野良犬の塒
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ラーゼフォン 多元変奏曲 初回限定版 ブックレット 出渕裕×押井守対談(抜粋)

ラーゼフォン 多元変奏曲 初回限定版のブックレットには出渕裕×押井守対談が掲載されているのだが、それを押井氏と出渕氏の関係を中心にちょっと紹介してみよう。

押井 僕のエッセイで、ぶっちゃんって人間についてコラムとかエッセイとか、さんざん書いて、まわりの人間はみんな悪口だと思ってるよね(笑)。でも、そうじゃないんだよ。評価してるから書いたんだ。
 僕の「出渕裕論」を締めて言えば、「ぶっちゃんは、メカニックをキャラクターにした男だ」ということ。というか、アニメーションのメカニック、ロボットはみんなキャラクターだったんです。そのことを無意識のうちに極限まで追求した男だから、そこを最大限に評価してやらないと。
出渕 無意識かなあ(笑)。まあ、でも基本的には、おっしゃるとおりです。
押井 そういう意味で言うと、日本のアニメーションを代表する男なんですよ。日本のアニメーションを乱した男でもあるけどね。だからいまだに仕事ができるわけ。永遠にファンの側にいられる男なんだよね。それを要求したのは誰かと言えば、それはファンですよ。ロボットは彼らおよび彼女らにとってキャラクターだった。そういうことを体現している数少ない、っていうかほとんど唯一の男。
 メカニックというのは、本来は自立した瞬間から別世界になっちゃう。レイバーは本当に過渡的な存存で、キャラクターであるのと同時に一種のギミックだったんですよ。僕は、はっきりギミックにしようと思ってたの。ところがぶっちゃんのデザインに足引っ張られて(笑)、そうならなかった。
出渕 でも、あれ押井さんのいう、ギミックにしてたら今の『パトレイバー』はなかったでしょう。それと、今の押井さんも(笑)。
押井 ないない。それはまさに思うわけ。あの98式っていうのが、ファンの好むキャラクターになってなければ、最初のビデオ6本でこの仕事は終わってた。映画もなかったし、テレビシリーズもなかったし、もちろん『パト2』も存存しなかった。そこらへんが僕のアンビバレンツ(二律背反)な部分だけどね。
出渕 それは、常に関係論なんですよ。
押井 僕自身もどこかでそれを吹っ切ろうと思いながらも、そういうようなものを背負って仕事してる。ぶっちゃん個人に対しては、『パト2』のときに大喧嘩やらかして、「お前なんかといっしょに仕事したくない、顔も見たくない」って。
出渕 それは、要するにあの電話口の話でしょ。デザイン上がらないんで、怒った押井さんが「お前やゆうきまさみは要するにレイバーが宇宙でドンパチやるよーなものをやりたいんだろ!」って、それでこっちがキレちゃった。アレ(笑)。
(中略)
押井 だから、そういう反対勢力と格闘することで、結果的にあの作品が成立しちゃったこともわかってるから、よけいに愛憎の念が深いの(笑)。日本のアニメーションが持つ非常に不可解で特殊な領域と、緑を切ろう緑を切ろうと思いつつ、どうしても抜けきらずにそっちに頭が突入してしまう。まるで日本的な「家」みたいなもんで、家を飛び出しても結局は家の問題は解決しない。
 だからこそ、出渕裕っていう男に代表されているような、そういう絵柄の世界、アニメーションの世界、デザインの世界を、多分僕がいちばん正確に語れる位置にいるんだ。
出渕 実は、そうかもしれないですね。
押井 ……というつもりで、ずっとこの数年間、ぶっちゃんの悪口をあちこちで書いてきたんですよ(笑)。
出渕 そ、それはありがた迷惑な気が…(苦笑)。

押井 (劇場版ラーゼフォンについて)テレビシリーズを再編集して映画にするっていうスタイル自体、久しぶりで懐かしいなって思った。僕も『御先祖様万々歳』って作品を再編集して映画版を作ったことあるけど、シリーズものをチョキチョキ切って貼って、ちょこっと新作加えることで、違う作品をもう一回つくり出すって、そういう作業は好きなんだよね。
出渕 わかりますよ。今回、基本的にはテレビとかなり雰囲気が変わったのは、全部セリフを変えたりしてるからなんです。あと、テレビのデータが残っていたので、レイアウト上でキャラクターを違う人に乗せ変えたりして別物に見えるようにしているんですよね。
押井 なるほど、手の込んだことやってるんだ。今はデータ残ってるから、レイヤー差し替えるだけでいいんだ。ああ、そういう仕事やってみたいな、俺(一同爆笑)。たとえば『ラーゼフォン』で、仮にだよ、僕に再構成と編集を依頼されればね。
出渕 いや、それはもう終わっちゃったし(笑)。ま、そういう組み直す作業だったんで前後関係もバラバラにして再構成してます。第11楽章に精神攻撃とかあるんですが、この話数は独立性が高くって一寸この話は使えないかなって思っていたんですが、視点を変えてやると意外とピースの繋ぎとかに使えたりしましたね。
押井 僕の師匠の鳥さん(鳥海永行監督)が、葦プロの『宇宙戦士パルディオス』って、昔そういう再編集映画の仕事を依頼されてやったことがあるのね。僕は、なぜ鳥さんがそんな仕事をするのか、ちょっと不思議だったの。でも、鳥さんは「久々に映画の仕事がしてみたかった。他人が作りだしたシリーズを、自分が切った貼ったやって1本の映画に仕上げることに、演出家としての醍醐味を感じる」って言うんだ。
 それで、まずまっさきにやらなくちゃいけないのは、クオリティを設定すること。使える画を選び出し、使えない画を切って捨てるっていうこと。どんなに重要なシーンでも、画がヘロヘロであれば全部捨てていく。そのかわりナレーションを入れて構成を変えるとか、違う視点にするとか。別のキャラクターを前面に出すとか、方法論はいろいろあるわけ。そこで何が可能なのかって考えない限り、絶対に映画にならない。それは、他人の作品だからできるんだよな……そういう話を現場でした記憶がある。

出渕 僕は個人的にも押井さんのファンだし、押井作品が好きだから。何か好きだって聞かれたら、『天使のたまご』って言っちゃうような奴ですからね(笑)。『攻殻機動隊』も、みんな『パトレイバー』と比較するんだけど、違うじゃん、あれって、闘う『天使のたまご』でしょって。
押井 あ、そうだったんだ……。
出渕 押井さん、知らないと思うけど、いや、あの頃オレが動いてたの知ったら嫌だろうなって隠してたんだけど、『パトレイバー』関係も影ながら支えてるんですよ。角川書店から出たレイアウト集(METHODS)も、表紙、インクラム3号機だけだと押井さん嫌がるから、こうやってここにお魚泳がしてねってラフ描いて、これを力トキ君にラフ描いてもらって渡せば多分通るからって編集にアドバイスして。『パ卜2』の小説も、ビジュアルは藤原カムイか末弥純の名前を出してみなさいって。押井さんOKするからって。そうやって押井さんの好みもチェックしつつ、段取りをつけてた。

こんな感じで、他にもたくさん色々と書かれている。勿論内容のほとんどはラーゼフォンに関する事で、押井氏がラーゼフォンについて色々喋っている。

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