押井守監督の「勝つために見る映画」 『マネーボール』

勝ち抜きたければ「迷わない人」と組んではいけない。 「マネーボール」(2011年 ベネット・ミラー監督)

押井:「自分は何本も映画を手がけてきたんだ。その経験値があるんだから、当たる映画には何が必要なのかわかってる。この脚本のどこがダメかも指摘できる」ってよく言われるけどさ、そういうセリフを口にするプロデューサーで本当に信頼するに値するプロデューサーと会ったことがないもん(笑)。

―日本ではそういうプロデューサーが多いんですか?

押井:多いよ。アメリカは逆にマーケットリサーチを重視しすぎるんだよね。マーケットリサーチャーの言うことしか聞かないんだもん。僕も相当ひどい目に遭ったからさ。

―いつの話ですか?

押井:「アヴァロン」をアメリカで配給しようという時に、スニークプレビューっていうのをやったんです。まったく無関係の若者に映画館の前で声をかけて、いきなり「アヴァロン」を見せてアンケートを取るわけ。それをやって中1日でデータが上がってくるんだよ。そしたら「難解である」「意味不明である」が過半数だったわけだよね。

―何の前知識もなくあの映画を見せられたんじゃ、仕方がないかと(苦笑)。