レーザー戦争時代の幕開けか ABLレーザー照射試験

すでにレーザーは、目標との距離測定のためなど、さまざまな用途で軍事利用されています。ですがSFファン、アニメファンにとって“レーザー兵器”といったらやはり、「レーザー光線で直接的を攻撃する」ものでしょう。実際には、そこまで高出力のレーザーを発射するのは技術的に非常に困難だったため、レーザーは“目標の直接破壊”ではなく副次的な用途で使用されてきました。ですがついに戦場でレーザー光線が飛び交って目標を破壊し合う、そんな時代が目前になったのかもしれません。

AL-1 (航空機) – Wikipedia

ABLは簡単に言うと、レーザー照射装置を載っけた飛行機です。上昇する弾道ミサイルを、空中で警戒しているABLからのレーザーによって、直接撃墜するためのものです。上昇中のミサイルであれば飛翔速度が遅いので補足しやすいですし、ミサイルが敵国上空にあるうちに撃墜すれば、ミサイルの破片などが自国に落ちてくる心配をする必要もありません。そしてレーザーは文字通り光速ですから、「迎撃用ミサイルが目標までに到達するまでの時間」を心配する必要もありません。そのABLの、空中でレーザーを照射してミサイルを補足する試験(まだ破壊まではいかない)が2月11日に行われ、映像が公開されました。

ただABLは、その有効性について疑問も提示されています。「敵が一斉に大量の弾道ミサイルを同時発射したらどうする? 迎撃するには何機のABLを空中待機させておけばいい? そのためにコストがどれくらいかかる?」「レーザーで迎撃される可能性があるとわかっているなら、ミサイルの表面をミラーコーティングするなどすれば、比較的簡単に防御できるんじゃないの?」などという話です。そういった意見にどこまで左右されたのかはわかりませんが、オバマ政権はABL試験2号機の開発をキャンセル。現在テスト中の1号機だけで試験を継続するとして、予算を削減しました。

ですがABLは、間違いなく大きな技術的前進であり、たとえ弾道ミサイル迎撃に使えなくても、軍事の世界に革命をもたらす可能性を秘めています。例えば(正確にはABLのレーザーとは違いますが)「レーザーを地上攻撃に使用すれば、目標だけを正確に攻撃し、付加的損害(爆風などの影響による、周囲の民間人、一般市民の犠牲)を抑えることができる」として、F-35戦闘機などにレーザー照射装置を搭載することも研究されています。

レーザーの発生方法には色々な種類があるため「ABLを小型化さえできれば何にでも転用できる」とはいかないのですが、このABL試験の映像は「レーザー兵器時代の始まり」を感じさせるものでしょう。