Tokyo Project Gatheringで行なわれた『エルの乱』プレゼンテーションについて

東京国際映画祭において、Tokyo Project Gatheringという映画企画プレゼンテーションの時間がとられたのだが、そこで『エルの乱 鏖殺の島(仮)』(英語仮タイトル REBELLION : KILLING ISLE)のプレゼンテーションが行なわれた。野良犬の塒では、そのプレゼンテーション内容とプレゼンテーション会場で配付された資料から、脚本押井守、監督深作健太による実写映画『エルの乱』の内容について触れていきたい。

プレゼンテーション会場で配付された資料には、以下のように書かれていた。

 199X年、深刻な政情不安を抱えた日本──。流入した大量の難民たちが政治的権利の獲得を求め武装闘争を開始、政府は公安委員会直属の実働部隊(首都警)を組織しこれを制圧する。
しかし暴動の沈静化と共に、政府から過剰警備への非難を受け首都警は解体された。首都警の有志は各所で決起、世に言う"ケルベロス騒乱"を起こすが、決起部隊は破滅へと追い込まれた。

 それから18年、東京・羽田沖。東京湾第202不法滞在者居住区に、一人の男が移送されてくる。素性の不明なその男に、不穏な空気を感じた警視庁幹部は警備を強化し、少女は闘争に倒れた亡き父の影を見る。男は伝説の指導者の再来なのか。難民2世の暴動とそれを制圧しようとする警察、そして首都警の決起部隊の生き残りが複雑に交錯しながら、まさに"ケルベロス騒乱"が再燃しようとしていた──。

このように『エルの乱 鏖殺の島』は、ケルベロス・サーガを真っ当に引き継ぐ作品のようだ。プレゼンテーションで公開された映像では、『人狼 JIN-ROH』の映像を交えながら、赤い目が光るプロテクト・ギアのイメージが使われていた。

元来この映画は深作欣二・健太親子が、1990年10月に大阪で起こった労働者の暴動"西成暴動"を映画として描きたいと考えたことから始まったそうである。それが深作欣二の死、深作健太と押井守の出会いを経て、舞台設定は1990年から近未来に変わった。そしてケルベロス・サーガの一編に組み込まれた物語となり、押井守が脚本を書いた、西成暴動をモチーフとした映画となることになった。

ストーリー的には、東京湾に存在する難民の住む島(『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』の出島を連想するが)で、難民の"エル"という名の少女(『うる星やつら オンリー・ユー』ではない)が、島に住む子供達の主柱となり、やがて大人をも巻き込んで、武装警察と衝突することになるというものだそうだ。

それで西成暴動について。
1990年10月2日、西成警察署員と暴力団員との癒着がマスコミで報道される。すると300名ほどの日雇い労働者を中心とする人々が西成警察署前で抗議活動を行なう。これには普段からの西成警察の、労働者に対する暴行など差別的行動が影響していたという。
やがて労働者と機動隊が衝突。労働者は投石や火炎瓶を、警察は機動隊や放水車を繰り出しての衝突が発生する。
この手の事件にはありがちなことだが、最初は義憤だとしても、やがては"単に何となく暴れたいだけの人間"が乱入しての暴動に発展する。争乱は7日まで続いて、駅が焼かれるなど多数の被害が出た。他にも、この地域では度々暴動が発生している