“押井守が『機動警察パトレイバー』実写映画化?”の報道について

17日に、ニコニコ生放送にて押井守×鈴木敏夫×川上量生対談が行われましたが、そこで「『機動警察パトレイバー』が実写映画化される」というような発言があったとして、一部で話題になっています。例えば、

押井守監督「パトレイバー」を実写映画化? ニコニコ生放送でポロリ – シネマトゥデイ

これは番組半ばに旧知の間柄でもある鈴木敏夫氏から「『パトレイバー』実写で映画化するの?」と尋ねられた際のもので、押井監督は「言えるわけないでしょ!」と最初は否定しつつも「急に忙しくなったの。ここ3年間暇だったのに」と現在進行中であることを示唆。

とあるのですが、これは『パトレイバー』実写化の企画と、現在進行中の企画を結びつけて、あたかも実際に進んでいるかのような印象を与える記事になっているように思えます。実際、別の記事を見ても、

「パトレイバー」実写化? ジブリ鈴木Pの暴露に、押井守監督あたふた : 映画ニュース - 映画.com

鈴木氏は「そういえば『パトレイバー』をライブアクション(実写)でやるの?」と突然暴露。鈴木氏はある関係者から聞いたといい、押井監督も「誰から聞いたの?」とあたふたしていた。

と、「現在『パトレイバー』の実写映画化が進んでいる」というような書き方はしていません。

実際の放送上のやり取りは、

鈴木「パトレイバー、ライブアクションで作るの? 聞いたよ? 石井(I.Gの石井プロデューサー)から聞いたの。ほんと?」
押井「言えるわけないでしょそんなこと!」
鈴木「ああ、やってるんだ! わかった」
押井「他にも色々あるんだけどさ、だから急に忙しくなったの。本当に3年間暇で暇で」
鈴木「外国のところがお金出すって、それも聞いたよ。古ネタでさ、出したらそれを気に入ったとか」
押井「それは別の話。それ以外にもあるんだよ色々」

となっており、文脈の捉え方によって解釈が異なってきます。

『機動警察パトレイバー』実写化の企画はかつて実際に存在していて、幻に終わった企画『G.R.M.』(後に『アヴァロン』が撮影されるきっかけにもなる)のテスト用に、“実写の風景と、CGのレイバーを合成させたらどうなるか”ということを試すための、1~2分のパイロットフィルムも作られ、何度か公開されています(その写真やメカデザインが、押井守・映像機械論[メカフィリア]に収録されています)。ですがそれ以後、この企画が実際に動いているという話は少なくとも表には出ていません。『パトレイバー』原作者メンバーであるヘッドギアの一員、ゆうきまさみ氏はTwitterで、

と発言しています。

ではなぜ押井氏は「『実写版パトレイバーはやらない』と明確に否定しなかったのか」という話ですが、押井氏に限らず、「以前は駄目になったけど、この企画はいつかやりたい」と思うものですから、はっきり否定しなかったのではないかと思われます。実際、一度は潰れた、押井守版『鉄人28号』映画化が、舞台劇として復活したように、形を変えて実現することも有り得るからです。

というわけで、『パトレイバー』の実写映画化が実現する可能性は低そうですが、“かつての『実写版パトレイバー』の企画を元にした何か”であれば、実現するかもしれないし、現在本当に動いているのかもしれません。

そういえば放送では『人狼』リメイクの話も出ましたが、この話のことでしょうか。それより今『GHOST IN THE SHELL』のハリウッドリメイクはどうなってるんだという話ですが。

2013年3月に「機動警察パトレイバー」実写版プロジェクト 公式サイトが公開されました。こちらには押井氏は関わっていないものと思われます。