『キマイラ』押井守による映像化についての原作者・夢枕獏氏のインタビュー記事

『キマイラ』映像化発表! 30年以上書き続けてきた、夢枕獏氏に思いを聞いた。 | ダ・ヴィンチニュース

 かつての読者、新しい読者を『キマイラ』という「世界」に来てもらう。そのために映像化はどうだろうか? と考えていたんです。そこで押井守さんの名前が挙がったんですね。もちろん、押井守さんのことは作品を通じてよく知っていて、何度かお話をしたこともあったのですが、最初は「え!」と驚いたんです。

 これは悪い意味ではなくて、「押井さんにお願いしちゃってもいいの」と考えてしまったんですね。押井さんはこれまで、優れた作品を作ってこられて、海外での認知度も高い。とてもおいそがしい方なので、お願いしてもやっていただけるかどうか。もうひとつには、お願いして、もし押井さんが断りたいときに、押井さんに断る負担をあたえてしまうのではないかと思ったんです。

 一瞬、「自主規制」をしてしまいそうになったんですが(笑)、でも押井さんがやってくれたら、こんなに素晴らしいことはない。最高でしょ。ダメもとで「では、動いてみよう」と押井さんの事務所との調整が始まりました。

 結果的に、押井さんに引き受けていただけるという、とても嬉しいお話になったわけです。

 押井さんの作品で、わたしが最初に見たのは『天使のたまご』(1985)です。映像表現に強い衝撃を受けたことをよく覚えています。その後の彼の活躍は皆さんよくご存じの通りで、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)で世界にその名を知られるようになりました。彼は、普通の映像作家やエンターテインメントとしてのアニメ作家とは違う、深い「場所」まで下りて仕事をされる人だと思っています。その作家性は『キマイラ』と合うんじゃないかと思っています。