* ムマキル [#nfe72fc6]
#author("2024-01-27T00:08:32+09:00;2023-12-07T18:36:07+09:00","","")
* ムーマキル [#nfe72fc6]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[動物]]|
|~スペル|mûmakil((単数形ムーマク(mûmak)。ムマクの訳もあり))|
|~異訳|ムーマキル|
|~その他の呼び名|じゅう(Oliphaunt)、オリファント((映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』での表記。Oliphauntをそのまま音訳したもの))|
|~スペル|mûmakil|
|~異訳|ムマキル|
|~その他の呼び名|じゅう(oliphaunt)|

** 解説 [#Explanation]

[[ハラド]]に棲息する巨大な獣。現代の象に似たような動物と考えられるが、象よりも非常に大きい。[[ハラドリム]]はムマキルを調教し、背中に攻城櫓(war-tower)を乗せて、戦いに連れて行った。
単数形ムーマク(mûmak)。[[ハラド]]に棲息する巨大な獣。現代の象に似たような動物と思われるが、象よりもずっと大きい。[[ハラドリム]]はムーマキルを調教し、背中に櫓を乗せて、戦いに連れて行った。

>かれと同じものは今ではもう[[中つ国]]を歩いてはいません。この末の世にまだ生きているその同類の中に、わずかながらありし昔のかれの胴まわりと堂々たる姿の記憶が留められているに過ぎません。 …… その大きな脚ときたらまるで大木のよう、とてつもなく大きな耳は帆のように広がり、長い鼻は今にも打ってかかろうとする大蛇のように持ち上がっていました。小さな赤い目は怒り狂っています。角のような形をした上向いた牙は金の帯輪で巻かれ、ぽとぽとと血を滴らせていました。かれを飾っていた緋色と金色の飾りものもずたずたに切れて体の周りにはためいていました。攻城やぐらそのものと見える物の残骸が山のような背中にのっていました。猛り狂って森を通り過ぎる間につぶされてしまったのです。そしてかれの首の上の方に死に物狂いにまだしがみついている小さな人影と見えたのは――[[スワート人]]の中では大男ともいえる力ある戦士の体でした。((『[[指輪物語]] [[二つの塔]] 下』「四 香り草入り兎肉シチュー」))
>かれと同じものは今ではもう[[中つ国]]を歩いてはいません。この末の世にまだ生きているその同類の中に、わずかながらありし昔のかれの胴まわりと堂々たる姿の記憶が留められているに過ぎません。 … その大きな脚ときたらまるで大木のよう、とてつもなく大きな耳は帆のように広がり、長い鼻は今にも打ってかかろうとする大蛇のように持ち上がっていました。小さな赤い目は怒り狂っています。角のような形をした上向いた牙は金の帯輪で巻かれ、ぽとぽとと血を滴らせていました。かれを飾っていた緋色と金色の飾りものもずたずたに切れて体の周りにはためいていました。攻城やぐらそのものと見える物の残骸が山のような背中にのっていました。猛り狂って森を通り過ぎる間につぶされてしまったのです。そしてかれの首の上の方に死に物狂いにまだしがみついている小さな人影と見えたのは――[[スワート人]]の中では大男ともいえる力ある戦士の体でした。((『[[指輪物語]] [[二つの塔>指輪物語/二つの塔]]』「香り草入り兎肉シチュー」))

[[指輪戦争]]では、[[イシリアン]]で[[ファラミア]]の部隊が[[ハラドリム]]と戦ったときに現れる。また[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の包囲戦には多数のムマキルが投入され、攻城櫓(siege-tower)や機械装置などの牽引にも使われた。
[[ロヒアリム]]の[[馬]]はムマキルを怖れて近づこうとせず、[[エオメル]]達はハラドリムに苦戦を強いられた。また、[[モルソンド]]の[[ドゥイリン]]と[[デルフィン]]はムマキルの目を射抜こうとして踏み潰された。このようにムマキルは[[ゴンドール]]と[[ローハン]]の軍勢を苦しめたが、最終的には[[ペレンノール野の合戦]]で全滅した。
[[指輪戦争]]では、[[イシリエン]]で[[ファラミル]]の率いる[[野伏>イシリエンの野伏]]が[[ハラドリム]]と戦ったときに一頭のムーマクが現れる。また[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の包囲戦には多数のムーマキルが投入され、攻城櫓や機械装置などの牽引にも使われた。
[[ロヒルリム]]の[[馬]]はムーマキルを怖れて近づこうとせず、[[エーオメル]]達はハラドリムに苦戦を強いられた。また、[[黒根谷]]の[[ドゥイリン]]と[[デルフィン]]はムーマキルの目を射抜こうとして踏み潰された。このようにムーマキルは[[ゴンドール]]と[[ローハン]]の軍勢を苦しめたが、最終的には[[ペレンノール野の合戦]]で全滅した。

*** じゅう (Oliphaunt) [#w45ac049]

この動物の存在は[[ホビット]]の間にも伝承・おとぎ話として伝わっていたようで、かれらはこれを''じゅう''と呼び、[[サム>サムワイズ・ギャムジー]]がじゅうについての詩を歌っている。この詩は『[[トム・ボンバディルの冒険]]』にも「象」(Oliphaunt)の題で収録されている。
>「だけど、おらは[[太陽の国>ハラド]]にいる大きい人たちの話を聞いたことがある。おらたちはそいつらのことを[[スワート人>ハラドリム]]と呼んでいる。そいつらはじゅうに乗ってるって話だ、戦う時のことだよ。そいつらは家でも塔でもじゅうの背中に乗せちまうとよ。それからじゅうはお互いに岩や木を投げ合うと。」((『[[指輪物語]] [[二つの塔]]』「黒門不通」))

|~英語原文|~『[[指輪物語]]』での邦訳|
|Grey as a mouse, &br; Big as a house, &br; Nose like a snake, &br; I make the earth shake, &br; As I tramp through the grass; &br; Trees crack as I pass. &br; With horns in my mouth &br; I walk in the South, &br; Flapping big ears. &br; Beyond count of years &br; I stump round and round, &br; Never lie on the ground, &br; Not even to die. &br; Oliphaunt am I, &br; Biggest of all, &br; Huge, old, and tall. &br; If ever you'd met me &br; You wouldn't forget me. &br; If you never do, &br; You won't think I'm true; &br; But old Oliphaunt am I, &br; And I never lie.|&ruby(ねずみ){鼠};の灰色、 &br; 家の大きさ、 &br; 蛇のような鼻で &br; わしが草原ふめば &br; 大地はゆれるよ。 &br; わしが村を通れば、 &br; 木々が折れるよ。 &br; 口には&ruby(つの){角};、 &br; わしは南方に住み &br; 大耳をはためかす。 &br; 数えきれぬ昔から &br; わしはのそりと歩きまわり &br; 死ぬ時でさえ、 &br; 地面には寝ない。 &br; わしは、じゅうだ。 &br; この世の最大のもの、 &br; 堂々と、老いて、山のよう。 &br; 一度でもわしに出会ったら、 &br; 忘れようとも忘れられぬ。 &br; 一度も見なけりゃ &br; わしがいると思われぬ。 &br; だけど、わしは老いたじゅうだ。 &br; 嘘じゃないぞう。|
この動物の存在は[[ホビット庄]]にも伝承・おとぎ話として伝わっており、[[ホビット]]はこれを''じゅう''と呼び、[[サム>サムワイズ・ギャムジー]]が[[じゅうについての歌>じゅうの歌]]を歌っている。
サムは[[イシリエン]]で現実にじゅうを目にして感動したが、南方から連れて来られたじゅうは全て[[ペレンノール野の合戦]]で滅ぼされたと後に聞いてがっかりしている。

サムは[[イシリアン]]で現実にじゅうを目にして感動したが、南方から連れて来られたじゅうは全て[[ペレンノール野の合戦]]で滅ぼされたと後に聞いてがっかりしている。
なお英語のoliphauntとは象の古称。

なお英語のOliphauntとは象の古称で、しばしば象牙の角笛のことも指す。
*** 「ハラドのことば」 [#b9b0316c]

*** 名前について [#b9b0316c]
邦訳『[[追補編>指輪物語/追補編]]』の固有名詞便覧には「ムマク、ムーマキルはハラドのことばである。」とあるが、[[トールキン>ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン]]がそのように断言している記述は存在しない。ただし『[[The Peoples of Middle-earth>The History of Middle-earth/The Peoples of Middle-earth]]』に収録された草稿には以下の記述がある。

邦訳『[[追補編]]』の索引には「ムマク、ムマキルはハラドのことばである。」とあるが、そのように断言している記述は一切ない。ただし『[[The Peoples of Middle-Earth]]』によると、[[トールキン]]は『[[追補編]]』の執筆時に以下の記述を残している。
>Of the speech of Men of the East and allies of Sauron all that appears is múmak, a name of the great elephant of the Harad.&br;(東方の人間とサウロンの同盟者たちの言葉で登場するのはムーマクだけで、ハラドの大きな象の名前である。)

>Of the speech of Men of the East and allies of Sauron all that appears is mumak, a name of the great elephant of the Harad.&br;(東方の人間とサウロンの同盟者たちの言葉で登場するのはムマクだけで、ハラドの大きな象の名前である。)

*** 画像 [#hd4d0835]

&ref(AlanLee-30-TheOliphaunt.jpg,,25%,アラン・リー作画によるムーマク);

** [[Iron Crown Enterprises]]による設定 [#yfe0afe4]
[[ICE>Iron Crown Enterprises]]設定では、[[ムーマク]]の主は[[インドゥア]]という[[ナズグール]]の一人である。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

#amazon(B000B7E7M4)
Oliphauntは''オリファント''とそのまま音訳されている。
非常に巨大な獣として描かれている。現実の象と異なり、牙は三対六本。牙と牙の間に、敵をひっかけるための縄が張られていたり、足の周りに敵を近寄らせないためのスパイクがまかれたりしているなど、武装が強調されている。
怯える馬の表現が困難だったためかアクションを優先したためか、ロヒアリムの馬がムーマクを恐れる様子はない。
怯える[[馬]]の表現が困難だったためかアクションを優先したためか、[[ロヒルリム]]の馬がムーマキルを恐れる様子はない。

** [[Iron Crown Enterprises]]による設定 [#ICE]

豊かな自然が広がる[[ハラド]]の南半分の地域が主な生息地となっている。中には、そのまま「ムーマクの国」を意味するムーマカン(Mumakan)という名前の国もあり、ムーマキルを操るのに長けた[[ハラドリム]]が住んでいた。[[ナズグール]]の一人である[[インドゥア]]はかつてこの国の君主で、ムーマクの主とも呼ばれていた。

** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#LotRO]

ペレンノール野の合戦や、その直前のサウロンの軍勢が占拠している[[オスギリアス]]付近などに出現する。オープンフィールドで登場するものよりもさらに巨大な個体をボスとした戦闘もある。

&ref(ScreenShot00393.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるムーマク);

** ゲーム『[[シャドウ・オブ・モルドール]]』における設定 [#a425319b]
直接の登場はないが、同作にて紹介されている「[[グレートビースト>大きな獣]]」と呼ばれる大型動物がムーマキルの遠縁種であるという。同様の呼称をされる生物が、実写映画『王の帰還』の[[ペレンノール野の合戦]]にて見られたが、全く異なる種族である。

姿こそムーマキルと似ていないが、体高は10.7m弱になる(実写映画のオフィシャル・トランプカードに記載されていたムーマキルの体高と同じである)。戦争が近づくにつれて規模が拡大する暗黒軍において、運搬用に使役される動物達の中でも際立っている。また、突進すればトロールですら粉砕される程の攻撃力を持つので、武力としての使役もありえる。地響きを起こしながら進むので、追跡は簡単だが、この強力な生物をもしかしたら狩れるのかもしれないのは、グラウグかカラゴルの大群ぐらいだろうとされている。

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