#author("2022-10-25T15:35:58+09:00;2022-03-02T08:04:50+09:00","","")
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* マエズロス [#e4ac9b79]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Maedhros|
|~異訳|マイズロス|
|~その他の呼び名|丈高きマエズロス(Maedhros the tall)|
|~種族|[[エルフ]]([[ノルドール]])|
|~性別|男|
|~生没年||
|~親|[[フェアノール]](父)、[[ネアダネル]](母)|
|~兄弟|[[マグロール]]、[[ケレゴルム]]、[[カランシル]]、[[クルフィン]]、[[アムロド]]、[[アムラス]](弟)|
|~配偶者|なし|
|~子|なし|

** 解説 [#Explanation]

[[フェアノール]]と[[ネアダネル]]の長子。[[フェアノールの息子たち]]の長兄。
七人の息子たちの中では最も賢明な人物だったが、最後まで[[フェアノールの誓言>フェアノール#Oath]]に縛られて非業を重ね、身を滅ぼすことになった。

*** フィンゴンとの友情 [#o08306c4]

元々マエズロスは[[フィンゴン]]の友人だったが[[ヴァリノール]]の不和のため彼と疎遠になり、父[[フェアノール]]および[[兄弟たち>フェアノールの息子たち]]と共に[[シルマリル]]を奪回するという[[誓言>フェアノール#Oath]]を立てて[[中つ国]]に帰還する(しかしフィンゴンとの友情のために[[アラマン]]での裏切り行為には消極的であり傍観を保った)。

[[ダゴール=ヌイン=ギリアス]]の合戦で[[フェアノール]]が死ぬと、マエズロスは[[モルゴス]]との休戦交渉に応じる。彼は十分に警戒していたものの、罠にかけられて人質となり、右手首に鋼の手枷を付けられて[[サンゴロドリム]]の絶壁に吊り下げられた。
この姿を、救出に来た[[フィンゴン]]が発見する。しかしフィンゴンは彼のいる場所までは達することができず、苦痛に苛まれたマエズロスは自分を弓で射殺してくれるよう頼んだ。この光景を発見した[[大鷲]]の王[[ソロンドール]]がフィンゴンをマエズロスの元まで運び、フィンゴンはマエズロスの右手を切り落として手枷から救い出した。そのまま二人はソロンドールに運ばれて[[ミスリム]]に帰還した。

この一件によって[[フィンゴルフィン]]家と[[フェアノール]]家の不和は和らげられた。

>かれの肉体は責め苦の苦痛から回復し、再び元気を取り戻したが、苦痛の影は心に残った。そしてかれは、失った右手以上に巧みに、左手で必殺の剣を揮った。((『[[シルマリルの物語]]』「ノルドール族の中つ国帰還のこと」))

*** マエズロスの辺境国 [#te9c4b65]

[[ミスリム]]に生還したマエズロスは、[[アラマン]]での裏切り行為を謝罪して[[ノルドール]]の王権を放棄する。このためノルドールの[[上級王]]位は[[フィンウェ]]の次男である[[フィンゴルフィン]]に渡ることになった。
だが[[兄弟>フェアノールの息子たち]]の全員がこれに納得したわけではなく、マエズロスは争いを回避するために弟たちを連れてミスリムを去る。

彼らは[[モルゴス]]の本拠地[[アングバンド]]からの襲撃に対して無防備な[[ヒムリング]]の丘周辺の土地に移って警戒を続け、以後その地は''[[マエズロスの辺境国]]''と呼ばれるようになった。こうしてマエズロスは進んで危険な場所の防衛を引き受ける一方で、その後背地である[[東ベレリアンド]]を事実上手中に収める。
彼は[[フィンゴルフィン]]家と[[フィナルフィン]]家の者達と友好を保ち、[[メレス・アデアサド]]の宴には弟[[マグロール]]と共に辺境の戦士団を引き連れて参加した。
彼は[[フィンゴルフィン]]家と[[フィナルフィン]]家の者達と友好を保ち、[[メレス・アデルサド]]の宴には弟[[マグロール]]と共に辺境の戦士団を引き連れて参加した。

[[ダゴール・アグラレブ]]の合戦では[[モルゴス]]の奇襲を見事に撃退し、[[フェアノールの息子たち]]の警戒が怠りないことを示す。
[[ベレリアンド]]に[[人間]]([[エダイン]])がやってくると、[[マラハの族>ハドル家]]の[[アムラハ]]がマエズロスに仕えた。
だが[[ダゴール・ブラゴッラハ]]の合戦で[[アングバンドの包囲]]は破られる。辺境国は蹂躙されて弟たちは全員がその領土を追われた。マエズロスだけは[[ヒムリング]]の丘の砦を死守し、残党を糾合して[[モルゴス]]の伸長を辛うじて阻んだ。

>マエズロスはこの上ない剛勇をもって数々の&ruby(いさおし){勲};をあげ、[[オーク]]共はかれを前にして逃げ出した。[[サンゴロドリム]]で受けた責め苦以来、かれの精神は、白い火のように体内で燃え、あたかも[[死者の国>マンドスの館]]から還ってきた者のようであった。((『[[シルマリルの物語]]』「ベレリアンドの滅亡とフィンゴルフィンの死のこと」))

*** 連合提唱とその破綻 [#p7688d21]

やがて[[ベレン>ベレン(バラヒルの息子)]]と[[ルーシエン]]の[[シルマリル]]探求の功業が彼らの許に伝わると、マエズロスは[[モルゴス]]が必ずしも難攻不落ではないことを知って希望を取り直す。そこで''[[マエズロスの連合]]''と呼ばれる提唱を行い、モルゴスに敵対するすべての勢力を糾合して[[アングバンド]]攻略の連合軍を形成しようとした。
だが[[フェアノールの誓言>フェアノール#Oath]]が引き起こした禍のため、[[ドリアス]]と[[ナルゴスロンド]]からはほとんど援助を得ることができなかった。さらにマエズロスに臣従する[[東夷]]の[[ウルファング]]の一族は、既にモルゴスに誘惑されてその間者となっていた。

とはいえひとまず全[[ベレリアンド]]の賛同を得たマエズロスは力試しを急ぎ、各地で一斉に蜂起してモルゴスの軍勢を北方から一掃。そして全軍の糾合が完了すると、[[フィンゴン]]は西から、[[マエズロス]]は東から[[アングバンド]]を挟撃してモルゴスの全軍を粉砕する計画を立てた。
連合軍は[[ゴンドリン]]の思いがけない参戦で士気を大いに高めたものの、ウルファングの息子[[ウルドール]]の奸計でマエズロスは出撃を遅滞させられてフィンゴンと合流するタイミングを逸する。アングバンドの門前で分断された両軍は、モルゴスの解き放った主力部隊とウルファングの息子たちの裏切りによって逆に挟撃される形となり、決定的な大敗北を喫した。([[ニルナエス・アルノエディアド]])

[[フェアノールの息子たち]]は[[ドワーフ]]と共に血路を切り開いて[[ドルメド]]山に撤退。
これ以後、マエズロスと兄弟たちは[[エレド・リンドン]]の山麓に逃れて[[緑のエルフ]]と交わり、森で放浪の暮らしを行うようになる。

*** 繰り返される同族殺害 [#y4099f91]

[[シルマリル]]の一つが[[トル・ガレン]]の[[ベレン>ベレン(バラヒルの息子)]]と[[ルーシエン]]の手元にある間は、[[フェアノールの息子たち]]も手出しを控えていた。だが二人が死に、シルマリルが二人の息子である[[ドリアス]]の王[[ディオル・エルヒール>ディオル(ベレンの息子)]]の手に渡ったことが知られると、再び[[フェアノールの誓言>フェアノール#Oath]]が目覚める。
フェアノールの息子たちはシルマリルを引き渡すようディオルに書状を送り、これが無視されると[[ケレゴルム]]に扇動されてドリアスを襲撃し、二度目の[[同族殺害]]が犯された。この戦いで[[ケレゴルム]]、[[クルフィン]]、[[カランシル]]が戦死し、また幼かったディオルの子[[エルレード]]と[[エルリーン]]はケレゴルムの召使の手で森に置き去りにされ行方不明になる。

マエズロスはこれを大いに悔やんだが、シルマリルが[[シリオンの港]]に逃れたディオルの娘[[エルウィング]]の手元にあることがわかると、再び誓言に突き動かされて三度目の[[同族殺害]]を起こす。シリオンの港は劫掠され、[[アムロド]]と[[アムラス]]も戦死し、[[エルウィング]]はシルマリルと共に[[大海]]に身を投じた。

*** 最期 [#v422bc3f]

やがて[[エアレンディル>エアレンディル(トゥオルの息子)]]と[[エルウィング]]によって[[シルマリル]]の一つは[[アマン]]に到達し、それから天に上げられて[[エアレンディルの星]]となった。[[怒りの戦い]]で[[モルゴス]]は打ち倒され、その[[鉄の王冠]]に嵌っていた残り二つのシルマリルも、[[ヴァリノール]]の軍勢の手に取り戻される。

[[エオンウェ]]はシルマリルに対する彼らの権利は度重なる[[同族殺害]]で失効したと述べ、[[ヴァリノール]]に戻って[[ヴァラール]]の裁きを受けるようマエズロスと[[マグロール]]に命じる。二人とも誓言に倦み疲れ、マグロールはエオンウェの命令に従うことを望んだものの、マエズロスはそれでも誓言の成就を試みることを主張する。

>「しかし、どうやったらわれらの声が[[世界の圏外>世界の圏]]におられる[[イルーヴァタール]]の&ruby(みもと){御許};に届こう。われらは逆上して、イルーヴァタールの&ruby(みな){御名};にかけて誓ったのだ。そしてもし、誓いを守らなければ、永遠の闇がわれらにふりかかるよう求めたのだ。誰がわれらを解き放ってくれよう」((『[[シルマリルの物語]]』「エアレンディルの航海と怒りの戦いのこと」))

マエズロスとマグロールは夜半にヴァリノールの軍勢の陣営を襲って見張りを殺し、保管されていた二つの[[シルマリル]]を奪って逃げ去る。
だがエオンウェの言葉通り、シルマリルはもはや兄弟を正当な持ち主とは認めず、その身を焼いた。これを悟ったマエズロスは苦悶と絶望のあまりシルマリルの一つを抱いたまま大地の火の割れ目に身を投じて死んだ。

*** 多数の名の意味 [#k13771ea]

以下の名前及びその説明は『[[The Peoples of Middle-earth>The History of Middle-earth/The Peoples of Middle-earth]]』「The Shibboleth of Fëanor」による。

:Nelyafinwë(ネルヤフィンウェ)|父[[フェアノール]]が与えた[[父名>エッシ]]。[[クウェンヤ]]で'''Finwë third'''([[フィンウェ]]三世)の意味。
:Maitimo(マイティモ)|母[[ネアダネル]]が与えた[[母名>エッシ]]。クウェンヤで'''well-shaped one'''(見目優れた者)の意味。その名の通り美しい体の持ち主だった。
:Russandol(ルッサンドル)|兄弟や親戚たちから付けられた[[エペッセ>エッシ]]。クウェンヤで'''copper-top'''(銅頭)の意味。[[祖父>マフタン]]譲りの赤銅髪だったことにちなむ。
:マエズロス(Maedhros)|MaitimoとRussandolを基にしたと思われる[[シンダリン]]での名。

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