゲイツとか何千万ドルも稼いでいる人間はやらされているのではなく、好きでやっている人間だから。『イノセンス』では押井さんに好きにやらせすぎたんじゃないかとか言われてますけど、僕は必ず5年後に結果が出ると思っていますが、皆さん5年も待てないということなので、今回早く結果を出そうと『立喰師列伝』を作ることになりました。今回の手法は(『ミニパト』で使用し、『立喰師列伝』では実写で行なうパタパタアニメ、ディジタルペープサート技法のことを)スーパーライブアニメーションとか言っていますが、究極の押井守のアニメということで"オシメーション"と命名したいと思います(笑)。『イノセンス』では押井守に好き勝手やらせすぎたというので、今回は初心に返って作ってもらおうと。これで結果が出なくて、押井守には引退していただいて、藤咲、神山、沖浦(啓之)という若い監督に活躍してもらうという状況を作らないためにも頑張って貰いたいと思います。沖浦が登場するときは、会社が半分傾くくらい危険なので(笑)」

それを受けて、押井氏は次のように語る。「『2階の厄介息子の席を奪うな』というのは何かの本で読んだ、アメリカの作家の言葉だったと思いますが、2階で何をやっているかわからない、機械をいじったり本を読んだりしている変な人間を無視するのはいい社会じゃない、ガレージでごそごそやっている息子達、そういう人間達を寛容に迎える社会でなければならないと、石川にも力説した記憶があります。I.Gは2階どころか4階くらいまであるんですが、そういう人間がいるからこそI.Gも新しい仕事ができる。『ミニパト』も2階の厄介息子の仕事なわけで、そこから『立喰師列伝』に繋がった。僕が引退するのはいいけど沖浦にやらせても知らないよ(笑)。
自分がアニメーションであと何ができるかというのを考えて、アニメーターの我が儘につきあうのはうんざりだとか考えたこともある、一人でできないかと考えたこともあるけど、もともと『ミニパト』はテッツン(西尾鉄也)の1枚の落描きから始まったものだし、そういう一人のアニメーターの落描きから始まるのがアニメスタジオの正しい姿。あと、赤字には絶対しないとも言いました。僕の作品で赤字になったものは今のところ一本もない」
鵜之澤「驚くべきことに、『紅い眼鏡』とか『トーキング・ヘッド』でも最終的には赤字にはなっていないはずです、『パトレイバー』以外儲かってもいないけど(笑)」
押井「何年かかるかわからないけどこの作品(『立喰師列伝』)は必ず残ります。これは僕の道楽じゃない、関係者全員そう思っているだろうけど。昭和という時代、かつて日本は戦争に負けて道端で飯を食っていた、そのころ失われた胃袋が大事なんだという強い信念と思いでやってきて、やっと企画書通った。何回企画書書いたかわからない。"立ち喰いは身の破滅を招く"と言っていた人間がいるけど招いてない、ざまあ見ろと思っている。さすがにこの映画でお客さんが100万人来るとは思ってないけど、10年後に生き残っていれば100万人お客さんが来たより価値がある」

最後に、石川氏が以下のように語った。「西久保(利彦)さんが、押井さんとは『パト2』、『攻殻』、『イノセンス』と組んだけど、一番面白いのは『立喰師列伝』だと言ってくれました(註:西久保氏は『機動警察パトレイバー2 the Movie』から『立喰師列伝』に至る押井劇場アニメ作品で演出を担当)。フィルムは10月末に完成する見込みで、それからお見せできると思います。渋谷シネクイントさんでの公開も決まりました。押井監督が週に2回、上演前に公演をすることにもなってます(笑)。『立喰師列伝』PSPも春に向けてやりますので、何とぞよろしくお願いします(笑)」

押井守と石川光久その後は会場を外に移し"立喰懇談会"となる。冷やしたぬき蕎麦やタコ焼き、ホットドッグやかき氷などの屋台が作られた屋外の会場で、立ち喰いしたり飲んだりしながら"立喰師列伝"について語るというものだ。会場には、立喰師列伝に出演している神山健治氏、ゆうきまさみ氏、高田明美氏、 藤木義勝氏、兵藤まこ氏なども来場していた。

押井「立ち喰いのプロはべつにただ食いできるだけで、パチンコのプロとか麻雀のプロとかと違って儲けられるわけじゃないけど、蕎麦をただで食べて蘊蓄をたれるだけというのが気に入ったんです。どうして立って飯を食うことにこだわるかというと、正直言って自分でもよくわからないんですが、原点というものがあるとすれば、僕の子供のころの日本は貧しかった。道端でご飯を食べてるおじさん労働者を見て育った。子供である僕はちゃんと座って食べろと言われたけど、道端で飯を食べてるおじさん達が気になって仕方なかった。日本は今でこそこういう国になっているけど昔は道端で飯を食っていた。そのころの記憶がどうしても消えてなくならかったんです。日本という国が東京オリンピックとか万博とかのたびに生まれ変わって、町から野良犬が消えていくように道端で飯を食うという存在も消えていった、それがいつのまにかハンバーガーとかに取って代わってお洒落なものになっていったけど、僕からするとそれは違うんじゃないか。道端で生きるということは明日どうなるかわからない中で暮らす、世の中も明日どうなるかわからないという熱い時代だった。
そういう時代を知らない若い人に伝えたい。これは戦争体験を伝えるとかいう真面目なこととは違って、道端でものを食べる快感も同時に伝えたい。これは楽しいことなんですよ。あとで(この会場で)タコ焼きとかフランクフルトとか立ち喰いしながらしみじみと味わってほしいんですけど、立ったまま食べたり歩きながら食べたり、お行儀の悪いことなんだけど何故か人間は解放する瞬間があると思うんですよね。それがなぜ人間にとって開放感に繋がるのかということをずっと考えながら生きてる、その僕の妄想が実現するわけだけど、一つには戦後から50年、この国をもう一回考え直してほしいという真面目な意図とは別に、人間は野良犬のように道端に生きられるんじゃないか、そう考えることによって色んな問題が変わって見えてくるという気がしてなりません。
立喰懇談会今から30年以上前、僕が道端に座り込んでご飯を食べて、道端を走り回って突撃を繰り返したころだったけどそういう時代があったのを思い出してほしいという真面目な意図でやってます。それだけだとエンターテイメントにならないので、それを面白おかしく演出することでこういう方法を考えました。あと僕の知り合いの編集者、作家、映画監督を動員した理由も同じです。何とか楽しい映画にしたかった。いかんせん予算が少ない。石川に、儲かりはしないけど消して赤字にはしないといったので、切りつめた予算でやってます。学生さん達を導引して若い力を借りて3Dを大量生産してます。僕はこそこそと単館でロードショーできればと思っていたんですが、ある人に『貧乏ったらしい映画だからこそおしゃれな場所でやるべきだ』と言われて、シネクイントさんは立ち喰いにあっているかもしれない、日本で一番おしゃれな場所で貧乏ったらしい映画を公開してみたいという、僕の妄想の一つですね。
映画の上がりを見てみるとかなりおかしい、不思議なものになりつつあります。昔TVシリーズで作っていた『うる星やつら』にかなり結果的に似てきてしまった、特に神山はメガネと化している(笑)。
メガネ(うる星やつら)
よく見るとあの二人は似ている、キャラが被っている(笑)。神山という監督自体、現場ではメガネ同然に振る舞っているような気配もあるので、あらためてキャラクターを見直した収穫もありました。上がりはばかばかしい、楽しい、エネルギッシュな作品になるのではと思っています。それだけでは花がないので、花として兵藤まこさんに出て貰いました。彼女の存在無しには、テキ屋とヤクザしか出てこない殺伐とした映画になってしまうところだったのを救ってくれました」

ここで兵藤氏が登場。「ケツネコロッケのお銀というのは、何があろうが今日のように嵐があろうが(註:この日は台風通過の翌日)粋なことを言って無銭飲食して去っていく、そういう粋なお銀を演じられればと思っています。色っぽいシーンもあるということで、今回いきなり脱ぐ羽目になってしまいました(笑)。まだ上がりを見ていないですが、すごく面白い作品になっているのではと思っています」

押井守監督と立喰師列伝出演者最後には押井氏が締める。「僕がこの仕事初めてであった愛すべき人たちに登場して貰いました。その割りには映画でひどい扱いされていたりしますが、それは愛情表現です(笑)。同時代に生きてこれたことを嬉しく思っているし感謝しているし、映画という記録でそれを留めたかった、様々な思いを留めた一本です。この場を借りて感謝したいと思います」

そんなわけで、石川氏曰く「数日前から台風が来ると言われていたので、今日の制作発表を延期した方がいいんじゃないかという話が出ていましたが、逆に『立喰師列伝』は一発勝負の作品であろうから、台風が来て制作発表が中止になったらそれをネタにして売り込もうと思っていました」という、映画『立喰師列伝/ ゲーム『機動警察パトレイバーかむばっく ミニパト』記者発表会は無事に終了。その後も色々な人々が蕎麦を食ったり駄弁ったりしての立喰懇談会が続く。どうでもいいけど、椅子に座って色々な人々のインタビューを受ける押井氏と、その押井氏を団扇で扇ぐスタッフが"古代エジプトの王と奴隷"みたいに見えて印象的でした。

『立喰師列伝』撮影風景の写真

プロダクション I.G、バンダイが「ミニパト」をPSPでゲーム化。3万本売れたら後3作品、5万本売れたら映画『立喰師列伝』をゲーム化!