野良犬の塒
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ロボットに「心」は宿るのか?
~『攻殻機動隊』に見るヒトとロボットの未来社会~(2/4)

ロボットに「心」は宿るのか? ~『攻殻機動隊』に見るヒトとロボットの未来社会~(1/4)

ロボットの使用用途

瀬名「家事、介護、軍事等が考えられるが、日本ではとりわけ、少子高齢化といわゆる2007年問題(団塊の世代が一斉に定年を迎えてしまう)で、今後は労働力不足が懸念されている。そこで、労働力としてのロボットも注目される可能性がある。
この労働力としてのロボットというのは『2nd GIG』の難民と被る気がするが、どうか?」
神山「『日本は単一民族国家である』という思い込みみたいなものから、外国人に社会や家庭に入り込まれることにアレルギーがある。それならむしろ、その労働力代替物としてのロボットには外国人よりは需要があるのではないか」
瀬名「日本人には外国人よりも、ロボットと?」
神山「外国人よりは親しみやすいのではないか。それもタチコマみたいに判り易いロボットの方が。僕の理想としては、ロボットは人に近くない方がいい。完全に人と見分けがつかないものよりは、想像の余地を残したものの方がいい。実際に素子みたいなキレーなお姉さんが居たらむしろ怖いと思われるのではないか。アニメでは、アニメという媒体である以上、ディフォルメーションされて映像としてはサイボーグも普通の人との区別もない。だがどんなに技術が発達しても、きっと近寄れば、義体であるか本物の生まれながらの人であるか区別がつくはず。ロボットはロボットらしい方がいい。タチコマはロボットとして判り易いところが受けたのではないか。『1st GIG』では物語を通して、タチコマは裏の主役であるという位置付けがあり、その前半・後半の物語の中継点として、15話“機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES”でロボットがロボットを語るという話を設定した。
感情移入という側面から考えると車の正面からみた印象が『顔』であるのと同様、タチコマに感情移入する肝は(∴)←この形の目にある。ああいうものは、人の目の形をしているものよりは機械っぽいものの方がキモチ悪いと思われることなく、受け入れられやすいのではないか。
また、技術発展の要因の一つに、アダルト分野の存在があるが、セクサロイドの誕生のようなお話には常に悲壮感・悲劇性がつきまとうので、作品内ではそちら方面のアプローチは避けた。
また、タチコマは僕の理想としてのコミュニケーションの相手としての機械と、最初に挙げた『マジンガーZ』のように、操縦する機械(操縦はそれ自体がエンターテインメント)という二つの要素を担わせた。

自立ロボットとロボットスーツ

瀬名「『アップルシード』のランドメイド(パワードスーツのようなもの)等に代表されるように、体に取り付けるタイプのロボットスーツの存在についてどう思うか?」
神山「アニメの表現においても、一時期パワードスーツタイプのロボットが流行したが、じきに衰退した。人間は同じことをしていると飽きる。経験から語ると、例えばアニメーターに鉛筆で絵を描かせていても、じきに効率が落ちる、人間の集中力には限界があり、人は飽きると作業効率が落ちてくる。しかし、近年、作業にPCを導入されると、変化が生じた。PCを使って作業をするようになってから、体感でアニメーターが3倍くらいは作業に集中できる時間が延びた気がする。PCの存在はそれだけ大きいものなのだと思う。人は単純作業をすると飽きてしまうが、何かしらインターフェイスを介する(=操縦する)ことによってカタルシスを得るのではないか。何かしらインターフェイスを介するということには意味があるのではないかと考えている」
瀬名「押井守氏に話を伺った際、アメリカのヒーローは自らの肉体で動く=主人公それ自体が人を超えた能力を有するのに対し、日本のヒーローは例えばロボットを操縦することで初めて人を超えた能力を得る。その違いが国民性である、という話を聞いたことがある」
神山「なるほど」
瀬名「同様に、ウェアブルロボットの開発者の中には、日本の変身ヒーローもの≒ウェアブルロボット。着ること(変身すること)でパワーアップするということは、ウェアブルロボットに対する憧れのような心理が働いているかもしれないということを言う人もいる」
神山「米軍にて、自動無人戦闘機が開発されたとき、パイロットサイドから『Gを体感したいから、無人戦闘機の開発をやめろ』という意見が出されたことがあった。同様に、パワードスーツ的な補助するようなウェアブルロボットよりも、パイロットが戦闘機を操縦するような“体感”というものの方が重要なのかも知れないと考えている」

ロボットは人間に近づくことができるか?

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』から15話“機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES”の一部の映像が紹介される。

瀬名「SACの“機械たちの時間”というタイトルやモチーフは神林長平氏(Amazon.co.jp)の小説から拝借されたそう だが、神山氏は既読?」
神山「しっかりとは読んでいないがアイディアは参考にさせてもらった」
瀬名「アイザック・アジモフの『鋼鉄都市』で既に語られているように、身体性→人型でなければならない理由の一つに、世界の施設は人間が人間用に作ったわけで、人型である方が効率的である。二つ目に、汎用性である方がコスト面から考えても効率的である。
ただし、この意見には、自動車の発達が、車道と歩道を作ったように、ロボットに合わせた環境を作れば問題ないという反論もある」

自意識の定義

瀬名「谷淳(参照「知性持つロボット」へ挑戦 - 特集 - ネット&デジタル - YOMIURI ON-LINE 知能の謎 認知発達ロボティクスの挑戦)という方が考えたロボットの自意識研究に、迷路に標識を取り付け、AIに学習させるというものがある。ある程度学習させたところで、ふと標識を隠したりすると、そのAIが一瞬止まることがある。我々人間も、普段はルーティンワークで生きており、変化が生じた際に、一瞬立ち止まって考えることがある。これと同様、AIが迷路で一瞬停止するその瞬間こそ、自意識を持つ瞬間ではないか、とする考え方が存在する」

ロボットに「心」は宿るのか? ~『攻殻機動隊』に見るヒトとロボットの未来社会~(3/4)

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