#author("2023-08-03T11:12:43+09:00;2022-09-26T21:43:24+09:00","","")
#author("2024-01-27T00:08:32+09:00;2022-09-26T21:43:24+09:00","","")
* エーオウィン [#mb95403a]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Éowyn((『[[The Lord of the Rings A Reader's Companion]]』によると、[[古英語]]の'eoh'([[馬]])と'wyn'(喜び)を組み合わせた名。))|
|~異訳|エオウィン|
|~その他の呼び名|デルンヘルム(Dernhelm) &br; ローハンの盾持つ乙女(Shieldmaiden of Rohan)((shieldmaiden(古ノルド語のskjaldmær)とは北欧の民話やサガに登場する女戦士のこと。)) &br; 盾の腕の姫(Lady of the Shield-arm)(([[魔王]]によって盾を持つ腕を折られたことにちなむ、[[ローハン]]での名。)) &br; ローハンの白い姫君(White Lady of Rohan)|
|~種族|[[人間]]([[ロヒルリム]])|
|~性別|女|
|~生没年|[[第三紀]]2995~不明|
|~親|[[エーオムンド]](父)、[[セーオドウィン]](母)、[[セーオデン]](養父)|
|~兄弟|[[エーオメル]](兄)|
|~配偶者|[[ファラミル]]|
|~子|[[エルボロン]](息子)|

** 解説 [#Explanation]

[[マーク(ローハン)>ローハン]]の王[[セーオデン]]の妹[[セーオドウィン]]と軍団長[[エーオムンド]]の間に生まれた娘で、[[エーオメル]]の妹。
幼い頃に父エーオムンドが[[オーク]]に殺され、その後すぐ母も病を得て亡くなると、兄エーオメルと共に[[セーオデン]]に引き取られ、[[エドラス]]で彼の養子として育てられた。

エーオウィンは勇猛で武芸に秀で、戦勲を求める心は男子に劣らなかったが、女の身であるため戦いに赴くことを許されず、その機会を得られなかった。
またその一方、義父セーオデンが相談役の[[グリーマ]]によって気力を萎えさせられ、次第に耄碌していく姿を間近で見続けることになり、これが彼女の心痛と重荷の種にもなっていた。

>婦人は背を向け、ゆっくりと建物の中にはいって行きました。入口をはいる時、かの女は振り向いて後ろを見返りました。静かな憐れみの色を目に浮かべて王を眺めるそのまなざしは沈痛で思慮深げでした。その顔は際立って美しく、長い髪は金色の川のようでした。銀の帯を腰に締めた白い長衣のその姿は背が高くほっそりしていましたが、けっして弱々しくは見えず、&ruby(はがね){鋼};のように強固な王家の娘と見えました。こういうわけで、アラゴルンはこの時初めてローハンの姫君、エーオウィンを明るい外の光の中で見たのです。かれはエーオウィンを美しいと思いました。そしてその美しさはまだ女にはなりきっていない、早春の朝のような冷ややかな美しさであると思いました。((『[[指輪物語]] [[二つの塔>指輪物語/二つの塔]]』六 黄金館の王))

*** [[ローハン]]と[[アイゼンガルド]]の戦争 [#wf0d859c]

密かに[[サルマン]]に間者として買収されていた[[グリーマ]]はエーオウィンに邪心を抱き、常に瞼の下から彼女の姿を伺っていた。それに気づいた兄[[エーオメル]]は激昂のあまり宮廷内で剣を抜き、グリーマを切り捨てようとした。そのため王の命によりエーオメルは投獄されてしまう。
しかし、[[エドラス]]にやってきた[[ガンダルフ]]ら一行によって[[セーオデン]]は癒され、気力を蘇らせる。主導権を取り戻したセーオデンはグリーマを追放し、エーオメルを放免して王位継承者に指名した。この時エーオウィンはガンダルフと共にやってきた[[アラゴルン二世]]と出会い、彼の中にある勇者の風格を認め、恋心に近い感情を抱くようになった。
サルマンの脅威を取り除くため、セーオデンは[[ウェストフォルド]]に進軍することになり、エーオメルとアラゴルンもそれに同行する。しかしエーオウィンには彼らが不在の間、残った国民を指揮する役目が与えられた。そのためエーオウィンは[[エドラス]]で彼らを見送った後、民を率いて[[やしろ岡]]へ避難した。

*** デルンヘルムとしての[[ゴンドール]]への遠征 [#q28bd864]

[[角笛城の合戦]]で勝利した後、[[ローハン]]全軍は[[やしろ岡]]へ集結する。エーオウィンは一足先にやしろ岡にやってきた[[灰色の一行]]を出迎えるが、そこで[[アラゴルン>アラゴルン二世]]が[[死者の道]]を行軍するつもりであることを知らされ、衝撃を受ける。はじめ彼女はアラゴルンを思い止まらせようと努めたが、それができないと悟ると自らの心の内を打ち明け、共に戦場に連れて行ってくれるよう懇願する。しかし聞き届けられず、アラゴルンは彼女を振り切って死者の道へ旅立った。
遅れてやってきた[[セーオデン]]の元に、[[ゴンドール]]から援軍を要請する使者[[ヒルゴン]]が訪れると、セーオデンはエーオウィンに残った国民の指揮を任せ、ゴンドールへの長征に出発する。
この時、セーオデンに小姓として召し抱えられた[[ホビット]]の[[メリアドク・ブランディバック]]もまた、望みに反して[[エドラス]]に留め置かれることになった。アラゴルンから、メリーの戦いの身支度を整えることを頼まれていたエーオウィンは、彼に兜や盾などを与える。その後、男装してデルンヘルムを名乗ったエーオウィンは、メリアドクを連れて[[エルフヘルム]]麾下の[[エーオレド]]に紛れ込み、密かにセーオデンの長征に同行する。

>一同がこの隊列のほとんど終わりまで来た時、その中に&ruby(おもて){面};を上げ、鋭い視線をホビットに投げかけた者がいました。若い男だなと、視線を返しながらメリーは思いました。背の高さも横幅も他の者ほどないようだ。メリーは若者の澄んだ灰色の目がきらっと光るのをとらえました。そしてその時かれは思わず身震いしました。というのは、その若者の顔が望みを持たぬ者の顔、死地を求めに行く者の顔であることがとっさに感じられたからでした。((『[[王の帰還>指輪物語/王の帰還]] 上』「三 ローハンの召集」))

*** [[ペレンノール野の合戦]]での勲 [#a41dde14]

[[ロヒルリム]]の軍勢が[[ペレンノール]]に達した時、デルンヘルムは同じ[[馬]]([[&ruby(ウインドフォラ){風の子};>風の子]])に乗る[[メリアドク>メリアドク・ブランディバック]]と共に[[エルフヘルム]]の陣を離れ、ぴったりと[[セーオデン]]のそばに付き添い、合戦の最中も彼のそばを離れなかった。セーオデンが倒れ、[[魔王]]が手にかけようと舞い降りてきた時、セーオデンの共回りは全て打ち倒されるか恐怖に駆られた馬によって運び去られていたが、ただ一人デルンヘルムだけは馬を下りて踏みとどまり、魔王を阻む。
そして'''生き身の人間の男にはおれの邪魔立てはできぬわ!'''という魔王の言葉に応え、自らの正体を明かして立ち向かった。

>その時メリーはおよそこれほど場違いなものはないと思われるものを耳にしました。デルンヘルムが声をたてて笑ったように思われたのです。その澄んだ声は&ruby(はがね){鋼};が鳴り響くようでした。「しかしわたしは生き身の人間の男ではない! お前が向かい合っているのは女だ。わたしはエーオウィン、エーオムンドの娘だ。お前こそわたしの主君にして血縁である者とわたしの間に立って邪魔をしている。 …… 」
…… しかしかの女の秘密を守っていた&ruby(かぶと){兜};は落ち、その輝く髪が、&ruby(そくばく){束縛};から&ruby(と){解};き放たれて、薄い金色にきらめいて両肩にこぼれ落ちていました。海のような灰色を帯びた目はきびしく&ruby(ようしゃ){容赦};がありませんでしたが、その&ruby(はお){頰};には涙が流れていました。片手には剣を握り、もう一方の手には&ruby(たて){盾};を持ち上げて恐ろしい敵の&ruby(ぎょうし){凝視};に対していました。
…… ロヒルリムの乙女、王家の子の、細づくりながら&ruby(はがね){鋼};の刃のように、美しいが、&ruby(せいぜつ){凄絶};なことよ。すばやい一撃を姫は加えました。熟練した致命的な一撃でした。((『王の帰還 上』「六 ペレンノール野の合戦」))

エーオウィンは、魔王の乗る[[怪鳥>恐るべき獣]]の首を一刀のもとに切り落として魔王自身と対したが、魔王の放った黒い矛(メイス)の一撃で盾を左腕の骨ごと打ち砕かれてしまう。しかしエーオウィンが自らの正体を明かしたことで、恐怖に打たれてうずくまっていたメリアドクが勇気を取り戻し、背後から魔王の膝の裏を[[塚山出土の剣]]で突き刺す。塚山出土の剣の一撃は魔王に致命的な打撃を与え、魔王の肉体を不滅にしていた呪魔を打ち破った。
エーオウィンは最後の力をふりしぼって鉄の王冠と広い肩の間の何もない空洞に剣を突き刺して、魔王にとどめを刺す。かくして'''人間の男の手では討たれぬだろう'''('''not by the hand of man will he fall.''')((英語のmanは、人とも人間とも男とも解釈できることに由来する。詳細は[[魔王の項目>魔王#prophecy]]を参照。))と[[グロルフィンデル]]がかつて予言した魔王に滅びがもたらされ、エーオウィンは偉大な勲を勝ち得た。

*** ファラミルとの出会いと[[指輪戦争]]後 [#i5a0a65b]

エーオウィンは魔王を剣で斃した時、魔王を刺す時に剣を使った右腕から[[黒の息]]に冒されて自らも倒れ、[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の[[療病院]]に運び込まれる。そこで[[アラゴルン二世]]の治療を受けて黒の息から癒され、[[西軍]]が[[黒門]]まで遠征していった間そこに留まっていた。だが彼女には、依然として戦いと死を願う心があり、希望を持てないでいた。
そんな中、エーオウィンは同じく黒の息に冒されてアラゴルンに癒されていた[[ファラミル]]と知り合って愛されるようになる。そして[[指輪所持者]]の使命が達成された日、彼女はファラミルの愛を受け入れ、戦い以外にも望みを持てるようになって、心も癒された。

エーオウィンはミナス・ティリスに留まって療病院の患者たちの看護に従事した後、[[コルマッレンの野>コルマッレン]]から帰還してきたアラゴルンら西軍をミナス・ティリスにて迎える。そしてアラゴルンの戴冠式に参列した後、[[エーオメル]]らと共に戦後処理のため、一時[[エドラス]]へ帰郷する。その後、ミナス・ティリスを再訪してきたエーオメルや、アラゴルン、ファラミルおよびホビット達、[[裂け谷]]や[[ロスローリエン]]のエルフたち一行と、彼らと共に運ばれてきた[[セーオデン]]の亡骸を迎えて、セーオデンの葬儀に参列した。その後の追悼会で、エーオメルによってエーオウィンとファラミルの婚約が発表された。またエーオウィンは[[メリアドク・ブランディバック]]に、[[ペレンノール野の合戦]]での勲を称えて[[マークの角笛]]を与えた。

やがてファラミルと結婚したエーオウィンは、夫の領国である[[イシリエン]]の[[エミン・アルネン]]に住まったという。『[[The Peoples of Middle-earth>The History of Middle-earth/The Peoples of Middle-earth]]』によると、二人の間には息子[[エルボロン]]が生まれた。

*** 画像 [#l51f1e83]

&ref(アラゴルン二世/AlanLee-37-EowynAndAragorn.jpg,,25%,アラン・リー作画によるアラゴルンとエーオウィン); &ref(eowynandnazgulbyjohnhowe.jpg,,25%,ジョン・ハウ作画による恐るべき獣と戦うエーオウィン); &ref(eowynbyterashima.jpg,,30%,寺島龍一作画による恐るべき獣と戦うエーオウィン); &ref(ab11441824e2c3ff3aca94014094ecab--alan-lee-tolkien.jpg,,40%,);

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

|~俳優|[[ミランダ・オットー]]|
|~日本語吹き替え|[[本田貴子]]|

字幕及び吹替での名前は『[[指輪物語]]』書籍[[新版]]に従い''エオウィン''。
『二つの塔』で初登場。[[角笛城の合戦]]の前には、非戦闘員の女子供と[[やしろ岡]]ではなく[[燦光洞]]に避難した(メイキング映像では、燦光洞内で[[ウルク=ハイ]]を相手に戦っているシーンもあるが、映画ではカットされている)。また[[エクステンデッド・エディション]]では、[[セーオドレド]]の葬儀の歌を[[古英語]]で歌っている。[[ヘルム峡谷]]への移動の際、[[レンジャー(野伏)>野伏]]として粗食に慣れているであろう[[アラゴルン>アラゴルン二世]]をして苦渋の反応をさせるほどの料理の腕前を披露するシーンがあり、独自の性格付けがなされた。
『王の帰還』では、デルンヘルムの名は登場せず、[[メリー>メリアドク・ブランディバック]]は最初から自分を馬に乗せた乗手の正体がエーオウィンだと気がつく。また、[[魔王]]と対峙した時に正体を明かすタイミングが大きく異なっている。
[[ファラミル]]とのエピソードは省略されているが、アラゴルンの戴冠式・結婚式で、ファラミルとエーオウィンが笑顔で並んでいる姿が登場する。また『王の帰還 [[エクステンデッド・エディション]]』では、[[療病院]]でエーオウィンとファラミルが見つめ合うシーンや、[[西軍]]が[[黒門]]に出撃した後に語らうシーンが追加されており、その後の関係を示唆している。

*** 画像 [#eb2555d8]

&ref(Eowyn2.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン); &ref(Eowyn.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン(ペレンノール野の合戦時)); &ref(Eowyn3.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるエーオウィン(セーオドレドの葬儀時)); 

*** グッズ [#p0547663]

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** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#LotRO]

角笛城の合戦前後のエドラス及びやしろ岡、ローハン軍の長征、ペレンノール野の合戦、療病院にて原作とほぼ同じ描写のエーオウィンと遭遇できる。
またサウロンの敗北と[[黒門]]の破壊後、ファラミルに[[ミナス・モルグル]]の調査と制圧の任があてられたとき、愛する人の手助けになりたいと思いつつ心配もかけたくないとして、Dolentholを名乗って正体を隠し、ファラミルの部下の[[イシリエンの野伏]]たちの中に混ざっている。

&ref(ScreenShot00602.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるエーオウィン); &ref(ScreenShot00663.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における武装したエーオウィン); &ref(ScreenShot00427.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるデルンヘルムとメリアドク・ブランディバック); &ref(ScreenShot_2021-05-30_170122_0.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における、Dolentholを名乗るエーオウィン);

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