アニメハックに押井守インタビュー 実写作品作成中との話やサイン色紙プレゼントも

押井守監督の“企画”論 縦割り構造が崩れた映像業界で、日本の映画はどう勝負すべきか

アニメハックに押井守監督のインタビューが掲載。ちらちら話は前にも出ていた気がしますが実写作品を制作中という話や(『キマイラ』は劇場アニメとの事なので別のはず)、映画業界の現状(映画のプロデュース、宣伝、製作などの話が中心となっています)、邦画としてはここ最近で最高のヒットになった『カメラを止めるな!』の事などについても触れられています。また、Twitterでリツイートした人抽選で1名に、押井氏のサイン色紙がプレゼントされるというキャンペーンもやっています。

2018年の前半は仕事でかなり忙しかったんですよ。これから世にでる作品で、まだタイトルは言えませんが、ある実写作品の作業をずっとやっていて、2月ぐらいまでは脚本をバタバタと書きまくっていました。3月から本格的に撮影の準備をはじめて、4月末から5月にかけて撮影。それからいろいろと後始末もして、今年の前半はけっこう活躍したと思います。

「カメ止め」は、どう考えてもみんなで楽しく見る映画ですよね。僕はモニターで見たけど、あの映画は友だち同士で見て盛り上がる映画でしょう。だから、当たったんですよ。(中略)口コミで広がるって言うさ。ただ、よく言われる「これからはSNSや口コミだ」という言説も、こういう映画の場合は自然発生的なもので、お客さんが勝手にやる世界だから、配給会社や宣伝会社が何をやろうが実は関係ない。お客さんが自分たちで探した好きなものを自分たちで広げようとする一種のボランティア精神だから、これは仕掛けようがないですよね。むしろ、仕掛けようという考え方自体が間違っているとすら言えると思う。

何年か前にあるプロデューサーが言っていたのは、日本の映画で当たる可能性があるのは、「売れている原作で、売れている役者をそろえて、名のとおった監督が撮る」の三拍子がそろうことだと。「この法則しかないんだ」と言っていて、これを満たさないとプロデューサーとして仕事をしたことにならないとまで言っていた。当時は「本当かな?」と半信半疑だったけど、今は明らかに間違いだと思っている。そんな企画で山のようにつくってきて、どれだけのものが当たったのかは、これまでの数字が示しているじゃないのってさ。売れている原作のものを10本つくれば、2、3本はそこそこいくかもしれないけど、トータルで考えたときにそれはどうなのって思うんだよね。

本来、監督が撮りたいもの、脚本家が書きたいものをどう映像化するかというところでプロデューサーは機能するべきだし、それをどういう場で成立させるかを考えるべきなんだけど、今はそのようにはなっていないよね。決められたレールが完全に敷かれているなかで、何を乗っけるかの仕事しかしていないように見える。レールを敷くところからはじめるのは無理だとしても、せめてどのレールに乗っけるかぐらいの仕事はしてよって話なんだけれど、残念ながらそうはなっていない。実際に僕はそれを体験したからね。「ガルム・ウォーズ」(16)という作品は、出口を決めないままにつくってしまった。どのレールに乗せていいかが最後まで分からなかったんですよ。

今は映画が受容される環境自体が大きく変化していて、これってデジタル化以上に大きな変化なんです。そうなると映像をつくるさいの選択肢がたくさんあるのに、つくる側がそれにまったく対応しきれていないし、判断する根拠すらもてていない。私に言わせると、原作が売れているからなんていうのはなんの根拠にもなっていなくて、スポンサーを説得する材料にしかなっていないと思います。