『攻殻S.A.C. BD-BOX』のBD Liveコンテンツを体験してきた(仕様その他編)

『攻殻S.A.C. BD-BOX』のBD Liveコンテンツを体験してきた(画面編)」の続き。

特典の具体的な内容について

先に書いたとおり、BD Liveの特典は、神山健治監督、田中敦子(草薙素子役)、大塚明夫(バトー役)による『2nd GIG』第25話、第26話のオーディオコメンタリーである。最初、全巻購入特典として、またBD Liveの特典として「オーディオコメンタリー」というのは地味目な印象を受けた。また「何度もあちこちで『攻殻S.A.C.』の話をしているのに、今更話すことがあるのだろうか」という危惧もあった。

だが今回ご厚意により、BD Liveで配信されるオーディオコメンタリーを一足先に聞かせてもらったのだが、なかなかに面白いコメンタリーだと感じることができた。具体的には、映像に合わせて話すよりも、「時間がたった今、改めて語る」というような同窓会的感覚トークが行われている。バトーに感情移入しすぎてクゼを憎らしく語っている大塚氏など楽しかった。そのためか2話分のトークがあっという間に終わってしまった感覚を受けたため、もうちょっとボリュームが欲しいと思ってしまったが。

『攻殻S.A.C. BD-BOX』BD Liveコンテンツ仕様について

また、人々が抱くであろう、「『攻殻S.A.C. BD-BOX』BD Liveコンテンツ仕様についての疑問点などを聞いてみた。

BDプレイヤーを複数所持している場合、複数のプレイヤーに『攻殻S.A.C.』の各ディスクを登録したり、オーディオコメンタリーをダウンロードしたりすることは可能か?
可能。ただしあくまでもオーディオコメンタリーは、『2nd GIG BOX 02』の最終巻ディスクをプレイヤーに挿入した状態でないと再生できない。
オーディオコメンタリーダウンロード可能期間は2010年6月末までとなっているが、それ以降もコメンタリーの再生は可能か?
ダウンロードしたデータをプレイヤーから削除しなければ可能。一度ダウンロードしておけば、再生するために再びネットに接続する必要はない。
2010年6月末以後にプレイヤーを買い換えるなどした時のために、ダウンロードしたデータをバックアップすることは可能か?
BDプレイヤーの機種によっては可能。ダウンロードデータの保存先がHDDではなくSDカードやUSBメモリになっている機種もあるので、SDカードなどのデータを保存するだけでいい。PC用BD再生ソフトの場合は、HDD上にダウンロードデータが通常のファイルとして残されるものがほとんどなので、そのデータをバックアップしておけばいい(はず。正確なところはプレイヤーソフトの仕様によって変わってくるので断言はできないが)。 また以上のバックアップ方法は、動作保証されているわけでもないので注意。
あいにく、現在のPS3ではバックアップは不可能。この点は、将来PS3のファームウェアがアップデートして、BD Liveデータのバックアップが可能になることを期待するしかない(PS3のデータ転送ユーティリティーでBD Liveデータを転送できるかは不明)。

ブックレットについて

BD Liveとは関係ないが、付属のブックレットについても少々触れておこう。
今回の『攻殻S.A.C. BD-BOX』各BOXに付属のブックレットにはそれぞれ、神山監督インタビュー、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏のコラム、スタパ齋藤氏のコラムが掲載されている。個人的に特に面白いと思ったのは菊池雅之氏のコラムで、現実の軍事的な側面から『攻殻S.A.C.』について触れており、さらに『2nd GIG』のブックレットでは、元警視庁特殊部隊所属の伊藤鋼一氏のインタビューを交えつつ、「公安9課と現実の特殊部隊」などについて書かれている点である。SATの創設に絡んだ話も書かれているが、SATについてはなかなか情報が表に出ないので、貴重と言えるだろう。

今回のBD Live特典と、BD Liveの今後の活用などについて

また取材の場を用意してくれた、バンダイビジュアルプロデューサーの杉山潔氏に、改めて今回の特典について聞いてみた。

このオーディオコメンタリー配信は「『STAND ALONE COMPLEX』と『2nd GIG』、合計4つのBD-BOXで8万4000円(税込)という大金を払ってくれた人にお礼をしたい」ということでの「全巻購入特典」であり、それなりの予算を使った新規オーディオコメンタリーを作成し、その配信にBD Liveの機能を使用したということである。

また前回の取材でも触れたが、これまで「全巻購入特典」というと、たいていDVDなどについてくる応募券をメーカーに送る手間がかかったし、特典が実際に応募者の手元に届くのに時間がかかるケースも多かった。
さらに購入者が送料を負担しなければならないこともあった一方で、メーカーが送料を負担した場合は「全巻購入特典」にどれくらいの人が応募するかわからず、使用できる予算の中でどれだけ送料に割き、どれだけ特典に割り当てられるか事前に予測できなかったという。だがBD Liveを使ったオンライン配信にしたことによって、予算のほとんどすべてを特典の内容に使うことができ、さらに買ってくれた人にすぐに特典を届けることができるようになった。

そして今後のソフトにおけるBD Live活用についてだが、BD Liveはサーバに置いたデータをアップデートできるという利点があるため、この活用法を探っていきたいとのことだった。例えば別作品のプロモーション映像を配信することにして、その内容をどんどん更新していくということも可能である。また、TVシリーズなど連続リリースされるタイトルの場合「最初のBDの発売(BDのプレス)には間に合わなかった、続巻のプロモーション映像」を後から配信することもできる。そのため特典としてだけではなく、プロモーションとしてもBD Liveを積極的に使っていきたいという話である。その点では他社の製品になるが、『名探偵コナン』のBDなどで既に実現されつつある。

「名探偵コナン」BD-Liveコンテンツ強化、新作タイトル発表 -AV Watch

なおBD Live機能では、『天使と悪魔』『ターミネーター4』などで、BDを見ているユーザー同士がチャットするという機能も実現されている。

Blu-rayを観ながらチャット。SPE「cinechat」を体験 -AV Watch

杉山氏に聞いたところ、バンダイビジュアル製品で今後似たようなことを行うかどうかはまだわからないとのことだが「ニコニコ動画のように、ユーザーが映像にコメントを付けて他のユーザーがそれを見るという機能も、技術的には実現可能」だという。ただその場合、荒らしなどがあった場合にどう対処するかなど、サーバ維持の問題などが出てくるため、すぐ実現させるのは難しいようだ。だがBD Liveにはいろいろな可能性があるので、今後に期待したいところである。

最後にまたBD Liveとは関係ない話になるが、日米でのアニメソフトの価格の格差もどうにかなってほしいと常々願っている。バンダイビジュアル製品ではないが、日本版BD-BOXの定価は50000円近いのに、北米版のBD-BOXの定価は約$70という、もはやギャグかと言いたくなるようなものまであるのが現状である。「アニメソフトは、まず日本で元を取らないとならないビジネスモデルになっている」「日本と北米ではアニメソフトの市場規模が違うし、日本並みの価格にしたら北米では全く売れなくなる」という現状、難しいところもあるのだろう。だがBDのリージョンが日本と北米で同じ以上、「北米版を輸入した方がいい」という話になってしまう。かといって以前『ブラックホーク・ダウン』BDの話で触れたように、「北米版には日本語音声はつけないようにして逆輸入を阻止する」という方面に逃げてほしくはない。