「押井守監督の『勝つために見る映画』」第2回

ナンバー2のススメ~勝利条件は「仕事は自分の好きなようにやる」こと:日経ビジネスオンライン

今回は『裏切りのサーカス』という映画を紹介しています。

押井:冷戦期の話なんですが、いま冷戦の映画をなぜ作るんだろうってそれがまずびっくりした。映画の中で第二次大戦後の時代をものすごく忠実に再現してるんですよ、車から服装から街角から。あの努力がまずすごいんですが、でもいまなぜ、この時代の映画を作るんだろうって気になった。

押井:「裏切りのサーカス」は、イギリスの諜報機関MI6の幹部の一部が「アメリカのCIAと連携するべきだ」と主張し、そこをソ連のKGBの二重スパイに狙われる話で。KGBが本当に欲しかったのはイギリスの秘密じゃなくて、CIAの情報だけどさ。要するに4人の幹部のうち誰が二重スパイなのか、それを探り当てる話で、映画の方便としてはそういう仕掛け。

だけど本当に語りたかったのはそこなのかという話だよね。それだけだったらミステリーが好きな人間にしか需要がない。何かしら普遍性がなければ映画も当たらないし、そもそも映画が成立しない。純粋にパズルやゲームで映画を作ることも可能だけど、それは好事家の愛玩物にしかならない。

どこかしら人間が生きるということ、人生とか時代とか歴史とかいう話につながる普遍性がないと映画にならないと僕は思うし、あの映画はそれがあった。

元MI6諜報(ちょうほう)員の経歴を持つ作家ジョン・ル・カレによる人気スパイ小説を、『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソン監督が映画化したサスペンス。英国諜報組織の中枢に20年も潜入しているソ連の二重スパイを捜すため、引退生活から呼び戻さ­れたスパイが敵味方の区別もつかない中で真相に迫る姿を描く。主演のゲイリー・オールドマンをはじめ、『英国王のスピーチ』でオスカーを受賞したコリン・ファース、『イン­セプション』のトム・ハーディら実力派の競演は必見。