『true tears』BD化発表……しかし

既に雑誌早売りによる情報などがネットに流れ、とっくに知っている人が沢山いるだろうが、特別企画「なんだか色々と聞いてきました」最終回 さらに続くアニメBD/DVDマーケティングの話 なぜか『true tears』の話までで触れた『true tears』のBD-BOX発売決定が、雑誌正式発売日の11月10日付で情報解禁され正式発表された。先日の縁で、バンダイビジュアルより正式なリリース情報を頂いたので掲載したい。

true tears 『true tears』BD-BOXについて

まず『true tears』がBlu-ray BOXで発売されるということは、実は"確定"ではない。「予約入金数2000以上が達成されたときのみ生産」ということである。

『true tears』Blu-ray BOX リリース関連スケジュール
申込受付期間 2009年11月10日~12月16日
入金受付期間 2009年12月21日~2010年1月8日
発売お届け予定日 2010年3月26日

具体的なスケジュールは上記のようになっている。つまり12月16日までに2000以上の申込受付が行われ、1月8日までに200以上の入金が行われないと、『true tears』のBD-BOX生産は中止されるということになる(申込はバンダイビジュアル・デジタルビートから。入金方法は、ゆうちょ銀行・郵便局・コンビニエンスストアでの支払い)。

このような完全予約受注限定生産になったのはやはり、DVDの売り上げが不振であったため、「普通に発売」するには慎重にならざるを得なかったのかもしれない。いくら「あなたがBlu-ray化して欲しいアニメ作品は?」のアンケートでトップを取ったからといって、そのアンケートに投票した人が全員買うかもわからない(一人で複数回投票した人もいるだろう)。また杉山氏が以前語ってくれたようにDVDに比べるとBDはまだまだエンコードやらプレスやらでコストがかかるため「売れると見込みのある作品でないと、BDでは発売は難しい」のである。かといって、せっかくのBDAからの企画をただ潰すのも何だし……というところでの、採算ラインを割らないためのぎりぎりの判断だったのではないだろうか。

『true tears』Blu-ray BOX 仕様
価格 24,990円(税込/振込手数料・送料込)
映像 16:9 (1080p High Definition)
音声 リニアPCM(ステレオ)
収録時間 BD50G×3枚 376分予定(本編約314分+映像特典約62分)
封入特典 ブックレット(64P)
映像特典
  • TV未放送の新作映像(約3分)を含む#13ディレクターズカット版
  • true tearsロケ地紹介映像(約20分)
  • デジタルイラストギャラリー(true tearsの版権イラストを網羅)
  • DVD収録の特典映像(ミニキャラ4コマ劇場映像、こちらチューリップ放送局出張版
  • ノンテロップ・オープニング、ノンテロップ・エンディング、ワーニングナレーション4種、CM・PV集)
他、仕様 BOXイラスト&インナージャケットは関口可奈味描き下ろし

と『true tears』は、まだ本当に発売されるかどうかまだわからないBD-BOXの仕様にしては非常にしっかりしたものになっている。BDソフトの普及のためにも、この企画は潰れて欲しくないところである。

ついでに余談を……ハリウッド系旧作BDについて

ソニーともバンダイビジュアルとも特に関係ないので取材文章からはカットしたのだが、実は先日ソニーPCLに取材に行ったとき、実写映画のBDについての話(といっても雑談程度のもの)を少々行っていた。それは「北米に比べると、日本では(ハリウッド系の)旧作実写作品がBDで発売されるケースが少ない」という点である。これはソニーの方によると、北米市場におけるセルのソフト販売の市場に比べて、日本のセルソフト販売市場が小さいことが原因だろうということだった。それを象徴するように、BDのハードウェア市場も、北米ではプレイヤーが中心なのに対し、日本ではレコーダーが中心になっている。つまり日本では「レコーダーに録画してBDに保存することの需要」が大きく、その分BDのセルソフト市場は小さい、ということである。

さらに私にとって不可解なことがもう一つあったのでその話もした。北米では、BDがマルチリンガル仕様で発売されることが多い。例えば私の大好きな映画『BLACK HAWK DOWN(ブラックホーク・ダウン)』は、2006年11月には北米でBD版が発売された。そしてこのBD版、音声は英語とフランス語が入っており、字幕は英語、中国語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、さらに韓国語にタイ語まで入っているのだが、日本語字幕だけは入っていないのである(『BLACK HAWK DOWN』のBDはリージョンAで、南北アメリカ、東南アジア、日本、朝鮮半島、台湾で再生可能)。『ブラックホーク・ダウン』は、日本での発売権をポニーキャニオンが持っているため、日本語字幕だけ意図的に省かれたのだろうと私は想像していたが、実際2010年1月20日に、ポニーキャニオンより日本版BDが発売されることが発表された(ところがなぜか、北米版BDであった無圧縮PCM5.1ch英語音声は、日本版BDでは入っていない)。まあ私は結局待ちきれなくて、そのずっと前に北米版『BLACK HAWK DOWN』BDソフトをamazon.comで買ってしまったのだが……。

ポニーキャニオン、「ブラックホーク・ダウン」をBlu-ray化 -AV Watch

他にも私の好きな映画で言うと『The Passion of the Christ(パッション)』など、「北米ではBDが発売されていてマルチリンガル仕様になっているが、日本語字幕だけ入っていない」というソフトが多数ある(『パッション』日本語版BDは発売されていない)。その意味では日本は、アニメ作品BDばかり繁栄して、(特に旧作の)実写作品BDが少ないという、非常に奇妙な状態となっている。これは私の勝手な想像だが、ハリウッドメジャーにとって海賊版ソフトの被害が多い地域に対しては、マルチリンガルの正式版を出すことによって海賊版の被害を抑えたい。一方日本では海賊版ソフトの被害が少ないので、日本版BDは別に発売して稼ぎたい、ということではないだろうか。

そしてポニーキャニオンということでいうと、『ロード・オブ・ザ・リング』のDVDも日本ではポニーキャニオンが発売していた。この『The Lord of the Rings』も、BD-BOXが発売されることは北米で既に発表されている(ただし劇場公開版で、スペシャル・エクステンデッド・エディションではない)のに対し、日本での発売についての情報はさっぱりない。日本でBD版『ロード・オブ・ザ・リング』が見られるのはいつの日になるのやら……。

Blu-ray Disc、発売から3年で1500タイトルを突破 - ITmedia +D LifeStyle

上の文章を書いた後にこんな記事を見つけた。アニメ作品BDばかり繁栄というのはちょっと言い過ぎだったようで、思ったよりも洋画が多かった。しかしやはりアニメ&特撮の比率が非常に高い。どうせなら、DVDソフトとBDソフトでの、ジャンル別の割合も見てみたかったところである。