野良犬の塒
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Discover The Roots! 押井守フィルモグラフィー!!

15日に放送された、超機動放送アニゲマスターの「Discover The Roots! 押井守フィルモグラフィー!!」について。
最初に押井氏がゲストとして登場し、押井氏のタツノコ時代、押井氏が初めて演出を行った『一発貫太くん』から話が始まった。内容は今までにも触れられたことで特にここで繰り返すことはしない(詳しく知りたい人はロマンアルバム攻殻機動隊押井守全仕事前略、押井守様。などを参照されたい)。
簡単に触れると、押井氏はビューティフル・ドリーマーで一気に有名になったわけだが、「やりたいことをやればいい、喧嘩したい気分」とその作品を作った。当時現場でウケたもので作っていった、最初のお客さんは現場のスタッフだったという話である。
パトレイバー2に関しては、「世界中で戦争をやっているのに、日本だけTVで見ているのは変だと思った。レイバーは脇に置いておいて、アニメーションで戦争を描いてみたかった。それで『遊馬が出てこない』とかパトレイバーファンには怒られたけど、おじさん達が喜んでくれた」

そしてについて。「最初は何となく、画面の中に犬がいたらいいなと描かせていただけ」「映画の中で、映画自体を見ている誰かを描いてみたかった」という「予感」から始まったと。「作品の中で生活している人々を作るのが映画だけど、映画を傍観しているものを出すことで異質感を表すことが出来る。それが良いことか悪いことかは別として、僕は必要だと思った」「『またか』とか言われながら、『お願い、やって』とお願いしてやってもらっている。怖い監督ではないのでお願いしてやってもらった。命令していたら反発もあっただろうけど、ぶつぶつ言いながらやってくれている」

ここで千葉繁氏と兵藤まこ氏が入場し、紅い眼鏡へと話が続く。
押井「この映画を作ってから仕事が全然来なくなったけど、やっている間は楽しかった。皆若かったし、映画を手作りで作っているという感じがあった。今正に自分が映画の中にいるという感覚を味わっちゃったので、これは呪われるなと思った(笑)」「この映画で、その後に関わってくる色々な人と接することになった。まこちゃんとか千葉君とか、鉄砲屋の納富さんとか、あんまり言いたくないけどブッちゃんとか(笑)」「伊藤(和典)君が入ってきたのが決定打。『特撮をやりたい』って突然言い出して、それで紅一、蒼一郎(アオ→青)、鷲尾翠(ミドリ→緑)と、戦隊ものを意識して色を付けたりして。人が関わるたびにどんどん大きくなっていった。何故そうなったのかはよく判らない。やればやるほど呪われていった(笑)」「劇中にギャグがあるのは、最初のドタバタ劇という設定の名残だし、千葉君というキャラだから止めろと言ってもやるだろうし(笑)」
兵藤「大先輩達が顔出しして演技して、私はずっと見学者でした(笑)」
千葉「役柄も、ずっと見ているという存在でしたもんね」
兵藤「みんながひどい目にあって、千葉さんとかが川でばしゃばしゃやっていたりするのに、私は一人ぬくぬくと(笑)。とても楽しかったです(笑)」
千葉「撮影はキャンプみたいな感じで、廃工場で撮影やったんですけど電気も通っていなくて、制作の人がカレーライスとか作ってくれるんですが、電気もないので車のヘッドライトで照らして食べてました」「撮影の初日だったと思うんですが、三鷹駅の陸橋で深夜遅くまで撮影やっているんですけど、そういう撮影の時に楽しいのがご飯で、ロケ弁当何が出るんだろうと期待していたら、冷えてカチンカチンになった牛丼弁当(笑)」

ケルベロスについて。
押井「ナレーション聞くとかっこいい映画に思えるけど、全然そうじゃない(笑)」
千葉「散々エビ食ってた(笑)」
押井「元々は別の企画で台湾にロケハンに行って、日本に戻ってきたらその話はないことになって、どうすんだって言ったら『好きなの撮っていいよ』って話になったんだけど、ロケハンしているときにも『ここで紅い眼鏡の第二弾を、都々目紅一の亡命時代の話をやってみたい』って思ったので、もっけの幸いだってやることになった」

トーキング・ヘッドについて。
押井「別のアニメ作品の現場でストレスが溜まっていたときに突発に思いついたもので、アニメ現場で監督がいなくなっちゃったらどうなるだろうと。あと僕がスタッフに対して殺意を抱く瞬間があるので(笑)、アニメスタジオで殺人とかあったらどうなるだろうと。それでまた別の企画が流れたときに、『どうしてくれるんだ』って言ったら『こんだけしか予算出さないけど好きなことやっていいよ』って話があって、咄嗟に『あれをやろう』と。それで映画論、アニメ論というのを映画の中で描いてみようと。基本的にはお喋り映画なんだけど、お喋り映画だけなのは気が引けるので、アクションとか色々な造形物を入れたりとか、映画館の中だけで一本撮ってみようということでしたね」
兵藤「石村さんがチャイナドレスを着て綺麗にして歌っているのに、私は巨大なキノコの下で顔を白塗りにされて立ってました、なんで白く?(笑)」
千葉「そのシーンでぱらぱらと胞子を降らせているんですけど、『吸い込んだらヤバいからマスクつけて下さい』って。まこちゃんはいいのか!(笑)」
押井「だから『息吸わないでね』って(笑)。あと目に入らないか心配で、カットかけた後に目医者に行って貰って、幸い大丈夫だったんだけど、あの時だけかな、『やりすぎたな』って思ったのは(笑)」

そしてリスナーからの質問、「千葉さんへ ケルベロス劇中で食べているエビのようなものは本当に美味しかったんですか?」
千葉「三匹までは美味しかったです(笑)。200匹くらい食いましたからね。しかも押井さん、必ず撮影の前に食事にするし。『俺の前にメシ食う奴は許せねぇ』って(笑)」
押井「でもおいしかったね。元々エビの養殖場で撮影したから、いくらでもエビはあったんですよ。撮影終わった後にカメラマンの間宮さんと食っちゃったし(笑)」
この後三氏はスタジオを離れ、次のイヴェントのために移動した。

押井守ナイトショウ

都々目紅一コスプレの人 全国3000人2000人の押井ファンの方々お待たせいたしました(押井氏本人が上げた数字)。本命、2003年2月15日夜からテアトル池袋にて行われた、紅い眼鏡ケルベロストーキング・ヘッドを収録した押井守シネマ・トリロジー/初期実写作品集発売記念として開催されたオールナイト上映、押井守ナイトショウについてのリポートを。
この日は特に新作映像を見られるわけでもないのでそんなに人は来ないだろうと編者は踏んでいたのだが、私がティケット配布開始時刻の1500時に行くと(開場は2330時)既に100名近くの人々がおり、結局会場は満席となった。そして都々目紅一コスプレの人まで現れたのである。また会場には恒例のプロテクトギア展示の他、紅い眼鏡クランクアップの時に書かれた寄せ書きや、押井作品でコンセプトフォトを担当している樋上晴彦氏の写真などが展示されていた。

さてトークショー前の前説の時、トークショーの撮影禁止という事が言われたのだが、その時「ですけどホームページにリポート書くくらいは構いませんので」と言われた。すると、会場の観客の目が一斉に編者の方を向いた気がした。ああっもっと私を見て何故皆私の方を見る?

それで押井氏が登場。「某ネットのサイトで一瞬だけ見たんだけど、僕の実写映画をお買いあげ頂くのは僕のアニメ映画を見るための税金、年貢だという話を見て(笑)、『ああなるほどな』と思った(笑)」「ごく稀に僕の実写が好きな人もいることは知っているけど、大方の人の評判は悪い。お客さんが来ないしビデオも今ひとつ売れない。このBOXも、2000個出ればいいところじゃないという話をしていたんだけど。でも蓋を開けてみれば5000も受注を頂いて感謝しております」
「ボックスの表題が『初期実写作品』とはどういうことか、これからもまだ実写をやっていいのかとバンダイの方にもツッコミ入れたんだけど(笑)。結果としていいタイトルかも」「紅い眼鏡で自分の映画の方向性、確信を手に入れた」「エンターテイメントからずれるのかもしれない実写で掴んだものをアニメに持ち込んでいるという事を考えると、実写はオリジンに近い、生の部分が出ている。実写をベースとすることでアニメに昇華している」

展示された紅い眼鏡クランクアップ時の寄せ書きアヴァロンで僕の実写は生まれ変わったんだけど。アヴァロンは商業的にもそれなりに成功している。『あんたちゃんと撮れるじゃない』とか言われたんだけど(笑)、紅い眼鏡とかが大好きな希な人間にとってアヴァロンは物足りないようで」
「僕は基本的に自分の映画は見ない人間なんだけど、DVDマスター作業で三本見て、自己発見の旅をした気分になった。ずっとアニメと実写がどういう風に住み分けられているのか考えてきたが、最近一つのものだったと思っている」
「アニメが本妻で実写は愛人というわけではない。僕には本妻がいないという気がしている。アニメーションで違和感を感じ、それでアヴァロンを作ったのだから。アニメーションの違和感がこの実写三本に表れており、非常にプライヴェートなBOXになっているという気がする。これを予期しないほど買ってくれる人がいそうだということで意を強くした。こういう形で世に再び出ることで、僕の映画は生きている。公開当時は評判悪かったけど、紅い眼鏡もまだ余命を保っている」
ここで会場に対し、これから上映される実写三作品を初めて見る人はどれくらいいるのかということが観客席に対して聞かれたが、結構初めてこれらの作品を見るという人が多かった。人狼で初めて紅い眼鏡やケルベロスを知ったという人もいるそうだ。
押井「思ったより初めての人が多いので、やっぱりトークショーが終わったらすぐ(抗議されないうちに)帰った方がいいのかな(笑)」

樋上晴彦氏写真展 さて会場では、DVDの為に特別編集された「DOG DAYS AFTER-女たちの押井守」の上映が行われ、これを制作した大塚ギチ、菊崎亮の両氏がステージに上がった。
菊崎「ここで見たからといってBOX買わないいうのはあれなんで、DVD買って観て下さい(笑)」
大塚「普段は雑誌の編集とかライターやっているんですが、今回ドキュメンタリーみたいに撮って、楽しいというか色々な葛藤の中で作りました。押井守という監督がいかに女性に愛されているかということが語られ、『ふざけるな、愛されてんじゃねえ』と非常にひねくれて取材から帰るということをしていました(笑)。僕の気持ちはお客さんとともにあります(笑)」と、映像の中で女性達に「いい人~」「いい監督~」と語られていたことを揶揄していた。
大塚「押井さんが出来上がったものをどう思っているか、聞きたいところもあり、聞きたくないところもあり(笑)」

この「女たちの押井守」というのは、押井氏自身の発案による企画だという。
押井「最初は女優さん達と言うよりも、僕が一緒に仕事をしてきた女の人たちが僕の作る映画をどう思っているかを聞いたら面白いんじゃないかと思った」「DVDのメイキングとかオーディオコメンタリーは、主演俳優とか監督とか、どうしてもおじさん系に傾くので、見ていても見苦しい(笑)。女の人が出てきた方がお客さんはハッピーだろうし」「女の人が僕の映画をどう見ているのか、前から興味があった。こういう(イヴェントの)場に出てきて聞こうにも圧倒的に女性は少なく(笑)、データ化しにくい。女性のスタッフが僕の映画をどう思っているのかそれを取材して回れば一石二鳥、お客さんも僕も嬉しい、おじさんに聞いて回るよりは作る人間も嬉しいだろうと、みんながハッピーになれる企画だと思った」「(庵野秀明氏が作った)GAMERA-1999という、ガメラ3のメイキングがあるんだけど、それがほとんど監督批判に終始していた。ヴィデオになる前は更に激しく、ヴィデオではあっちこっち切られた、それでも厳しいがまだまだ甘いと思った。そういう、自分のことを吊し上げるものにしてほしいと思った」
大塚「それ見てへこみたいんですか(笑)」
押井「見てもへこまないと思うけど(笑)。メイキングとかでは基本的にいいことしか言わない。でも悪いこともあるはずだし。僕がどう思われているのか、僕が作る映画をスタッフがどう思っているのか興味がある、アニメでも実写でも」
大塚「押井さんが近年、この年齢にして色気付いたらしく、年配の女性のうなじとか足下とかが気になるらしい(笑)。それで女性にどう思われているのか、思春期的なことを言い出して、それを俺に託すなよ(笑)」
菊崎「学校で先輩に呼び出されて、『○○ちゃんが押井先輩の事をどう思ってるか聞いてこい』と言われた感じ(笑)」
大塚「ガメラのドキュメンタリーみたいな刺激的な物議を醸すようなものものを作ってくれと言われて、若い人間にそんな仕事託して未来を潰すなと(笑)」「でも実際にやったらいい話ばかり」
菊崎「『これはさすがに』と思って切った台詞はなく、実際にいい話ばかりだった」
桑島(司会)「最初の企画意図と違って、どんどん甘くまろやかにスイートになっていきましたね(笑)」
大塚「押井さんに、『プライヴェートに何処まで踏み込んでいいんですか』と聞いたんだけど。そこまでやって庵野のガメラのメイキングに勝てると思ったんだけど、『プライヴェートは表に出さない主義だから』と言われてあっさり潰れました(笑)」「10代の女の子100人にトーキングヘッドを見せて『全然わかんない』と言われるアンケートを取るとか、新宿で『この監督をどう思いますか』とアンケートする事も考えたんだけど(笑)」「それで押井さん自身が、(「女たちの押井守」に)出演した女性が話したことを一字一句引用している。『何故覚えている』『押井さん相当見たよ、チェックしてるよ』(笑)」
押井「最初の予定と違ったものになったのは残念と同時に快感でした。色気付いたのは本当で初めて女の人に興味が出てきたと言えば言い過ぎかもしれないが(笑)、初めて女の人という実体に向き合った。僕が今やっている作品(攻殻2)にも表れているかもしれない」「(色気付くのが)遅かったけど、ないよりはいいんだろうと。このまま枯れていくのかと思ったけど。綺麗なものは綺麗だと考える思いがあったのが嬉しかった。他人が枯れていくのを眺めていくと、そういうことがあった方がいいんだろう。そういう意味で言うとこれは居心地が良かった」「女優さんとは距離を取ろうとしていたんだけど、どうして距離を取ろうとしたのかは定かではないけど、紅い眼鏡とかトーキング・ヘッドでは目の前の女優とどうやって距離を詰めないか、距離を置くかに心を砕いた。近付きすぎると何も出来ない、離れすぎると何も出来ないと思ったから。ミサイルや魚雷は近付きすぎると何も出来ない、遠すぎると届かない。魚雷で言えば2000メーター(笑)」
大塚「押井守の語る恋愛論、恋愛は魚雷だ(笑)」
菊崎「距離を取れと(笑)」

ここで、都々目紅一役の千葉繁氏、乾役の藤木義勝氏、紅い少女及びお客さん役の兵藤まこ氏が登場。
押井「この三方を眺めていると、僕の役者に対する選択の基準、接し方が現れている。千葉君は優れた役者さんだけど演出家。いわゆる普通の役者さんとは違う。藤木に関しては言うべき事はないんだけど(笑)」
藤木「お疲れ様でした(笑)」(立ち上がって帰ろうとする藤木氏)
押井「何故彼を選んだかというと、でかかったからなんだけど(笑)。仮面ライダーでショッカーの、何とか海兵隊長とかいう中ボスの着包みに入っていたというんだけど(仮面ライダーBLACK RX 海兵隊長ボスガン)、それにそそられた。顔を出さずに演じてきた俳優に興味があった。兵藤さんは天たまに出てもらって、声もとてもいい声だなと思ったけど、会ってみたら声以上に綺麗な人だったので、お茶を飲みに行ったときに思わず『映画に出ませんか』と。どういう映画でどういう役か考えていなかったのに(笑)」「役者の基準で選んでいない。僕の役者のポジションとはそういうものかもしれない。美人がいればうすらでかいのがいるし、突拍子もない人もいる(笑)。まともでないというか(笑)。スー・イーチンも元々モデルで役者ではなかったし。(アヴァロンで主演の)ポーランドのマウゴジャータという外国の女優さんとか、KILLERSの主演女優も変わっている(笑)。確信を避けつつも迂回しつつ接近していくという周到な自分を感じる(笑)。真っ向から俳優とかに接近しなかったのかは自分にとっても謎」

紅い眼鏡では千葉氏は撮影中に怪我も多くしたそうで、例えば酒を飲まされる拷問のシーンでは、水とはいえ本当に飲まされ、やっている側も死にそうになったそうである。
千葉「普通瓶にこっそり栓をしておくとかするでしょう、でもそれなしでがばがば水飲まされて、しまいに拷問している側も快感になってきて(笑)」最後に水を吹いてしまい、それが裸電球に当たって電球が破裂し、顔中やけどしたという。
千葉「サングラスをしていたから目は守られたんだけど、って目に関すること聴いて下さいちょっと!(笑)プロテクトギアを着ると目が光って、見てるとかっこいいでしょう。でも実際にはマスクの目と僕の目の間に豆球があって、電圧を上げると光るんですよ(笑)。『目があちいー! はやく止めてー!』って言ってるのに『もちょっと待って、もちっと待って』って(笑)」 また、押井氏がカットをかけない監督だということも語られた。
千葉「『カットって言った直後に面白いことが起こったらどうするの』ってカットをかけない(笑)」
押井「最初はなかなかカットって言えなかったですね。フィルムという素材になった時点でOKもNGも同じ。NGもかなり使ったし、ケルベロスに至っては思いつきで撮ったエキストラカットを使ったのが60%くらい。紅い眼鏡では最初は本当にカットをかけられなかった。映画は始めることは誰にでも出来るけど終わらせるのは難しいという言葉があるけど。アニメとは違う。アニメは終わりを決めてから逆算して作る。終わりを決めないと作らない」「アオをやった田中さんは、眼球が溶けて熱い! といっていて、造形をやった品田君が『押さえつけろ!』と(笑)」「二本目のケルベロスではそれを踏まえて、全てに耐えうるであろう男を選んだ(笑)。

藤木氏がどういう経緯でケルベロスの主演になったのかは、以前当方で制作した同人誌犬からの手紙 第3号で千葉氏に語ってもらったことがあるが、その話が繰り返された。
千葉「僕と同じくらいの背格好をした人を採用しようと何十人もオーディションして内定者もいたんだけど、最後に一人だけということで会ったら2mの大男が喫茶店に入ってきて、そうしたらいきなり押井さんが『これでいこう、これで!』(笑)それまでのオーディションは何だったの!(笑)」
藤木「今まで顔も出ず、声も声優さんに吹き替えされていたので、顔がでるなら何でもいいやと思っていたんだけど、『決まっちゃったどうしよう』って。自分の引き出しも顧みず、もうフィルムが回ってんだからなんとかなるべと思っていたけど、結果ご迷惑をおかけしました!(笑)」
押井「役者としては問題があるけど(笑)一つだけ藤木に感心したのは我慢強い事。40度の暑さで湿度100%で10kgするようなギアを着て10kgするマシンガン担いで、一言の文句もなかった。ショッカーの一年は無駄じゃなかった(笑)」「着包み俳優さんの技として、お面被っていても目線が取れる、今自分がどの角度で映っているか分かっているというのがある。その点でお世辞抜きで藤木は大したもの」「オーディションでおまけできた男なんだけど、見た途端にこの背の高さ、この角度というので閃いた。こいつは大型犬だ、唐密が連れてまわっている大人しい大型犬が最後に牙を剥くんだと、後先もなく決めちゃった。今思うと相当無謀だった」「現場では(役者が)生身という意識を持っていなかった。千葉君は僕の中ではアニメのキャラクターだった(笑)」「兵藤さんの扱いとは天と地の差。いま見てみると役者を労らない、申し訳ない。若かったので許してください(笑)」

千葉「まこちゃんに対する演出が全然されてないんですよね」
兵藤「『自然に立っていて』『何も考えないで、台詞もなし』と言われて、『はぁ~い』ってやってました(笑)。今までと違ってすっごく楽しかった。(女たちの押井守で)自分たちの才能の一番いいところを出してくれる家庭教師という話が出ていたけど、まさにそれですね」
押井「(トーキング・ヘッド小林多美子役の石村氏に)チャイナドレスを着せるつもりはなかった。たまたま着せてみたら良かった。何故チャイナドレスかというと、僕が好きだからなんだけど(笑)。でも兵藤さんには着せる気はなかった」
兵藤「な・ぜ・で・す・か?(笑)」
桑島(司会)「そういえば押井さんがオーディオコメンタリーで、兵藤さんが眼鏡をかけているシーンで、突然押井さんが『このカットを見て欲しいんだよ!』と叫んで(笑)。押井守に眼鏡っ娘萌えがきた(爆笑)」
千葉「映画館のシーンで、まこちゃんが大スクリーンに映っていて、まこちゃんの目から涙が流れる印象的なシーンがあるんですが、あそこで4分監督に言われて瞬きしないでいましたから、そりゃ涙も出るべと(笑)」「ラストシーンで、それまで白黒だったのから深紅の綺麗な色が付いて、それまでの俺らは何だったんだって(笑)。どどめ色でもいいから俺にも色を付けろ!(笑)」
兵藤「(美味しいところを持って行った)私が泥棒猫みたい(笑)」

そしてこのイヴェントでは、KILLERSの予告編も上映され、KILLERSプロデューサーであるくろがねゆう氏と押井氏がKILLERSについて語った。ともかく「低予算」ということが強調されていたが、にもかかわらずよく作り込まれた映画であるという。
元々この映画は、月刊GUNで優秀賞を受賞した河田秀二、辻本貴則の両氏をプロデヴューさせようという話から始まった。そして、くろがね氏曰く「日本でガンアクションを取らせたらこの三人だろう」というガンコンの審査員でもあるきうちかずひろ大川俊道、そして押井守の三氏が協力し、オムニバスで撮ることになった。5人とも予算、時間配分ともに全員同じという条件である。
押井「日本ではこの三人しかガンアクションに興味がない(笑)。日本で鉄砲映画を作らせてくれる余地がない。映画監督の前に、きうちさんはBE-BOP HIGHSCHOOLとかの漫画家だし、大川さんは太陽にほえろ、西部警察、あぶない刑事などの脚本家で、みんな二足のわらじでやっている」「最初は(この企画から)逃げちゃおうかなと思ったんだけど、きうちさんが飲み屋で僕の前に立って『あんた逃げる気じゃないでしょうね、あんたが逃げたら成り立たないだから』と言われ(笑)、逃げられないんであれば好きなことをしようと思った。攻殻2で忙しいのでせいぜいスタジオを三日しか開けられない、それで三日で撮れる映画を考えた」
押井氏は、その少ない予算の半分以上を『主役』である特製のプロップガンを作るのに使ったそうである。
押井「それだけで意味がある。あとあの女優(仁乃唯氏)を使ってみたかった。僕は楽しかった。他の監督は苦労したみたいだけど」
KILLERSはテアトル池袋及び大阪シネマ・ドゥで6月頃に上映予定という話だそうだ。この押井氏のパート『.50 woman』は、短いながらも押井ワールドの中の一ピースにぴったりとはまる作品という。

千葉繁氏サイン入りポートレート そしてトークショーの最後はプレゼントコーナーとなった。プレゼントとして用意された品は、千葉氏や兵藤氏のサイン入り紅い眼鏡スチル写真、藤木氏サイン入りプロテクトギアフィギュア(日本で未発売の香港版)、ポスターなどである。
それで千葉氏が籤を引く抽選の時に、「都々目紅一コスプレの人が会場にいると聞いて、絶対見てやると思いました(笑)。あの人にあげたいですねぇ~」とコスプレの人を指した。そして氏が籤を引き、番号を読み上げた。
僅かな間があり、そして観客席の一カ所から笑い声が上がった。そして立ち上がったのが……。
「教官だぁ~!」
何とあろうことか、千葉繁氏のサイン入りスチール写真が当選したのが自称地上最強の押井守ファンサイト野良犬の塒ウェブマスターの私、千葉氏本人にインタヴューしたこともある“教官”都々目さとしだったのである。「ファンサイトを作っている非常に有名な人で……」と司会の人にも紹介される。正に見事なオチだった!

また押井氏も手伝った、押井氏の実姉による舞踊が2月22日アート・スペース・ゲントで行われるそうで押井氏が宣伝していた。そして最後に。灰色の貴婦人の文庫版が3月25日にメディアファクトリー MF文庫より発売予定とのこと。

ところで会場ではアンケートが行われていたのだが、それで「このイベントをどこで知りましたか?」という項目があった。そして回答欄の一つ「(1)インターネット」にはHP名も書くようになっていた。それで私が、一人回答を書いている人間を見つけて覗き込んでみると、「HP名 カトゆー家断絶」と書いていた。ちっ。

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