野良犬の塒
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野良犬の塒 押井守/プロダクションI.G作品 Wiki

世界が注目する映像クリエイター 押井守の世界

押井DVDカタログ表紙そういえばこれを紹介していなかったなということで。バンダイビジュアルから、押井守関連のDVDがわさわさと発売されるが、それに併せて左のような冊子が小売店で頒布されている。要するにパンフレットだが、その中に結構ヴォリュームのあるインタヴューが掲載されていたので紹介する。

小説家 瀬名秀明
サイエンティストやSF作裏を超えたヴィジョン

以前ロボットに関する取材で押井さんに話を訊きにいったことがある。そのとき「日本のアニメの巨大ロボット信仰というものは奈良の大仏さん信仰と根が同じで、だから主人公はたいていロボットの掌に乗っている」というような話を聴いて、不思議に納得させられたのを覚えている。押井さんは自分が扱う対象に対して、その核心を自分の直感で探り当て、それを緻密に論理立てていける人だと僕は思っている。自分の直感に対して自覚的で、それを使いこなしている人だ。そういう人の作品は信用できる。ここ数年の二作『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と『アヴァロン』では、自我や実存といったテーマを突き詰めているように思えるが、それは最近僕が手がけているロボットの歴史を探る仕事にもオーバーラップする。ロボットの自我というようなテーマでも、古今東西のSF小説はだいたい似たようなところまでは行き着いているのだけれど、どこか突破できていない場所がある。僕は押井さんなら、その先のヴィジョンを見せてくれるのではないかと期待してしまう。サイエンティストやSF作家がまだたどり着けていない世界を見せて欲しい。新作『イノセンス』に期待している。
小説家。『パラサイト・イヴ』で第2回日本ホラー小説大賞受賞。『BRAIN VALLEY』で第19回日本SF大賞受賞。その他の著書に『八月の博物館』『ロボット21世紀』『虹の天象儀』など。

イラストレーター 寺田克也
押井守の夢幻の世界に要注意!

押井さんは夢をみてる。
押井さんのそばに行くとそれが判明する。
押井さんの夢がオレの脳にじわじわ入り込んでくるからです。
あれ? これオレの夢? とか思ってると
押井さんの夢だったりするので注意が必要です。
押井さんのそばに行かなくても
押井さんの作品を観てるうちに
やっぱり押井さんの夢があなたの脳に入り込んでいくのです。
そうなるとあなたはもう押井さん。
押井さんはあなたになる。
そして世界に押井さんが拡がっていくのでした。
そんな押し拡げられていく感覚が
押井さんの作品で好きなところです。

イラストレーター/CGアーティスト。コミック、ゲーム、映画のキャラクターデザインを多数手がける。ゲーム『バーチャファイター』の公式イラストレーター。映画『BLOOD THE LAST VAMPIRE』のキャラクターデザイン。『探偵 神宮寺三郎』シリーズなど。

漫画家 藤原カムイ
世界が崩壊していくときの一瞬の美を
黒犬と同じような眼差しで見ている人なのかもしれない

押井さんの作品を最初に認識したのは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』だった。あの時の衝撃は、僕が初めてタルコフスキー監督の『ストーカー』を見たときと酷似している。『ストーカー』は、それまで抱いていた映画の既成概念をプチ壊してくれた。作品そのものは、特に衝撃的な内容ではないのだけれど、そこに横たわる時間の流れや演出は、これまで見たこともないもので、映画というよりは、その空間ごとタルコフスキーの頭のなかに放り込まれたかのような印象を持ったものだった。
そして、押井さんの『ビューティフル・ドリーマー』も同様にそれまでのアニメ作品という枠を完全にプチ壊していて、押井さんの頭のなかに放り込まれ、翻弄されていくような、そんな印象を受けた。押井さんという人は次々とものを壊していく人なんじゃないかと推察する。当時は僕も『チョコレートパニック』なんかを描いていて、やたらいろんなものを壊していたけれど……。そしてのちに『犬狼伝説』という別の意味で壊しまくりの作品で僕は押井さんと一緒に仕事をすることになる。今思えば、それもまた運命といえば運命だった。タルコフスキーも押井さんのフィールドだったし、当時から僕の名刺には黒い犬が刻印されていた。もちろん『ストーカー』からの引用だ。水先案内人としての黒犬は、まさに導くして導いていったのだ。世界が崩壊していくときの一瞬の美を、たぷん、彼も同じような眼差しで見ているのかもしれない。『犬狼』の打ち合わせでの一言が印象的だったので、余計にそう思う。
「こういう漫画が世に出る事で、どこかで眠っていたものが呼び覚まされるんじゃないかと思ってさ……」

漫画家。代表作は『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』『雷火』『チョコレートパニック』『創世記』『ウルトラQ』『犬狼伝説(押井守原作)』など多数。

映画監督 本広克行
押井さんは僕にとって生き神様で道標。ずっと追いかけていたい人なんです。
押井作品との出逢いは?
高校1年の時に映画館で観た『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』ですね。吉川晃司主演の『すかんぴんウォーク』と同時上映だったのを偶然観て、マジで度肝を抜かれました。その後OVA作品の『ダロス』を観て、今に至るまでどっぷりって感じです。全部の作品を何度も繰り返し観てるし、カット単位で覚えてますよ。ビデオもLDも手に入るものは全部持ってます。
本広作品における押井守の影響とは?
もうモロ影響ですよ。ライティングもカメラアングルもカメラ回しも話の流れもすべて影響されているし、なにより世界で一番好きな監督ですからね。僕がやってることはいうなれば押井さんがやったことを実写で追っかけてるだけかもしれない(笑)。押井ファンにはよく指摘されるけど、それは僕自身も認めるところで、押井さんの影響っていうのは、逃れがたいものとして僕の中にある。
押井作品の魅力とは?
押井さんの作品はオリジナルなんです。今のアニメとかドラマって、ぜんぶなにかのコピ一に見えてしまうけど、押井さんは押井守というオリジナル。もちろん押井さんは押井さんで、なにかからインスパイアされてるんだとは思うけど、僕には押井さんの作品は押井守オリジナルにしか見えないんです。あれほど自分の世界を貫き通せる監督って、今の映画界を見渡して、世界でもいないんじゃないかな。
踊る大捜査線』にも押井作品の影響はある?
僕の中では『踊る~』の湾岸署って『パトレイバー』の特車二課なんです。最初のロケハンで湾岸署を探したときも、スタッフに『パトレイバー1』のビデオを見せて探してもらいました。当時はけっきょく特車二課に近い場所はなかったんだけど、実は今はお台場の先に特車二課そっくりの建物があるんですよ。夕陽が沈んでいくのも見えるし、飛行機は上空をぶんぶん飛んでいるし。あとからそこを見つけたときは、ああ、ここが湾岸署だったらよかったのにって本気で思いましたね。『レインボーブリッジを封鎖せよ!』を作ったときも、押井さんは『パトレイバー2』で横浜ベイブリッジをミサイルで爆破したのに、我々は封鎖するだけでいいのか! って勝手に悔しがったりしてました。
好きな作品を強いてあげるとすれば?
それは難しすぎる、全部好きだし。でも、ホントに心底凄いなって思ったのは『パトレイバー2』を見たときかな。『パトレイバー1』でもとんでもなくエンタテインメントのクオリティが高いのに『2』はそれをさらに超えた場所にある。本気で新たな世界を見せられた気がしましたね。公開されたときには賛否が凄かったんだけど、僕はもう死ぬほど好きです。あの劇場版の原型になったOVA版パトレイバー第5話・第6話に収録されている『二課の一番長い日』も凄いんですよ。主人公たちが北海道に行って、立ち食い蕎麦屋に入って犯人とニアミスするシーンがあるんですけど、そこで犯人の男が蕎麦をネギ抜きで注文して、七味をばあっと入れる。ああいうディテールが凄いですよね。日常の入れ方がうますぎる。
本広監督にとって押井守とは?
なにかを作りはじめて、ふと気がつくと押井さんの影がいつもそこにある。呪縛というか刷り込みというか、こうなるとトラウマですね。道標っていうとヘンですけど、ずっと追いかけ続けていたい人です。実写の世界では黒澤明や小津安二郎以外に、もうそんな監督はいませんから。日本映画界最後の天才というか、僕にとっては生き神様の領域ですね(笑)。

映画監督。『NIGHT HEAD』『踊る大捜査線』『蘇る金狼』等数々のTVドラマ演出を手掛け、『7月7日、晴れ』で映画監督デビュー。『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボ一ブリッジを封鎖せよ!』では日本映画(実写)興行収入記録を塗り替え歴代1位の座を獲得。その他劇場公開作に『スペーストラベラーズ』『サトラレ』などがある。ROBOT映画部所属。http://movies.robot.co.jp/

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