地デジとBlu-rayがTVアニメにもたらすもの

地デジ完全移行まで1234日

昨日2008年3月7日は、地上デジタル完全移行まであと1234日だったそうです(予定通りに移行が進めば……ですが)。

また、東芝はHD DVDからの撤退を発表し、次世代DVDの企画はBlu-rayで一本化されることになりました。これで、「フォーマット戦争が終結するまで」と様子見だったユーザーもBDを買いやすくなりました。またBDレコーダを購入すると同時に地デジ環境を整えるという人もいるでしょうから、地デジの普及も相乗的に進むと思われます。

このあたりのことが、TVアニメにもたらす影響について考えてみたいと思います。

アニメファンにおける地デジ及びBDレコーダ普及率がどれくらいなのか、統計を取ったわけではないので正確なところはわかりませんが、じわじわと上昇しているのは確実と思われます。
その中で最近はTVアニメでもHD制作が徐々に増えてきて、地デジ(あるいはBSデジタル)でHD放送が行われるようになってきました。ですが、TVシリーズアニメのBDパッケージというのは中々発売されません。

今までの例では、アニメ放送終了後けっこうたってから『AIR』及び『うたわれるもの』のBlu-ray BOXが発売されたくらいです(ただし『AIR』はSDからのアップコンバート)。これらの2作品は人気が出たので「BDでBOXを出し直しても売れる」と読まれたのでしょう。あとは『FLAG Director's Edition 一千万のクフラの記録』という総集編が出たのと、今度『攻殻機動隊S.A.C. TRILOGY-BOX』が出るくらいです。

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企業からすると、「DVDもBDも両方買わせる」のが最大の売り上げになります。それに、いくらBDプレイヤーが普及しつつあるといってもDVDプレイヤーの台数にはとうてい及びませんし、BDパッケージを作成するのはDVDよりもコストがかかります。ですから「まずはDVDで出し、その売り上げを見て、いけるようだったらBDでまた出す」というのが現状のビジネスモデルでしょう。

ですがこれが逆に、ユーザーからすると「今DVDを買っても、どうせ後からBDで出るんじゃないの?」と見られることにも繋がっています。そのため「後からBDで出るなら、その時に買おう。まあ結局BDが出なかった場合、DVDも買わなくていいや」という傾向が徐々に出つつあるようです。
さらに地上デジタルの普及という点がこれに重なります。「地デジを自分で保存した方が、DVDより画質が良いのに、どうしてDVDを買う必要があるの?」「いくらDVDに映像特典とかおまけが付くといっても、それで買う価値があるの?」という考えが重なり、結果として「DVDなら買わなくていいや」ということになってしまいます。ところがアニメはどんどん新しいものが大量に出続けているので、(仮に出るとして)ずっと後からBDが出ても、その頃にはその作品のことを忘れ去れている……ということになりねません。つまり、最初からDVDとBDを同時に出さないと、売り上げを減らすことになってしまうということになります。ですが2種類のパッケージを出すとなると、うまく出荷数を読まないと売れ残りもしくは品不足が起こって、また売り上げを逃すことになります(そういう意味ではDVDとBDを同じパッケージに入れる商品展開方法は有利です)。

そんな中で、『機動戦士ガンダムOO』がBlu-rayで発売されることになりました。BD版の発表がDVDの発売よりも先に行われているにも関わらず、DVD発売からBD発売までけっこう間が空いているのが不思議なところですが、これは「BDはBOXで出して一気に買わせたい」「少しでも時間を稼いでBDプレイヤーの普及を待ちたい」という考えが現れているのでしょうか(現在の所、『OO』のBDがBOX形式での発売になるかどうかはわかりませんが)。

どちらにしても、地デジとBDの普及がTVアニメビジネスに変化をもたらし、映画ソフトのように「DVDとBDのパッケージを同時に出さないとならない」という状況が近づいていると思われます。あるいは、もう既にそうなっているのかもしれません。「TVアニメは、Blu-rayとHDを使わねばならないほどの映像密度はない。DVDで十分」という見方もあるのですが。

結局は「DVDとBDは同時に発売するけど、特典はDVDにだけつけて両方買わせる」という商法に落ち着くのかも……。