押井守 初にして唯一のTVシリーズ監督作品『うる星やつら』BD化

押井守がTVシリーズアニメでチーフディレクター(監督)を勤めた、初にして唯一の作品である『うる星やつら』がBD-BOXで発売されることになりました。押井氏は同作の、第129話(第106回放送分)までチーフディレクターを担当しました(押井氏は、TVシリーズの監督はこれで懲りたということで、以後引き受けていません)。

『うる星やつら』では、純粋な原作ファンからの批判もあり、特に序盤は評判が悪くてスタッフ宛にカミソリが送りつけられるということもあったそうですが、その後徐々に好評となり、若いアニメスタッフが集まってきて好き放題始め、押井氏ほかアニメスタッフによる数々の“暴走”が今でも伝説となっております。

そもそも第1話では、ラムの乳首を出すか出さないかでもめ、結局押井氏が押し切って出すことにしたら「破廉恥だ」と抗議が殺到したというところからこのアニメは始まりました。第87話『さよならの季節』における千葉繁氏の絶叫セリフは語りぐさな上、『ケルベロスサーガ』に登場するプロテクトギアの原形と言えるものも登場します(もちろん原作にはそんなものは出ていません)。アニメ完全オリジナルストーリーの第98話『そして誰もいなくなったっちゃ!?』は、偽装殺人事件でキャラクターがどんどん死んでいくという話をやったのですが、「冗談でも、キャラを殺すなんて事をやってはいけない」と、プロデューサーの怒りを買ったとか。そして「わけがわからない話」ということでプロデューサーとケンカになっても押し通したというオリジナルストーリー、第101話『みじめ! 愛とさすらいの母!?』は、映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の母体になりました。第114話『ドキュメント・ミス友引は誰だ!?』では、原作と全く違う、ミスコンの裏の政治的駆け引きの話を描いた挙げ句、劇中でキャラクターの“踏み絵”をしていることが原作者である高橋留美子を怒らせたそうです。

とにかく、いまのTVアニメの現状からは考えられないことを色々とやっていました。例えば、作画監督の個性が全面に出ていてキャラの絵柄が全く違っているところなどは、今なら間違いなく“作画崩壊”と言われたことでしょう。

このBD-BOX1には第1話~第69話、BOX2には第70話~第117話、BOX3には第118話~第165話、BOX4には第166話~第218話(最終話)が収録されています。ちなみに初めてLD-BOXで全話セットが出たときには、約50万円だったと記憶しております。

なおこれは「小学館90周年・高橋留美子画業35周年記念企画」ということで、『めぞん一刻』『らんま1/2』のBD-BOXも発売が決定しております。