パッション

イエス・キリストはユダヤ教を批判したため、ユダヤ教の司祭やその支持者の恨みを買っていた。その結果、彼は十字架に張り付けにされて殺された。その死に至るまでの最後の12時間を描いた映画が『パッション』である。私は映画館にも行ったし、DVDも先月に購入して見ていたが、改めてこの映画について書いてみたい。

とにかくこの映画は、公開までもめにもめたことが知られている。
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上記の記事を見れば大体わかるだろうが、ユダヤ人に対する差別の口実として、イエスを死に至らしめたことが使われていたという。そして現在ユダヤ人団体は、過去にまで遡ってあらゆるユダヤ批判を抹殺しようと試みている。そしてその行動に少しでも異議を唱えた者には「人種差別主義者」「ナチの手先」などというレッテルを貼り付け人格攻撃しているわけだが、その被害にもろにあったのがこの映画である(もっともユダヤ人=イスラエルを敵とするアラブ諸国ではこの映画は喜ばれ、イランでまで上映されたのだが)。

その話はこれまでにするとして、映画の本題に入りたい。
この映画は宗教映画ではない。作中には、宗教的価値観の押しつけや、道徳的教訓などは一つも入っていない。この映画は、監督のメル・ギブソンが、イエスの弟子が書いたイエスの生涯についての書物“福音書”を事実のものとして作ったドキュメンタリー映画というべきだろう。
そしてこの映画では、そのタイトル通りイエスの受難が執拗に描かれる。民衆から唾を吐かれ、鈎爪のある鞭で打たれ、叩かれ、手足に釘を打たれて十字架に張り付けにされる。この映像を見てショック死した人間がいたほど、とにかくその様は残酷でむごたらしい。
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なぜそこまで執拗に残忍な様が描かれる必要があったのか? イエスは、全ての人間の“原罪”を背負って死んだと言われている。従ってその死は、とてつもない苦痛のものとして描かれなければならなかったのだろう。そしてその映像は凄惨ながら、実に見事にダイナミックにカメラに収められており、残酷なのに目をそらすことができない。
キリスト教を信じるとか神を信じるとかいうことはどうでもいい。ただ2000年前に、イエスという男がいてこうして死んだ。そう考えるだけで、畏れの気持ちを起こさせてくれるのがこの映画だ。

ただこの映画のDVD、非常に残念なことに特典が何もない。メイキングもオーディオコメンタリーも、予告編を収録したものすら入っていないのだ。これはそのうち豪華版DVDが出るということなのだろうか?