「文春エンタ!」で押井守インタビュー

現在発売中の『週刊文春エンタ!』に押井守インタビューが収録されているとのことで、その一部がWeb版に掲載されています。

「記憶に残ってるのは『DUNE』だけ」「『007』にはがっかり」押井守監督が振り返る“2021年のエンタメ”

 (『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』について)でも、そうやって60年近くも続いてきた大人気シリーズが終われば、何かしらの感慨、時代が変わった瞬間を感じたりするものだと思うけど、そういう感情も湧かなかった。それは何を意味しているかといえば、すでに『007』は終わっていたということ。今となれば、とっとと冷戦が終わったときにピリオドを打っていればよかったと思うよね。

私は『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』(84)で、“永遠の日常”を終わらせたかった。決定的な作品を作れば終わらせることができるかもしれないと思ったんだよ。でも、結果としては原作者の高橋留美子さんに嫌われただけ。いや、嫌われたどころじゃなく、もう忌み嫌われたからね(笑)。まあ、一介の雇われ監督がそんなことできるはずもないんだけど、あの頃は私も若かったから(笑)

押井氏は、延々と似たような話が繰り返される作品というのを忌避しているように思われます。だから『うる星やつら2』で暗にそれを否定・拒否し、ボツになった押井守監督版『ルパン三世』劇場版でも同様のことを狙っていたようです。

押井氏は『ビューティフル・ドリーマー』についてあちこちで、これを作ったことで高橋留美子氏に嫌われたというような発言をしておりますが、少なくとも髙橋氏のほうからこれを肯定するはっきりとした記述は未だに発見できていません(大人の配慮で髙橋氏あるいは雑誌社などが出していない可能性もありますが)。1作目の『オンリー・ユー』は「原作者として大好き」、2作目の『ビューティフル・ドリーマー』は「お客さんとして楽しめました」という記述は存在し、また髙橋氏は押井氏との不仲を否定するコメントを出したこともあります。ただプロデューサーの落合茂一氏(相当な原作信者だった)は「よくもこんな『うる星』作ってくれやがったな」「(試写の後)フィルムを持って逃亡しようかと思った」と発言している記録があります。

もしかしたら押井氏が一方的に髙橋氏に「嫌われている」と思っているだけなのかもしれません。『機動警察パトレイバー2』で南雲しのぶのキャラクター解釈について、演じる榊原良子氏とキャラクターの解釈について意見が割れたとき、押井氏は「(榊原氏と)ケンカした」とコメントした一方、榊原氏は解釈の違いとしか思っておらず押井氏について「意外とナイーヴな人」とコメントしていたということがあります(その後押井氏いわく「仲直り」し、榊原氏は『スカイ・クロラ』『立喰師列伝』『ケルベロス 鋼鉄の猟犬(ラジオドラマ版)』などの押井作品に連続出演)。