野良犬の塒
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初心者のための現代ギャルゲー・エロゲー講座

第1集 エロゲー・ギャルゲー時代の幕開け

エロゲー。エロいゲーム。18禁男性向けゲーム。一体いつから生まれたのか。しかしその誕生は、パソコンゲームに絵を付けることが可能になったのとほぼ同時に生まれたと思われる(もしかしたら、テキストオンリーのエロゲーというのがそれ以前にあったかもしれないが)。
実のところエロゲー作りは、当時のどこのパソコンゲームメーカーも一度は通る道だった。現在糞真面目なゲームしか出していないところでもエロゲーを出した事が結構あり、その典型的な例が光栄(現コーエー)の 『ナイトライフ』『マイロリータ』『団地妻の誘惑』『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか』といったものである(現在この名はコーエーの社史から抹殺されているという噂だが)。 日本ファルコムも『女子大生プライベート』というエロゲーを出していた。
画面に緑の色しか出ないグリーンディスプレイが当然、4色も表示できれば「なんてカラフルだ!」という時代なのでその画像は当然ながらに稚拙だった。だがそれでもせかせかとエロゲー作りは行われた。新たな娯楽の裏には常に性風俗あり、という事か。AIもどきを搭載したコンピューター上の少女とキーボード入力で会話を行って口説き落とし脱がすという、『エミー』というゲームや、エロゲとして始めて本格的アドベンチャーゲームのシステムを取り入れた『天使たちの午後』はかなり話題になった(らしい。私は余り当時のことには詳しくないのだが)。
その辺りの最古のエロゲについては、古い男の部屋工画堂スタジオを語る部屋などが参考になる。

1980年代はNECのPC-8801シリーズ、SHARPのX1シリーズ、富士通のFM-7シリーズ、松下・ソニー・サンヨーなどが互換機を出していたMSXシリーズなど、複数のメーカーがそれぞれ独自のパソコンを開発して出していた。それらのマシンには、現在のMacとWinの関係のように互換性はなく、時には一つの会社から平行して互換性のない二種類のパソコンが出されることもあった(SHARPのX1シリーズとMZシリーズなど)。当時のゲームは、それぞれのハード用にほとんどタイムラグなく(時には同時に)各機種用のソフトがそれぞれ発売されていたのである。

そしてNECも平行して二種類のハードを出した。PC-8801シリーズは個人(ホビー)用、PC-9801は業務用として切り分けていたのである。その証拠にPC-9801には標準装備で音源が搭載されていない、つまり音楽を鳴らすことが出来なかった。
その頃SHARPはX1シリーズからの派生であるX68000シリーズを、富士通はFM-7シリーズからの派生であるFM-TOWNSを発売した。アーケードマシン並の強力なグラフィック機能とサウンド機能を持ったX68000。初めてCD-ROMドライブ標準搭載のFM-TOWNSと。PC-98にはない利点を持っていたのがこれらのマシンだった。だがどんどん市場はPC-98に浸食されていってしまう。その大きな理由が「一太郎、Lotus1-2-3などの仕事で使うソフトが家でも動く」というものだったが、陰の理由が「PC-98には大量のエロゲーがある」だったとも言われる。強力なマシンパワーを搭載したX68などといった高級機種より、もっと安くてエロゲが遊べるマシン! それがPC-98だったのだ。
PC-98は4096色中16色表示可能、640×400ドットという画面表示能力を持っていた。そしてそれは、実写取り込みの画像を再現するのは難しくても、アニメ調のエロイラストを再現するには十分な性能だったのだ。X68やTOWNSは3万色以上の表示が可能で実写取り込みの画面にも十分耐えうるからアダルトゲームには向いているんじゃないか、と思われる人もいるだろう。だが当時はまだゲームの媒体はフロッピーディスクが主体であり、3万色以上の色を使った画像はFDの容量を圧迫して十分に使えない。CD-ROMドライブを標準搭載しているFM-TOWNSにしても、当時はドライブがかなり低速で(ハードディスクは装備されておらずそこにインストールするという概念もなかった)CDからファイルサイズのでかい画像をいちいち読み出すのはかなりフラストレーションがたまる。そしてCDから直接動画を再生するというのも、CD-ROMドライブが低速、そして動画圧縮フォーマットが確立されていないという点からほとんど出来なかった。
そんなわけで日本のエロゲーは、アダルトビデオを取り込んだような実写ではなく、アニメ絵主体になったのである。元々日本ではアニメ文化が普及しており、エロアニメも多く出ていたため人々に受け入れられやすかったのでは無かろうか。

当時のエロゲーはまさしく「エロゲー」即ちエロいゲームの言葉通りのものだった。ストーリーもゲーム性もほとんど存在せず、ただ画面に女の子が出てきては脱いで犯られる。だが もちろん「エロゲーにもゲーム性を入れよう」という試みはあった。アスキーから出た『カオスエンジェルス』は、RPGでエロゲーをやるという試みとして大成功を収めた作品であり、以後エルフの『ドラゴンナイト』シリーズ、アリスソフトの『ランス』シリーズなどはRPGとして結構面白いと好評だったが、所詮はエロゲである。ゲーム中にエロを入れなければならない。その為主人公の男は出会ったゲーム中の女の子と片っ端からヤってハーレム状態。一方で敵側も女の子を掠ってきてはレイプしているというような状態である。

PC-88版カオスエンジェルス
PC-88版カオスエンジェルス。女の子の姿をしたモンスターを倒し、「襲う」ことによってそのモンスターの能力を使えるようになる 。640×200ドット、アナログ8色で頑張っていた。

まさに“エロ”ゲーム。女の子が主人公に一目惚れしたでも、男が女をレイプしても許されるふざけた世界でも、女の子が媚薬を飲んだでも、単に女の子が淫乱でも、女の子がエッチしないと死んでしまう謎の病気でも何でも良いが、とにかくゲーム中にエロを出さねばならず、そのためにはどんなに強引なシナリオや設定も全て正当化される。エロビデオを見るのに何の抵抗もなく「エロゲはエロければいいんだよ」という人にとってはそれで十分だったろう。だが一部の開き直った人々はともかく、このようなエロゲが胸を張って「立派なゲームです」とゲーム社会の表に出るわけもなかった。

同級生だが、そんな状況を変えるゲームが出現した。1992年に登場したエルフの「同級生」。このゲームがその後の多くのエロゲーを変えることになる。
このゲームの特徴は何と言っても自由度である。プレイヤーは思うままに町を動き回り、女の子に出会う。女の子は友達だったりケンカ友達だったりあからさまに避けられていたりと様々だが、その女の子と町で出会って会話し、親しくなっていく。
このゲームのポイントは「ゲーム中の女の子全員と必ずエッチできなくても良いんだ」という事である。エロゲには当然エロを入れることを要求される。だが物語にリアリティや重みを与えるためにエロを減らしては、「なんでこの女の子とエッチできないんだ」と、エロを見たいプレイヤーに抗議される。しかしそんな要望を全て叶えては、やはりハーレムかレイプの嵐になって現実感が喪失され、感情移入も出来ないし「エッチするだけの下品なエロゲ」という印象は拭えない。そこでこの同級生の「女の子別にストーリーとエンディングがある」という方式は珍しく、新鮮だった。
そして「いい娘が揃ってまっせ」という言葉が聞かれるような沢山の女の子の中から、「意中の女の子を狙って口説き落とせる」という、後に「恋愛シミュレーションゲーム」などと呼ばれることになるシステムは、その後の数多くのエロゲー、ギャルゲーに継承され、かの『ときめきメモリアル』の誕生を促すことにもなった。
『意中の女の子を口説き落とす』という行為。デートの約束を取り付けて「勝利に近付いた!」とはしゃぎ、最後に女の子の服を脱がせてHに至ったときの悦び!
魅惑的かつ困難な「女の子を追いかけて口説く」という課程と、それを達成した暁に報酬として与えられる「エッチな画像」。それがプレイヤーのモチベーションを高める。防備の堅い、強固な城塞のような女の子を陥落させて我が物としたとき、ベルリンに突入して議事堂に赤旗を掲げた兵士のように恍惚に浸る。

同級生のCG拡大 そのドットの描き込みに注目
同級生の画像。16色という少ない色数を有効に活用するため、ディザー処理が多用された。

また当時PC-98での4096色中16色というグラフィック性能、この「実際には16色しか使えない色をいかに多色に見せるか?」それが当時のグラフィッカー(恥ずかしい和製英語だがこの言葉が定着した)の命題であった。ディザ処理をどう活用するか? 何色と何色をディザで混合すれば別の色に見えるか? それはまさに職人の時代だったのである。

第2集 ビジュアルノベルの完成へ続く

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