空自FXはF-35、F/A-18E/F、タイフーンの3機種に絞り込まれた?

東京新聞:次期戦闘機の予算計上へ 来年度防衛費、数機分:政治(TOKYO Web)

候補機種は当初の六機種から、米国のF35(ロッキード・マーチン社)、FA18E/F(ボーイング社)、欧州共同開発のユーロファイター(BAEシステムズ)の三機種に絞り込まれた。

確認できる他紙の記事がないので、この記事が事実なのかどうかはわからないのですが、少々驚きました。航空自衛隊次期戦闘機(FX)に、F/A-18E/Fスーパーホーネットが来ることはまずないと思っていたものですから。

航空自衛隊で現在運用されているF-4EJ改は耐用年数の限界で、空自としては早急に後継機を決めなければなりません。さもなければF-4EJ改の退役によって戦闘機の数が減り、日本の防空体制に穴が開くことになります。そこでFXの早急な選定が求められていました。

FXにはF-35ライトニングIIユーロファイター タイフーン、F/A-18E/Fスーパーホーネットのほかに、F-22 ラプターラファールF-15FXが候補に挙がっていました。しかし最有力視されていたF-22は結局輸出許可が下りず、アメリカも生産終了を決定してアウト。ラファールは以前書いたように、最初から当て馬であって、日本で運用するメリットがありません。残りはF-35、F/A-18E/F、F-15FX(SE)、タイフーンとなります。

日本は、「数」に対して「質」で対抗しなければなりません。「多少性能の低い戦闘機でも、安い戦闘機の数を揃えることで補えばいい」というわけにはなかなかいかないからです。まず日本では、パイロットの人的資源が限られています。そして戦闘機の数が増えるということは、整備員の数も増やさなければならないということで、人手不足の自衛隊にとってはやはり難しい事態です。さらに基地の問題もあります。機数が増えれば駐機スペースを増やさなければならないし、訓練のための発着回数も増やさなければならないことになります。騒音問題やら土地問題やらで何かと非難の的になっている空自の基地にとっては、これらの問題を余計に抱え込みたくはありません。

では先のFX候補の中で最強の機体はどれか? それは間違いなくF-35でしょう。ところがF-35はまだ開発中で実戦配備が遅れています。さらに開発が完了しても、JSF計画(F-35国際共同開発計画)に参加していない日本へのF-35供給は後回しにされる可能性が高いです。その上F-35は、コストが大幅に超過しているというニュースも流れています。おまけに、国内の航空産業を維持するため戦闘機はライセンス生産したい日本ですが、F-35は国際共同開発のため、ライセンス生産するとなると非常に問題がややこしくなり、現実的にはライセンス生産は不可能なのではないかとも言われています。

残りはF-15FX、F/A-18E/F、タイフーンとなりますが、今から新しく導入しても、これらの機体は20年~30年後のことまで考えると性能が心配です。特に今後の空中戦においては、ステルス性能が生死を分けると言われているからです(ただしこれらの機体もステルス性が皆無なわけではなく、RCS低下の努力は行われています)。

そんなディレンマに悩む中に、突如現れたのがF-15SEでした。F-15を改良し、(F-22やF-35には及ばないものの)高いステルス性能を持つとされるF-15SEは、救世主のようにも見えました。F-15SEは、ライセンス生産の実現性、日本独自の兵装(AAM-4など)との融和性、「他国との導入順番待ち」をしなくても良さそうな点などから、F-35よりも可能性が高いのではないかと思われました。

ですがF-15SEは未だに絵に描いた餅で、実機はまだ空すら飛んでいません(F-35は既に試験飛行中です)。既存のF-15の改良だからF-35よりはスムーズに開発が進むはずだとしても、心配なことは確かです。では今すぐFXを導入しないとならないとするとどれが一番いいかというと、既にヨーロッパで運用されているタイフーンが上がります。ユーロファイター社は既に「タイフーンは日本のライセンス生産で構わない」と発表しております。また「日本はヨーロッパ製の戦闘機を導入したことがない」という不安要素も指摘されていましたが(戦闘機以外のヨーロッパ製機体の運用系経験ならある)、これについてはユーロファイター社は、「タイフーンは(米軍機と同じ)NATO規格であるから、日本で導入するにしても大きな支障はない」としています。

そして残ったF/A-18E/Fですが、この機体は元来アメリカ海軍機、空母艦載機です。そのため、陸上基地で運用する日本にとっては、必要のない機能がついています(オーストラリア空軍でもF/A-18E/Fを導入していますが)。その上アメリカ海軍はF/A-18E/FをF-35の海軍型であるF-35Cに置き換えていく予定であるため、いつまで供給が続くか……。それなら、日本での運用実績があるF-15FX(あるいはSE)のほうがましだと思っていました(ただしF-15FX(SE)の原形であるF-15Eは、原形となったF-15A/Cとは中身が大幅に異なるため、あまりノウハウを共有はできない可能性はあります)。

私としては以上のようなことを考えていたため、「F-35、F/A-18E/F、タイフーンの3択になった」というニュースを見たときには少々驚きました。「今飛んでいる機体」から選ぶとするなら、タイフーンを選んだ方がましだと思っていたのに、何故F-15FX(SE)を差し置いてF/A-18E/Fなのか? F-15SEの可能性を捨てるほどの価値がF/A-18E/Fにあるのか? その理由を少々考えてみて「単座運用が前提だからでは?」という推測に辿り着きました。

F-15FX(SE)は戦闘爆撃機F-15Eを原形としており、F-15Eは多様な任務に対応するため、複座(2人乗り)で操縦する機体です。そのためF-15FX(SE)も複座になると予想されていました(ボーイング社は、単座への変更も可能と説明していましたが)。しかし先に書いたとおり空自は人員不足。さらに先日自衛隊を扱ったニュースで見たのですが、空自のパイロット志望者の間でかつて花形だった「戦闘機パイロット」は人気が落ちており、「災害出動による人命救助」「国際貢献」ができる救難機、救難ヘリ、輸送機パイロットの人気のほうが上がっているらしいのです。そんな中では「(基本的に)自分で操縦できない戦闘機の後部座席要員」はさらに人気が落ちるでしょう。そのためF-15FX(SE)よりもF/A-18E/Fを優先したのでは?

もとの記事の信頼性が不明な上に、推測に推測を重ねて書いてみたため、私自身もいまいち自信が持てないのですが、とりあえず現状の空自FX情勢についてまとめてみました。