野良犬の塒
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イノセンス FAQ

こちらには、「イノセンスを見たけどよく分からなかった」というところのFAQ(Frequency Asked Question、良く聞かれる質問の意)を記載したい(本来ならば、理解できるまで何度でも見るのが正しいところなのだが)。
なお、ここに記載しているのはあくまで編者の個人的な解釈であり、「正解」かどうかは判らない(そもそも「正解」があるかどうかも判らない)。
また、取り敢えずここを見る前に、「攻殻機動隊(イノセンス)世界 基本用語集」を先に参照されたい。あと、こちらに書かれていないことがあったら、イノセンスネタバレ専用掲示板も利用して頂きたい。
なお、当然の事ながら以下の文章は豪快にイノセンスのネタバレである。

2501って何のことですか?
前作(GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊)に出てくる数字です。とりあえずこちらのStoryを先に読んで下さい。
「夕食のツナサンドと再会した後、オロクと一緒に戻った」ってどういう意味ですか?
「夕食のツナサンドと再会」というのは、要するに反吐を吐いたということです。オロクとは死体を指す言葉です。南無阿弥陀仏の6文字→「お六」ということで時代劇とかで使われているみたいですが。
セクサロイドって何ですか?
セックスするためのアンドロイド、つまりダッチワイフです。
時々登場人物が首の後ろで何かやっていますが、あれはなんですか?
あれは電脳のコネクタを弄っているのです。例えば情報装置を電脳コネクタに接続することにより、情報を電脳に取り込めます(イシカワというヒゲオヤジからトグサが、死体の映像を受け取っていましたね)。またカニ男にバトーがやったのは、電脳錠を掛けたのです。これは電脳に掛ける手錠みたいなもので、要するにこれで相手を拘束したんですね。またコンビニで暴れたバトーがイシカワにされたこと、あとキムの館でトグサがバトーにされたことは、ゴーストハックされたのを強制的に中和したんですね。恐らくワクチンプログラムを注入したとかしたんでしょう。
ところで映画「マトリックス」でも、ネット世界~マトリックス~に接続するのに首の後ろのジャックを接続していますが、あれは攻殻の設定をパクったインスパイアされたんです。
ロクス・ソルス社の出荷検査官はどうして殺されたのでしょう?
一言で言うと、ロクス・ソルスの少女型アンドロイド(ガイノイド)によって、ヤクザ“紅塵会”の組長が殺されたことに対するヤクザの報復です。ロクス・ソルス社は、出荷検査官をスケープゴートとして紅塵会に差し出し手打ちにする(和解する)ことを紅塵会に提案し、紅塵会は承諾しました。出荷検査官は休暇を取らされた上で、紅塵会が襲撃しやすいボートハウスに泊めさせられたのでしょう。そして紅塵会にきっちり殺されました。
巴吉度はなんて読むのでしょう?
バジド(bajido)らしいです。中国語でバセットハウンドの意味です。
セーフハウスに帰ってきたあと、バトーは何をしているのですか?
靴を洗っています。何故洗っているかというと、犬(ガブリエル)の糞を踏んでしまったからです(このシーンの音を良く聞いていると、「ねちょ」という踏んでしまった音が聞こえるはずです)。ちなみに押井監督の絵コンテではその後のバセットの描写について「筆舌に尽くし難い可愛らしさで怒りも失せるのです」とあります。
コンビニで、バトーは何をやっていたのでしょう?
あれはゴーストハックされていたのです。ハッキングされたことによってバトーは「敵から銃撃を受けた」と思い、必死に応戦しようとしました。ですが彼が「敵」だと思って射撃した相手は、自分の腕だったのです。あのシーンをよく見ると、バトーの体に着弾したとき、バトーの銃が一度も同じ画面に描かれていないことに気が付くでしょう。ですから本当はバトーが撃たれた時は、自分で自分に向かって撃っていたのです。
コンビニで「キルゾーンに入ったわよ」という声がしますが、あれは何でしょう?
あれは素子の声です。キルゾーンとは軍事用語で、最大殺傷範囲とでも訳しましょうか。要するに武器が最大の破壊力を示す範囲のことです。「キルゾーンに入ったわよ」という言葉が聞こえた時、少女の後ろ姿が店の外に消えましたね。これが素子でしょう。ですがこの時の少女の後ろ姿はあくまでバトーの電脳上に出てきたイメージであり、本当に物理的にあそこに少女の姿がいたということではないと思います。まあせっかくの素子の忠告も無駄だったわけですが。
コンビニのあとのシーンでトグサが「俺をスクリーンにしやがって」といっていますが、これはどういう意味ですか?
このスクリーンとは保護物、目隠しの意味です。9課がバトーを監視していたことに対するカモフラージュとして、トグサがいつも通りバトーに接することによって、バトーに「自分は監視されている」と気付かせないようにさせた、そのためトグサは何も知らされず利用されていたということです。そのためトグサは気を悪くしてしまいましたが。
「生死去来 棚頭傀儡 一線断時 落落磊磊」とは何ですか?
「生死の去来するは 棚頭の傀儡たり 一線断ゆる時 落々磊々」と読みます。一旦死が訪れると、あたかも棚車の上のあやつり人形が糸が切れればがらりと崩れ落ちるように、一切が無に帰してしまうという意味です。
どうして登場人物からぽんぽんあんな名言格言の引用が出てくるのでしょう? 彼らはそんなに頭が良いんですか?
押井監督がそう言うセリフを喋らせたかったから……というのは置いておいて、あの時代の人々は、自分の脳のほかに記憶を「外部記憶装置」に保存しておくことが出来るのです。自宅のパソコンに辞典などを保存しておいて、外出先からモバイル端末を使い、自宅のパソコンに接続して見ることが出来るのと同じですね。それで彼らも何か欲しい情報があったら、電脳を使ってさくっと検索し、ネットを経由して外部記憶装置から情報を拾ってくることが出来るのです。
キムの館の玄関に入ってすぐの所にいた少女(と犬)は何ですか? どうしてバトーたちはその少女に話しかけたりしなかったのでしょう?
あの少女は、前作(GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊)でバトーと素子が別れた時、素子が入っていた少女の義体ですね。素子は前作で「コード2501~人形使い」というプログラムと融合しましたが、その時から「肉体」というものは素子にとって意味のない物になりました。素子はあくまでネット上の生命という存在になったんです 。
で、本題に戻って「キムの館に入った時の少女」ですが、これはやはり物理的にそこに少女が存在していたわけではなく、「バトーの電脳にそう見えた」つまり素子~バトーの守護天使~があの少女の姿をバトーに見せたということでしょう。それがわかっていたからバトーも話しかけなかったのです(勿論少女の姿が見えなかったトグサも話しかけませんでした)。追記 あのシーンでは、バトーのセンサーが少女達をスキャンして“生体反応無し”と確認しています。つまり人形だということがわかったので話しかけませんでした。
で、犬ですが、あれは素子のバトーに対するサービス……ですかね。
キムの館にバトーとトグサが何度も入ったり、しまいには軍艦に砲撃されたりしていましたが、あれは一体何が起こっていたのですか?
あれはキムのゴーストハックを受けていたのです。「自分をゴーストハックした凄腕ハッカー」「ロクス・ソルス社の情報」を求めて旧知のキムの元を訪れようとしたバトーですが、実はキムはロクス・ソルス社と繋がっており、同社に対する捜査を妨害するためバトーをゴーストハックしたのもキム自身でした。ですからキムは、バトーとトグサに偽の記憶をすり込んで追い返そうとしたのです。その時にちょっと遊んでやろう、と思ってトグサを軍艦で攻撃したり人形にしたりしたのですが、策士策に溺れる。バトー(と素子)によって突破されてしまいました。
バトーがロクス・ソルス社に突入した後、トグサが電脳を通じてバックアップしていましたが、その途中でキムが死んでしまいました。何が起こったのですか?
このシーンではトグサは、キムを身代わり防壁にしてロクス・ソルス社に接続していたのでしょう。そうやってロクス・ソルス社の情報を得て、それをバトーに流すことによって彼を支援していました。ですがトグサは深入りしすぎ、ロクス・ソルス社の攻性防壁による攻撃を受け、脳を焼き切られるところでした。しかしトグサはキムを身代わり防壁に使っていたため、キムだけがやられてしまったのです。
ゴーストダビングとは何ですか? 何故行なわれていたのですか?
ゴーストダビングとは、その名の通りゴーストをダビング(複製)する行為です。しかし実際にはゴーストダビングは、オリジナルの脳に危険が及ぶ(最終的には死に至る)為に禁止されております。ですがロクス・ソルス社は、自社のセクサロイドの抱き心地を良くするため、ダビングしたゴーストをセクサロイドに吹き込んだんですね(単なるAIしか入っていないアンドロイドより、ダビングしたゴーストが入っていた方がより反応が人間らしくなって抱き心地が良いのでしょう)。オリジナルの少女たちを犠牲にして。
ちなみにダビングされたゴーストはオリジナルとまったく同じではなく、情報劣化が発生するそうです。
結局の所、どうしてアンドロイド暴走事故が起こったのでしょう?
ゴーストダビングの犠牲者になろうとしていた少女達が出荷検査官に頼んだのか、或いは出荷検査官が少女達を哀れに思ったのか、どちらが先かは判りません。ともあれ少女達は助かりたいと考えました。そこで出荷検査官の力を借り、彼らは協力して出荷されたガイノイドが暴走し、警察の注目を浴びるように仕組んだのです(それがもとで出荷検査官は少女の写真を持っていました)。ですが恐らくその事がロクス・ソルス社にばれたため、出荷検査官はヤクザのスケープゴートとして殺されてしまいました。
バトーは、どうして「人形たちのことは考えなかったのか!」と怒ったのでしょう?
このシーンには幾つかの解釈が成り立つでしょうが、私の解釈を紹介します。ダビングされたものといえど、ゴーストを吹き込まれた人形達は「生きている」と言えるのではないでしょうか。結果的にこの事件は、そういう多くの「生きた」人形を殺すことになってしまった。その事に対する怒りではないでしょうか。
或いは、サイボーグであるバトーは、人間より人形に近い存在だからかも知れません。
「孤独に歩め、悪をなさず、求めることは少なく、林の中の像のように」とはどういう意味でしょう?
これは「仏陀の感興の言葉 第14章 憎しみ」にある言葉で、意味は大体言葉通りなのですが、本来はこの前に「聡明誠実なものと共に歩め」という言葉が先につきます。聡明誠実な伴侶と共に歩むのが最良であり、それができなければ孤独に歩め、ということです。
バセットハウンドって、そんなに飼うのに手間がかかる犬なんでしょうか?
らしいです。押井監督も「この映画でバセットがブームになって、飼われたは良いけど後で捨てられるバセット、不幸になるバセットが見たくないので、半端な覚悟でバセットは飼わないで下さい」と力説しています。で、どれくらい手間かは犬の気持ちは、わからない 熱海バセット通信を読んでみるのが良いでしょう。って現在入手困難らしいですけど。
どうしてスタッフロールに「西田さん」が異常に多いのでしょう?
あれは民謡の「西田流」の人々で、西田の名を襲名しているからだそうです。
DVD「イノセンスの情景 Animated Clips」とは何ですか? またこれにシークレットトラックがあるそうですが、どうすれば見られるのでしょうか?
このDVDは、イノセンスのBG(背景画)と音楽を組み合わせた、ミュージッククリップみたいなものです。映画本編ではキャラクターに隠れてしまっているBGも見ることが出来ます。音声は5.1chと、2chでの疑似サラウンド(DiMagic Virtualizer X)の2種類が入っています。
またシークレットトラックは2種類あります。その出し方ですが、
  1. DOG BOX
    再生開始時のProduction I.Gロゴで、DVDプレイヤーの「決定」キーを押す。もしくは本編再生終了後、メニュー画面で暫く放置する。
  2. Follow Me(Instrumental Version)
    「DOG BOX」で犬の顔を手で引っ張るシーンが出てくるが、そこでDVDプレイヤーの「再生」キーを押す。
オープニングの、人形の瞳に何か映り混んでいるらしいのですが全然判りません。
これについては何度か監督が発言しています。「目がアップになった時、瞬きした時、人形の瞳に何かが映っています。恐らくモニターでは絶対見えない、スクリーンで見て頂ければわかると思います。この作品のテーマがそこにありますので、次の機会に確認してみてください」
ではそこを拡大してみましょう。

これはDVDから画像を撮ったものですが、やっぱりよくわかりません。人の顔らしいということは判るのですが。
しかし問題は「何が見えるか」ではなく、「見えたものから観客が何を考えるか」です。見た人それぞれにとって、「見えた」と思ったものが違っても良いのです。 ただ、押井氏がどう考えたかについては、犬からの手紙 第6号のインタヴューに掲載されています。
どうでも良いけど、あんまり見つめていたら心霊写真みたいに思えてきました。ちょっと怖い。

さて、以上をふまえた上でもう一度イノセンスを見たら色々と納得出来ようし、また新たな面も見てくることだろう。そのため「ここの文章を読んで理解出来たからいいや」ではなく、是非また本編の映画を見てみることをお勧めする。はっきり言ってこの映画に於いてストーリーは「おまけ」にすぎず、本編のあらゆるシーンに、観客がそれぞれ個々人で意味を見出すべき作品なのだから。

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