押井守、深作健太インタビュー

MSN-Mainichi INTERACTIVE 映画 竹橋シネコン:押井守-深作健太ビッグな2人がコラボ

先日の記事と同じだが、押井氏と深作氏のインタビューが掲載されている。以下、記事が削除されたときのために引用保存。(情報提供 谷口氏)

竹橋シネコン:押井守-深作健太ビッグな2人がコラボ

 ■押井守監督「僕自身の野望を健太君の力を借りて実現したい」

 8日に行なわれた第5回日本映画エンジェル大賞授賞式では、「エルの乱(仮題)」で大賞に選ばれた深作健太さんの口から、「攻殻機動隊」「イノセンス」などで知られるアニメ界の巨匠、押井守監督とのコラボレーションが発表された。

 今回、深作さんが企画した「エルの乱」は、13年前に大阪で起きた暴動に着想を得て作られている。当時、父である故・深作欣ニ監督と現場を訪れ、「いつかこれを映画にしようと温めてきた」ものの、欣ニ監督は03年に逝去。「映画の師匠でもあり、パートナーでもあった父を亡くし、この企画をどう組み立てていくべきか」と悩んでいた深作さんの「突破口」となったのが押井監督だった。

 深作さんから話を持ちかけられた押井監督はその熱意にほだされ協力を約束、「ぜひ成功させて深作健太を男にしたい」と語る。

 深作さんと押井監督の具体的なやりとりは次の通り。

--今回の企画がスタートしたきっかけは。

 深作:押井さんのことはもちろん存じ上げていましたが、大の警察嫌いの僕は、「攻殻機動隊」も「機動警察パトレイバー」も見たことはありませんでした。

 ところが、押井さんが作られた「ケルベロス」を拝見して、これはただの警察モノではない、警察を描きながら、その裏にある反権力を描いているのではないかと思ったのです。だとしたら、そのキャラクターをお借りして、僕の作りたいものの方向性を示していただけたら、という一方的な片想いから始まりました。

--深作さんに協力したいと思った理由は。

 押井:今時暴動モノを撮りたい人なんていない。僕は、17、18年間警察モノをやってきたけど、アニメの世界だからできたこと。実は僕自身、内戦モノを日本の実写映画でぜひ実現したいという思いは前からあった。でも、それをやれるだけのエネルギーが、僕の中にはもうなかった。それが、健太君と組むことでできるのなら僕の夢も叶う。

 それに僕自身、学生時代に深作欣ニ監督の映画を見て育った。そういう縁なのかなあというのもあるし、なにより、深作健太という監督のこれからに興味があった。

--押井監督からあがってきたプロットはどんなものですか。

 深作:戦争映画でした(笑)。すごい挑戦状をいただいたと思っています。

--撮影が難しそうですね。

 押井:日本映画の最大の弱点は、市街戦ができないとか、戦車を動かせないとか、ヘリコプターが街に下りてこられないとか、国内で映画を撮るなと言っているに等しいくらい制約があること。でも、制約を外していく方法論はあると思う。

--どのくらいの製作費を想定されていますか?

 深作:企画書には6億円くらいと書きました。実行予算かどうかは、今後の僕のプロデューサーとしての腕が試されるところです。

--お二人のコラボレーションが決定した今、改めて抱負を。

 深作:「コラボレーション」なんて恐れ多い。押井さんの教えなくしては、この企画は成り立ちません。いろんなことを吸収して自分の思いをぶつけていけたらと思っています。

 押井: 一方的に力を貸すというのではなく、僕自身の野望を彼の力を借りて実現したい。日本映画ばなれした作品にしたい。僕は、健太くんの師匠でもなんでもない。監督同士が組むのは珍しいが、僕はアニメの監督だから利害もぶつからないだろう。ただ、飽くまで彼の監督作品なので出しゃばらないようにしたい。アニメの人間の立場で、脚本とデザイナーとしてやっていけたら。

--今後のスケジュールは。

 深作:来年の早い時期でのクランクインを目指しています。

【文・写真/りんたいこ】