ハラド

概要

カテゴリー地名
スペルHarad
その他の呼び名ハラドワイス(Haradwaith)、南方国(Sutherland)、太陽の国(Sunlands)*1

解説

シンダリンで「南(south)」の意。ゴンドールモルドールより南の地域を漠然と指し、その中で比較的北側は近ハラド、奥地は遠ハラドと呼ばれる。この地域に住む人間ハラドリムと呼ばれる。

「わしらそっちには行ったことない。だけど百リーグもあるっていうよ。そのうち決して静かにならない大きな水の見えるとこに出るっていうよ。 … それからその先にはまだまだ国があるっていうよ。だけどそこじゃ黄色い顔がとっても熱くて、雲がめったに出ない、そして人間はとっても荒々しくて黒い顔をしてるっていうよ。わしらその国は見たくないよ。」*2

地名

ハラドの歴史

ハラドにいつから人間が住み着いていたのかは明らかではないが、第二紀にはすでに原住民がおり、ヌーメノールサウロンとの係争地となる。

第二紀600年にはじめて中つ国の沿岸に現れたヌーメノールの船団が、第二紀を通じて最も頻繁に航海したのがハラドの西岸であった。
当初、ヌーメノール人は友好的な訪問者であり、ハラドの民をはじめとする中つ国の土着の人間はかれらを落日の彼方から贈物を携えて現れる神として崇めた。だがヌーメノールに影が育つにつれ、かれらはハラドの西岸を中心として無数の植民地を築き、やがて過酷な略奪者として君臨するようになる。
1800年頃からヌーメノールは恒久的な居留地を築き始め、その最大のものであるウンバールは2280年には大要塞と化した。

一方、1701年にエリアドールを駆逐されたサウロンモルドールに拠り、中つ国と南に勢力を伸ばした。
サウロンは人間の王侯に九つの指輪を分配してかれらを支配し、中つ国の人間の上に神として君臨するようになる。やがてサウロンの勢力はハラド西岸のヌーメノールの植民地にまで達し、両者は中つ国の覇権を巡って衝突するようになった。
そこで第二紀3261年、ヌーメノールの黄金王アル=ファラゾーンは大艦隊をウンバールに上陸させて、投降したサウロンを翌年ヌーメノールへ連行した。

しかしその後、サウロンの影響を受けて邪悪に染まったヌーメノール人はなお一層過酷な圧制者となり、ハラドの植民地から富を収奪する一方、人身御供をはじめとした忌まわしい邪教を中つ国に広めた。
第二紀3319年にヌーメノールは海中に没したが、没落を免れた邪悪なヌーメノール人は南方の植民地で生き残り、黒きヌーメノーレアンとして知られるようになる。かれらの内ヘルモールフイヌルハラドリムの中で権力を握った。

そのため第三紀になってもハラドはサウロンの影響が強く、ゴンドールに敵対的であり続けた。
ウンバールはそうした敵対勢力の拠点となった。そこで830年から1050年にかけてゴンドールの船艦王たちは海軍力を築いてウンバールを奪取し、ヒャルメンダキル一世は南征して大勝し、ハラドの王たちにゴンドールの主権を認めさせた。これはゴンドールの最盛期を通じて続いた。
しかし同族の争いによってゴンドールが海軍力を喪失し、ウンバールが叛徒の手に落ちると、ハラドは再びゴンドールに敵対するようになる。ウンバールを拠点とした海賊はしばしばゴンドールの沿岸地方を悩ました。

やがてサウロンモルドールに戻ると、ハラドの国々は公然とその属国として動いた。
指輪戦争では多くの軍勢がモルドールの召集に応え、ゴンドールへの攻撃に参加した。

第四紀になると、ハラドと西方諸国の間で講和が成立したようである。

Iron Crown Enterprises』による設定

ハラドを舞台にしたキャンペーンが展開する九冊のサプリメントが出版されている。

コメント

最新の6件を表示しています。 コメントページを参照

  • 一度どなたかに削除されましたが、『終わらざりし物語』の引用の注釈に載せた一文あるいはこの「ゴンドールに接するただのハラド(南)」とは南ゴンドール(ハロンドール)のことを指している可能性もある。を再掲しました。理由は以下です。
    a.直前箇所に「北方」の南限は南は古のゴンドールと近ハラドの国境と書かれている。これは明らかにハルネン川の境界のことを指しているが、ということはハルネン川以南の近傍が「近ハラド」である。
    b.ところが、ガンダルフが旅した「南方」とはゴンドールに接した(ゴンドール人が近も遠もなくただハラド「南」と呼んだ)南の国だと書かれている。ということは、この「ハラド(南)」はゴンドールには接しているが、近ハラドとは異なる地域でなければならない。
    c.この条件に当てはまりうるのはハロンドールしかない。
    傍証として、同じ草稿でインカーヌスはハラドリムの言葉 … をクウェンヤに取り入れたものだと書かれていますが、これもゴンドールとハラドが混ざった曖昧な地域としてのハロンドールを意識した記述ではないかと思います。 -- 2015-12-22 (火) 18:11:12
    • Aはその通り。 Bは翻訳の問題で、原文ではBut the southern regions in touch with Gondor (and called by men of Gondor simply Harad "South", Near or Far)で、分かりやすく言うと「近ハラドも遠ハラドも含めて、単にハラドと呼んでいた」ということです。ゴンドール人にとってみれば、本来の国境のハルネン川より南の地は全部ハラドで、より近いハラドを近ハラド、より遠いハラドを遠ハラドと呼んでいた。ゴンドールに接していたハラドということなので、近ハラドあたりは仲間にできそうだったということでしょう。逆にウンバール以南のハラドはサウロンの領土だったそうですが。 Cは傍証としてはかなり弱く感じます。赤表紙本にあったインカーヌスの名を、セイン本の註釈ではそう説明されているというだけ。ゴンドールとハラドが混ざった曖昧な地域というなら、ウンバールもそうでしょう。『追補編』によると、ウンバールは西方語を母語とする地域に含まれ、ゴンドールの支配下だった時期もありますし、同族の争い以降は王位簒奪の疑いをかけられたゴンドールの王族たち(恐らくエルフ語の知識もあるであろう)の亡命先でもありましたし。 -- 2015-12-22 (火) 21:16:41
      • 訂正:ここでの文脈では、「ハラド」は近・遠含めてゴンドール以南(ハルネン川以南)から、ウンバール以南のサウロンの領土の間にある地域のことですね。ゴンドールと南のサウロン領の間の土地が八ラド(近ハラドと遠ハラドに分けられる)で、ここは対サウロンの勢力できたかもしれないから、ガンダルフが旅をしたと。ただし、アラゴルンの言った「星の光さえ違うハラドの遠い国々」は更に南の、南半球の土地のことで、故に「ハラド」はあいまいな言葉だ、という趣旨でした。 -- 2015-12-23 (水) 03:47:30
      • 書いた者です。なるほど、私が翻訳文を誤読していたようですね。原文確認の大事さを痛感しました、ありがとうございます。記事の一文は再度削除いたしました。 -- 2015-12-23 (水) 23:21:55
  • 証拠文献は一切ないが、どうも統一的国家はなかったように思われる。ゴンドールが従属させたのも“ハラドの王たち”だし、ヌメノールやサウロンは恐らく間接支配や分割支配で強力な統一国家がハラドには生まれないようにしていただろうし。その時最も強力な首長が多くの部族や諸侯を従えたり、背かれたりする群雄割拠の多民族国家だったのではないかと妄想。(中世ヨーロッパが中東をサラセンと一くくりにしたようにハラドの中にも多くの民族や宗派がいたはず) -- 2021-01-25 (月) 13:03:51
  • 暗黒語がもろにモンゴル語の響きでクウェンヤ語がラテン系の響きなのは草
    PIIGSが経済的に没落してアジアが繁栄してる現代だったら別の響きになってただろうな
    テングワールはハングルの構成原理をパクって筆記体っぽくしてるような気がするが -- 2021-02-17 (水) 18:08:36
    • 自分の乏しい知識を当てはめているだけ
      束教授はあなたよりよっぽど博識なのですよ -- 2021-02-17 (水) 18:44:51
    • PIIGSはトールキン教授の時代から没落してるだろ。ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインだぞ。
      そして前の人の意見に賛成。 -- 2021-02-17 (水) 18:58:09
    • 自分の印象だけで物を語るんじゃないよ -- 2021-02-17 (水) 20:03:14
    • まぁまぁみんな。こういう思春期の年代には、学生特有の謎の万能感で無闇に人を見下したりわかってるつもりの自分に酔った言動をしたりはつきものだよ。
      年長者として暖かく見守ろう。 -- 2021-02-17 (水) 21:56:33
    • 古英語の専門家がアジアの諸言語にも精通していたとは思えない。ましてやハングル文字など
      そもそもクウェンヤはラテン語じゃなくてフィンランド語が元だし。 -- 2021-02-18 (木) 22:54:47
      • 暗黒語がもろにモンゴル語の響きってのも怪しくなってきたな -- 2021-02-18 (木) 23:22:05
      • 敢えて言うとすれば、日本語ってクズドゥルっぽくない? -- 2021-02-24 (水) 19:17:29
      • どうだろうね。教授日本語さっぱりわかりませーん言うてたからな。 -- 2021-02-24 (水) 19:49:05
      • 教授の意図は抜きに考えて、一番近いのはクズドゥルかなって -- 2021-02-25 (木) 07:44:43
    • 暗黒語は紀元前のメソポタミアの一言語が元。クウェンヤは複数の発想元があるが、一番大きい影響はフィンランド語。表記など一部にはラテン語の影響もあるが、あくまでごく一部。 -- 2021-02-19 (金) 22:14:00
    • こういう人はマゾの一種なのだろうか。こういう反応しか返ってこない事はわかりきっているだろうに…。 -- 2021-02-24 (水) 14:16:08
  • ファラミアが「話によれば、その昔にはゴンドールと南のさいはての国、ハラドの王国との間には通商関係があったということだ。といっても友好関係は一度もなかったが」と言ってたけど。
    そもそも何を貿易商品にしていたんだろ、特にゴンドールは。
    ゴンドールの経済や産業体制が全然描写されないから分からんけど、特に南方民が欲しがりそうなものが思いつかないんだよね。
    ハラドからは、じゅうの象牙とか需要ありそうなんだけど。
    カレナルゾン喪失前なら馬とかかな?
    史実でキリスト教勢力とムスリム勢力が最も熾烈に激突してた十字軍前後にも、両者間の貿易は断絶しなかったし、ゴンドールとハラドの通商関係が消えたのはただ単にゴンドールから提供できる魅力ある商品が無くなったからとかだったりして笑 -- 2022-01-11 (火) 07:59:20
    • そりゃ金っていう貴金属自体が輸出品同然だろ
      技術力自体はゴンドールの方が上そうな雰囲気だし
      輸出するものが無かったなんて事はないと思うんだ
      それこそゴンドール=一部モデルとなった東ローマみたいな? -- 2022-01-14 (金) 17:55:42
      • なぜかよく、ビザンツ(東ローマ)=ゴンドールと結びつけるの好きな人いますが、ビザンツとゴンドールの国体や生存戦略は似ても似つきませんよ。
        手元にある幾つかのビザンツ専門書を念のために確認してもいいけど、ビザンツはよくコンスタンティノープルのおかげで貿易国家みたいなイメージあるんだが実際には毛色が異なるんですよ。
        貴族以外に民営の有力な貿易大商人もほとんどいませんしね。
        確かにいわゆる皇帝絹織物のように、ビザンツの美術工芸技術力は卓越していますが、それはビザンツ皇帝が持つ絶対的権力と、圧倒的な富や美術品を下賜することで戦争を回避したり、反抗的な従属勢力を圧倒させるいわゆる「ビザンツ的な」外交戦略があってこそ維持・成立したものです。
        ゴンドールにはその2つ、特に後者が欠けていると思われます。
        ヌメノール由来の築城技術力なども廃れていますしね。
        築城技術力のような生命線に近い技術すら廃れる国家で、絶対的な権力や富力を保有する者もおらず、ましてや工芸品や美術品を一見屈辱な外交戦略に用いた形跡もないなかで仰るような貿易品が保たれたと俺には思えないですかね…。
        ビザンツの上記のような生存外交戦略が評価されたのも割と近年ですし。
        そしてもしあなたがビザンツとゴンドールを結びつけるのなら、それこそゴンドールが貴金属を輸出したのはおかしくないですか?
        ゴンドールがビザンツならその南方に位置するハラドはアフリカ大陸ですし、歴史上常に欧州とアフリカとの貿易で貴金属は南から北に輸出されています。
        また、現実世界を抜きにしても「貴金属収奪に走ったヌメノーリアンが築いた最大拠点」がウンバールであることからも、中つ国の貴金属産出地としてハラドおよびその周辺が有望な産出国だと推測されます。
        ゴンドール最大の港湾都市ペラルギアは節士派の拠点ですしね。
        もしゴンドールが貴金属の産地なら、その集積に適したペラルギアを王党派が掌握しないわけがないと思いますし。
        以上のように、①ゴンドールの外交戦略と国家構成②ハラドとゴンドールの地政面からの産業推測③ヌメノール人の植民地方針などから私は
        全盛期はいざしらず、衰えたゴンドールにはハラドにとって(少なくとも関係悪化や政情不安のリスクを忘れさせるほどには)魅力ある貿易商品がなかった。のだと推測します。
        長文すみません。ただ、もちろん反論ではあっても否定ではないのであしからず。 -- 2022-01-14 (金) 20:37:09
    • 塩は交易品に成りえると思います。 -- 2023-06-26 (月) 17:40:55
  • 戦車競争とか剣闘士競技みたいなカトリック的な倫理観の浸透で廃れたような文化を保有してそうなイメージがある。それである意味ゴンドールよりもギリシャ・ローマ的な面が色濃かったりして。 -- 2023-05-14 (日) 14:48:01
    • ギリシャ文化が本国で廃れ、ヘレニズム諸国やその文化的後継者(略奪者)たるローマでこそ尊ばれた…みたいのはありそう。
      ヌメノールで楽しまれた野蛮気味な遊戯が、お堅いゴンドールでは忌まれ禁じられ、王党派の残党や黒きヌメノール人が支配したハラドでは色濃く残ったって構図かな。
      第三紀末期にはいずれにしろ姿を消してそうだが。 -- 2023-05-14 (日) 17:05:26
  • 実はそんなに南方じゃない問題。大体イタリアの南か西日本くらいの緯度。地図の南端でも台湾ぐらいの位置。 -- 2024-04-01 (月) 18:46:47
    • トールキンが物語の舞台にした中つ国(ユーラシア)北西部からしたら「南方」という意味ですからねえ。トールキンからしたらイタリアなどのラテン世界ですら十分「南」って認識だった。
      あとよく言われるように日本の大部分は文化的にも気候的にも亜亜熱帯で、北半球の中ではどちらかと言えば南寄りの国。 -- 2024-04-01 (月) 23:55:12
お名前:

人種差別をあおるもの、公序良俗に反するもの、項目とは関係ないコメント、他コメント者への個人攻撃及び価値観の押しつけや、相手を言い負かすことが目的の非建設的な議論、現実世界の政治および近代・現代史、特定国家、団体、民族などに結びつけ批判、揶揄するようなコメントなどは削除の対象となります。その他コメントについて。
Last-modified: