* エオウィン [#mb95403a]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[人名]]|
|~スペル|Éowyn(([[古英語]]で「女騎士」の意))|
|~その他の呼び名|デルンヘルム(Dernhelm) &br; ローハンの盾持つ乙女(Shieldmaiden of Rohan) &br; 盾の腕の姫(Lady of the Shield-arm)|
|~種族|[[人間]]([[ロヒアリム]])|
|~性別|女|
|~生没年|[[第三紀]]2995~|
|~親|[[エオムンド]](父)、[[セオドウィン]](母)|
|~兄弟|[[エオメル]](兄)|
|~配偶者|[[ファラミア]]|
|~子|[[エルボロン]]|

** 解説 [#Explanation]

[[マーク(ローハン)>ローハン]]の王[[セオデン]]の妹[[セオドウィン]]と[[ロヒアリム]]の騎将[[エオムンド]]の間に生まれた娘で、[[エオメル]]の妹。
幼い頃に父エオムンドが[[オーク]]に殺され、その後すぐ母も病を得て亡くなると、兄エオメルと共に[[セオデン]]に引き取られ、[[エドラス]]で養子として育てられた。

エオウィンは勇猛で武芸に秀で、戦勲を求める心は男子に劣らなかったが、女の身であるため戦いに赴くことを許されず、その機会を得られなかった。
またその一方、[[蛇の舌グリマ>グリマ]]によって気力を萎えさせられ、次第に耄碌していく義父セオデンの姿を間近で見続けることになり、これが彼女の心痛と重荷の種にもなっていた。

>婦人は背を向け、ゆっくりと建物の中にはいって行きました。入口をはいる時、かの女は振り向いて後ろを見返りました。静かな憐れみの色を目に浮かべて王を眺めるそのまなざしは沈痛で思慮深げでした。その顔は際立って美しく、長い髪は金色の川のようでした。銀の帯を腰に締めた白い長衣のその姿は背が高くほっそりしていましたが、けっして弱々しくは見えず、鋼のように強固な王家の娘と見えました。こういうわけで、アラゴルンはこの時初めてローハンの姫君、エオウィンを明るい外の光の中で見たのです。かれはエオウィンを美しいと思いました。そしてその美しさはまだ女にはなりきっていない、早春の朝のような冷ややかな美しさであると思いました。((『[[指輪物語]] [[二つの塔]]』六 黄金館の王))

*** [[ローハン]]と[[アイゼンガルド]]の戦争 [#wf0d859c]

密かに[[サルマン]]に間者として買収されていた[[蛇の舌グリマ>グリマ]]はエオウィンに邪心を抱き、常に瞼の下から彼女の姿を伺っていた。それに気づいた兄[[エオメル]]は激昂のあまり宮廷内で剣を抜き、グリマを切り捨てようとした。そのため王の命によりエオメルは投獄されてしまう。
しかし、[[エドラス]]にやってきた[[ガンダルフ]]ら一行によって[[セオデン]]は癒され、気力を蘇らせる。主導権を取り戻したセオデンはグリマを追放し、エオメルを放免して王位継承者に指名した。この時エオウィンはガンダルフと共にやってきた[[アラゴルン二世]]と出会い、彼の中にある勇者の風格を認め、恋心に近い感情を抱くようになった。
[[サルマン]]の脅威を取り除くため、セオデンは[[西谷]]に進軍することになり、エオメルとアラゴルンもそれに同行する。しかしエオウィンには彼らが不在の間、残った国民を指揮する役目が与えられた。そのためエオウィンは[[エドラス]]で彼らを見送った後、非戦闘民を率いて[[馬鍬砦]]へ避難した。

*** デルンヘルムとしての[[ゴンドール]]への遠征 [#q28bd864]

[[角笛城の合戦]]で勝利した後、[[ローハン]]全軍は[[馬鍬砦]]へ集結する。エオウィンは一足先に馬鍬砦にやってきた[[アラゴルン>アラゴルン二世]]一行を出迎えるが、そこで彼が[[死者の道]]を行軍するつもりであることを知らされ、衝撃を受ける。はじめ彼女はアラゴルンを思い止まらせようと努めたが、それができないと悟ると自らの心の内を打ち明け、共に戦場に連れて行ってくれるよう懇願する。しかし聞き届けられず、アラゴルンは彼女を振り切って死者の道へ旅立った。
遅れてやってきた[[セオデン]]の元に[[ゴンドール]]から援軍を要請する使者[[ヒアゴン]]が訪れると、セオデンはエオウィンに国民の指揮を任せ、ゴンドールへの長征に出発する。
この時、セオデンに小姓として召し抱えられた[[ホビット]]の[[メリアドク・ブランディバック]]もまた、望みに反して[[エドラス]]に留め置かれることになった。アラゴルンから、メリーの戦いの身支度を整えることを頼まれていたエオウィンは、彼に兜や盾などを与える。その後、男装してデルンヘルムを名乗ったエオウィンは、メリアドクを連れて[[エルフヘルム]]麾下の[[エオレド]]に紛れ込み、密かにセオデンの長征に同行する。

>一同がこの隊列のほとんど終わりまで来た時、その中に面を上げ、鋭い視線をホビットに投げかけた者がいました。若い男だなと、視線を返しながらメリーは思いました。背の高さも横幅も他の者ほどないようだ。メリーは若者の澄んだ灰色の目がきらっと光るのをとらえました。そしてその時かれは思わず身震いしました。というのは、その若者の顔が望みを持たぬ者の顔、死地を求めに行く者の顔であることがとっさに感じられたからでした。((『[[王の帰還]] 上』「三 ローハンの召集」))

*** [[ペレンノール野の合戦]]での勲 [#a41dde14]

[[ロヒアリム]]の軍勢が[[ペレンノール]]に達した時、デルンヘルムは同じ馬に乗るメリアドクと共にエルフヘルムの陣を離れ、ぴったりと王のそばに付き添い、合戦の最中も王のそばを離れなかった。セオデンが倒れ、[[魔王]]が王を手にかけようと舞い降りてきた時、セオデンの共廻りは全て打ち倒されるか恐怖に駆られた馬によって運び去られていたが、ただ一人デルンヘルムだけは馬を下りて踏みとどまり、魔王を阻む。
そして'''生き身の人間の男にはおれの邪魔立てはできぬわ!'''という魔王の言葉に応え、自らの正体を明かして立ち向かった。

>その時メリーはおよそこれほど場違いなものはないと思われるものを耳にしました。デルンヘルムが声をたてて笑ったように思われたのです。その澄んだ声は鋼が鳴り響くようでした。「しかしわたしは生き身の人間の男ではない! お前が向かい合っているのは女だ。わたしはエオウィン、エオムンドの娘だ。お前こそわたしの主君にして血縁である者とわたしの間に立って邪魔をしている。 …… 」
…… しかしかの女の秘密を守っていた兜は落ち、その輝く髪が、束縛から解き放たれて、薄い金色にきらめいて両肩にこぼれ落ちていました。海のような灰色を帯びた目はきびしく容赦がありませんでしたが、その頰には涙が流れていました。片手には剣を握り、もう一方の手には盾を持ち上げて恐ろしい敵の凝視に対していました。
…… ロヒアリムの乙女、王家の子の、細づくりながら鋼の刃のように、美しいが、凄絶なことよ。すばやい一撃を姫は加えました。熟練した致命的な一撃でした。((『王の帰還 上』「六 ペレンノール野の合戦」))

エオウィンは、魔王の乗る[[怪鳥>恐るべき獣]]の首を一刀のもとに切り落として魔王自身と対したが、魔王の放った黒い矛の一撃で盾を腕の骨ごと打ち砕かれてしまう。しかしエオウィンが自らの正体を明かしたことで、恐怖に打たれてうずくまっていたメリアドクが勇気を取り戻し、背後から魔王の膝の裏を[[塚山出土の剣]]で突き刺す。塚山出土の剣の一撃は魔王に致命的な打撃を与え、魔王の肉体を不滅にしていた呪魔を打ち破った。
エオウィンは最後の力をふりしぼって鉄の王冠と広い肩の間の何もない空洞に剣を突き刺して、魔王にとどめを刺す。かくして'''人間の男の手では討たれぬだろう'''('''not by the hand of man will he fall.''')((英語のmanは人間とも男とも解釈できることに由来する))と[[グロールフィンデル]]がかつて予言した魔王に滅びがもたらされ、エオウィンは偉大な勲を勝ち得た。

この時、魔王によって盾を持つ手である左腕を折られたため、後に「盾の腕の姫」と呼ばれるようになった。

*** ファラミアとの出会いと[[指輪戦争]]後 [#i5a0a65b]

エオウィンは魔王を剣で斃した時、魔王を刺す時に剣を使った右腕から[[黒の息]]に冒されて自らも倒れ、[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の[[療病院]]に運び込まれる。そこで[[アラゴルン二世]]の治療を受けて黒の息から癒され、西方の軍勢が[[黒門]]まで遠征していった間そこに留まっていた。だが彼女には、依然として戦いと死を願う心があり、希望を持てないでいた。
だが彼女は、同じく黒の息に冒されてアラゴルンに癒されていた[[ファラミア]]と知り合って愛されるようになる。そして[[指輪所持者]]の使命が達成された日、エオウィンはファラミアの愛を受け入れ、戦い以外にも望みを持てるようになって、心も癒された。

エオウィンはミナス・ティリスに留まって療病院の患者たちの看護に従事した後、[[コルマルレンの野>コルマルレン]]から帰還してきたアラゴルンら西方の軍勢たちをミナス・ティリスにて迎える。そして[[エレスサール王>アラゴルン二世]]の戴冠式に参列した後、[[エオメル]]と共に一時[[エドラス]]へ帰郷し、運ばれてきた[[セオデン]]の亡骸を迎えて葬儀に参列した。その後の追悼会で、エオメルの元に、エオウィンはファラミアとの婚約を発表する。

やがてファラミアと結婚したエオウィンは、共に[[イシリアン]]の[[エミン・アルネン]]に住まったという。

** 画像 [#l51f1e83]

&ref(アラゴルン二世/AlanLee-37-EowynAndAragorn.jpg,,25%,アラン・リー作画によるアラゴルンとエオウィン); &ref(eowynandnazgulbyjohnhowe.jpg,,25%,ジョン・ハウ作画による恐るべき獣と戦うエオウィン); &ref(eowynbyterashima.jpg,,30%,寺島龍一作画による恐るべき獣と戦うエオウィン);

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

|~俳優|[[ミランダ・オットー]]|
|~日本語吹き替え|[[本田貴子]]|
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『二つの塔』で初登場。[[角笛城の合戦]]の前には、非戦闘員と共に[[馬鍬砦]]ではなく[[燦光洞]]に避難した(メイキング映像では、燦光洞内でオークを相手に戦っているシーンもあるが、映画ではカットされている)。また[[エクステンデッド・エディション]]では、[[セオドレド]]の葬儀の歌を[[ローハン語]]で歌っている。ヘルム峡谷への移動の際、[[レンジャー(野伏)>野伏]]として粗末な料理に慣れているであろう[[アラゴルン二世]]をして苦渋の反応をさせるほどの料理の腕前を披露するシーンがあり、独自の性格付けがなされた。
『王の帰還』では、デルンヘルムの名は登場せず、メリーは最初から自分を馬に乗せた騎士の正体がエオウィンだと気がつく。また、魔王と対峙した時に正体を明かすタイミングが大きく異なっている。
[[ファラミア]]とのエピソードは省略されているが、アラゴルンの戴冠式・結婚式で、ファラミアとエオウィンが笑顔で並んでいる姿が登場する。また『王の帰還 [[エクステンデッド・エディション]]』では、エオウィンとファラミアが見つめ合うシーンが追加されており、その後の関係を示唆している。

** コメント [#Comment]

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