野良犬の塒
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野良犬の塒 押井守/プロダクションI.G作品 Wiki

東京国際アニメフェア2003

さて、2003年3月21日に東京国際アニメフェア2003でI.Gのブースに行ってきたので、そのリポートを。
写真撮影禁止だったので提示できないのだが、特筆すべきは、『イノセンス』のパネルが展示されていたことだろう。恐らく黄瀬氏の作画による絵でバラバラにされた義体(素子?)が描かれ、『人形には、なりたくなかった』というコピーが入っている。タイトルは『イノセンス』とだけ入っていてGHOST IN THE SHELLの文字もなく、(仮)の文字もない。そして犬(バセットハウンド)もしっかり。

そしてこの時行われた、『攻殻SAC』のトークショー。監督の神山氏と、脚本の櫻井圭記氏、そして同じく脚本の佐藤大氏(司会)が出席した。その中で面白い発言を引用する。
神山「(攻殻SACでは)脚本に時間を掛けたかったんです。顔合わせしないで脚本を書いて貰ったりということはしたくなかったので、毎週ミーティングに出られる人、暇な人を脚本チームに集めました(笑)」
そしてその脚本チームの一員となった櫻井氏。「当時学生でして、学生論文に攻殻機動隊の引用とかをよく使っていたんですが、教授とI.G社長の石川さんが知り合いでして、石川さんが新しい攻殻の脚本家を捜しているという話を教授にしまして、教授が『脚本書けるかどうかは判らないけど、好きらしいよ』と僕のことを紹介し、それでI.Gに呼ばれまして、最初は設定とかを考えて提案していたんですけど、いつのまにか脚本を書くことになっていました(笑)」
神山「脚本の人たちには無茶言いましたね。ミーティングが12時間に及ぶこともあったし、第五稿、第六稿は当たり前で何度も直して貰って」
神山「原作の情報量を再現するために、漫画みたいに欄外に字を出すことも考えたんですが、試してみると字が潰れるし早くて読めない。それで代わりに台詞ダイアローグに大量の情報を叩き込むことにしたんです。声優さんに嫌がられるかなと思ったんですが、やはり声優さんって喋るのが好きなんですね、喜ばれました(笑)」
神山「佐藤さんの名前は『カウボーイ・ビバップ』で知ったんですけど、佐藤さんの話を見ていると『この人は絶対に攻殻が好きなはずだ』と思って(笑)」
佐藤「ビバップに無理矢理攻殻の要素を入れていましたからね(笑)」
神山「それで佐藤さんに脚本を書いて欲しいと思って、『電話番号調べろ!』って(笑)」
佐藤「その時、たまたま僕は別の仕事でI.Gの違うビルにいたんです(笑)」
櫻井「僕はロボットの論文とかも書いていたんですけど、その影響かタチコマが好きで、普通車で追跡するところもロボットでなくタチコマで(笑)。それ以来大体タチコマの話は僕が書くようになって、『タチコマの家出 映画監督の夢』という話は、そのタチコマ好きの一つのピークみたいな話ですね」
神山「(原作の思考戦車の)フチコマをアニメに出さないという選択肢は当然あったんですが、出さないと怒る人がいるだろうし(笑)、原作と同じ設定だという地続き感を出したかったというのがあるので。でもフチコマが政治的理由、この場で言えないような理由により(笑)出せなくなりそうになっていたとき、天の声が聞こえてきたんですよ。士郎さんが『代わりにこれを使いなさい』といって、タチコマの名前とデザインをI.Gに持ってきてくれたんです。『どうしてタチコマなんですか?』って聞いたら『足が立っているからタチコマ』って(笑)。秘密みたいですよ、本当は20Pくらいの設定があるみたいですけど(笑)、『自分で考えなさい』みたいな」
神山「タチコマは九課に、予備も含めて全部で9体あるんですが、(声優の)玉川紗己子さんが9体演じ分けているそうなんですよ(笑)」
櫻井「そのうちタチコマが9体全部出てくる話がありますけど、タチコマGとかHとか出てきて、『どの声?』って(笑)」
神山「中心となるキャラはやはり素子、バトー、トグサになってしまいますが、押井さんの攻殻ではあまり出てこないけど、僕は荒巻はかっこいいキャラだと思います。イシカワも愛すべきキャラだと思いますね」
佐藤「素子とかバトーとかは、キャラ的に説明をしてくれないキャラですから(笑)。『自分で調べなさい』みたいな態度で。でもそういうときにイシカワを出すと『ああ、それはな……』って説明してくれて、話が進むんですよ(笑)。何でも知ってそうだし(笑)」
神山「そのイシカワも危機一髪! という話がこれから出てきますので(笑)」

それから、会場からの質問コーナーとなった。「どうしてオープニングはCGになったのか?」という質問について
神山「3DCGの外部とのコラボレーションというのを試してみたかったというのがあったので、この機会にやってみることにしました。2Dの側が学ぶこともあるだろうし、3Dの側が学ぶこともあるだろうし。タチコマも全部3Dなんですが、あれは2Dとの違和感をなくすためにシェーディングしなければならなかったんですけど、それが嫌いという人もいますね」
押井劇場版と、SACのキャスティングが違う事について。
神山「やはり押井さんの攻殻の全てを否定することは出来ないですし、押井さんの攻殻との地続き感というのを出したかったので。押井さんの攻殻で荒巻をやった大木民夫さんだけは高齢で、元気な荒巻は演じきれない恐れがあるということで、阪修さんに交代になりました」
日本のアニメが海外で評価が高いことについて。
神山「体感として、外から大騒ぎされるというのは『ほんとかな~?』というのがあったんですけど、海外から注目されているのは緊張しますね(笑)。『日本のアニメは絵は良いけど話が駄目』とかよく言われるんですよ。僕はBLOODの脚本を書いたんですけど、ジェイムズ・キャメロンがBLOODを見て『映像は最高にクールだけど、脚本が駄目』と言われて(笑)、じゃあこちらはダーク・エンジェルを超えてやるぞと(笑)」
攻殻SACの舞台である2030年にはあなた達はどうしていると思うか?
神山「僕は電脳化はしていないと思いますね(笑)。抵抗があって」
櫻井「電脳化はしていないだろうけど、あの手を『バシャッ』とやる義手をやりたいです(笑)。自分がタイプが出来ないのがコンプレックスで」
佐藤「僕はジェイムスン型のサイボーグに(笑)」
音楽を、菅野よう子氏に依頼したことについて。
神山「当然、押井さんの攻殻の音楽をやった川井さんにやって貰うという話は出たんですが、押井さんより先に川井さんを攻殻で使うのは押井さんが嫌がるだろうと(笑)。またTV版では感じを変えたいというのがあったので、それで菅野さんの名前が挙がったんです。ご存じの通り菅野さんは凄く忙しい売れっ子の方ですけど、頼まれると燃える人らしいので、『貴方以外にいません』という感じで行ったらいいかなあと。
それである時、突然菅野さんから『今日監督と会えない?』みたいな電話があったんですよ。その日はスタッフの合宿に行く予定の日だったんだけど菅野さんを優先してお会いして、全身全霊をかけて口説き落としてやろうと。それで僕は音楽は詳しくないから、攻殻の世界の話を一時間くらいしていたんです。菅野さんは『うんうん』って聞いていたんですけど、『攻殻ってエッチっぽいとこあるよね~』『私、SFわかんないから』とかって言われて、まずったかな~と思ったんですけど、その後笑い男の話をまた一時間くらい、最後にはこういう話になるんですってしていたんです。そうしたら『神山さんのやりたいことはわかったけど、それに私が土足でずかずか入っていっていいんですか?』と言われて、いいです! と答えました。そうしたら二日後ぐらいに『うん、やる~』という電話を戴きました。二時間話した甲斐があったな、と。
川井さんは押井さんの攻殻で民族音楽っぽい雰囲気を出していたけど、攻殻の音楽はどんな音楽になるのかなという話を菅野さんとして、『ロックじゃないよね~』とか言っていたんだけど、最初に上がってきた曲がロックで(笑)。でもどの曲もかっこいいんですよね」
素子のコスチュームについて。
神山「士郎さんの攻殻がエッチなふしがあるけど、でも『警察物』の攻殻にはそぐわないから排除する選択肢もあったんですが、やはり同じ攻殻だという地続き間を出したくて、その折衷案です(笑)」

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