三輪零は高校生の身だが、集会だのデモだのビラ配りだの『政治闘争』、いわゆる学生運動に首を突っ込んでいた。
そしてある夜デモに参加し、機動隊に突っ込まれて蹴散らされ、慌てて逃げて一人はぐれた夜。見てはならなかったものを目撃する。
血に塗れた日本刀を持った少女。そして何かの死体を片付ける男。そして零は次の瞬間に気を失った。
外傷も無く血まみれのところを発見され拘留されるが、血が人間のものではないという事で釈放された零。その零の前に現れる刑事。今までに発生した、死体から血が抜かれた連続殺人。日本刀との少女の関係は何か。そして事件にのめりこんでゆく零。獣たちの夜が始まっていたのだ。
押井守による、『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の小説。
『BLOOD』は、同一の世界観上での時代の異なる作品群の事であり、共通しているのは少女が吸血鬼と戦っているということである。これはProduction I.Gの『押井塾』から出た企画が元となっている。この押井塾で、押井氏がI.G内で演出について教えているという事だ(SMEのBLOODページに詳しい記述がある)。そしてアニメのBLOODでは押井氏は『企画協力』としてクレジットに入っているが、アニメのBLOODについては押井氏は「脚本の第2稿まで目を通しただけ」で、製作にはほとんど関わっていないそうである(監督は北久保弘之氏)。
そしてその他のBLOOD作品群にPS2のゲーム(やるドラDVD)、ドラゴンマガジンに連載される小説(『獣たちの夜』とは別物)、エースネクストに連載されるコミック等がある。
そしてこの『獣たちの夜』は、押井氏描き下ろしの小説版の『BLOOD』である。
この『獣たちの夜』は、その押井氏独自の書下ろしによるBLOODで、押井氏の小説としてはTOKYO WARに続く2作目となる。このBLOODでは主人公は小夜ではなく高校生の男であり、しかも学生闘争に首を突っ込んでいる。押井氏自身の体験が表された本で(本人も「自伝的小説」と認めている)、学生闘争についてのうんちくなどが拝める珍しい小説となっている。個人的にはうんちく、つまり押井氏が叫びたい事ばかりが先行し、物語がうすれているように思えるが(正直な所、小説の範疇に入れるべきか疑わしい)、そのうんちくを読むのが面白いという人には楽しめるだろう。
文庫版(寺田克也の口絵、山田正紀の解説付き)、ハードカバー版の2種