#author("2023-11-23T19:37:53+09:00","","")
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* パランティール [#h290ec2e]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[物・品の名前]]|
|~スペル|Palantír((複数形はパランティーリ(Palantíri) ))|
|~異訳|パランティア、パランティーア|
|~その他の呼び名|見る石(Seeing Stones)、七つの石(Seven Stones)|

** 解説 [#Explanation]

[[クウェンヤ]]で「遠くから見張るもの」(Those that watch from afar)の意。
覗き込むと遠方を見ることができる暗い水晶球。互いに通信する機能を持ち、石を使う者同士は意思の疎通を図ることもできる。だが、石の使用者が自分の望むものを見るためには、強い意志の力が必要であった。

もともとは[[フェアノール]]の手による作品と言われ、[[第二紀]]末に[[トル・エレッセア]]の[[エルフ]]から[[ヌーメノール]]の[[節士派>節士]]へ贈られた。
ヌーメノールが没落して[[エレンディル]]、[[イシルドゥル]]、[[アナーリオン]]の父子が[[中つ国]]に漂着した時、かれらは''七つのパランティール''も携えていた。パランティールは北方王国[[アルノール]]([[エミュン・ベライド]]、[[アモン・スゥル]]、[[アンヌーミナス]])と南方王国[[ゴンドール]]([[ミナス・イシル]]、[[ミナス・アノール]]、[[オスギリアス]]、[[オルサンク]])に分散して配置されて、[[亡国の民の王国]]の連絡と警戒のために使われた((例えば[[第三紀]]1944年に[[アルセダイン]]の[[アルヴェドゥイ]]が[[ゴンドール]]の王位を要求した時には、両国の会談に用いられた。1973年の秋にアルセダインからゴンドールへ、迫り来る[[アングマール]]の脅威について伝えられたのが、指輪戦争以前における石の最後の使用であると考えられるという。))。

だが、[[第三紀]]にイシルの石が[[サウロン]]に奪われた後は、他のパランティールを覗くとサウロンの石に繫がってしまい、心を蝕まれてしまう危険性があった。そのためパランティールの存在を知る者であっても、あえてそれを覗こうとする者は長らく現れなかった。
さらに戦乱で多くの石が失われた結果、賢者達ですらパランティールの伝承を重視しなくなり、一部の者を除いて次第にその存在は忘れ去られていった。

だが[[指輪戦争]]において、機能する石が3つ現存していたことが明らかとなり、非常に重要な戦略的役割を果たした([[オルサンクの石>#Orthanc]]、[[アノールの石>#Anor]]、[[イシルの石>#Ithil]])。

*** 性質 [#Nature]

『[[終わらざりし物語]]』にはパランティールの性質や機能についての詳しい記述がある。

パランティールは、外見はなめらかな漆黒の水晶玉のようで、中心には赤々と燃える火があった。これは非常に堅固であり、人の手により破壊する方法は知られていない。大きさは石ごとに違いがあり、小さいものは直径1フィート(約30cm)ほどだが、大きいものは数人がかりでないと運べないほどだったという(後述する親石ほど大きい傾向があったらしい)。

その主要な機能は、''石同士の通信''である。石は互いに呼応する性質があり、相手の石の周囲の景色を映し出すことができた。石はいかなる場合でも音声を伝えることはできなかったが、石を用いた者は互いが望めばその思考を言葉や映像のような形で伝達することができた(([[イシルの石>#saed3d66]]を奪った[[サウロン]]はこれを悪用し、強制的に思考を伝達して相手を支配しようとした。))。石同士の通信は一対一でのみ可能であり、他の石がその通信に割り込んだり傍受したりすることは不可能だった。''親石''(Master Stone)としての機能を持つ石のみが、他の石同士の通信を傍受する機能を持っていた。
また石は、''空間的にも時間的にも遠方の事柄を映し出す''こともできた。とはいえそれが何を意味するものかはしばしば不明瞭だった。強い意志で働きかければ、ある程度望むものを映し出したり、映像を選択したり、拡大や集中といった操作が可能だったが、それは精神を疲労させ、後世の人間にはますます難しくなっていった(([[サウロン]]が[[イシルの石>#saed3d66]]を手に入れ悪用しはじめてからは、使用者は石の操作による疲労に加え、たえず自分の側に引き寄せて支配しようとするサウロンの意志とも戦わねばならず、大きく精神の健康を損ねることになった。))。

また石には、一度映し出した映像を記憶する機能もあったようで、ただ眺めているとそのような記憶映像をランダムに映し出すことがあったという。石は物理的な障壁(石の壁など)を透過して映像を映し出すことができるが、暗闇を照らして映し出すことはできなかった。従って、石の映像は暗闇や「覆い」によって遮蔽することができ、無用に映像を送ったり記憶したりすることがないよう、普段は覆いをかけて保管されていたという。
さらに一説によれば、特定の場所や物に'''覆い'''をかけてパランティールから見えないようにする方法もあったらしいが、後世には失われた奥義となった。

石は制作者によって、正当な持ち主、つまり[[エレンディル]]に連なる[[ドゥーネダイン]]の王統のものか、彼らから正当に許可を得た者にもっとも良く従うように調整されていた((そのため、[[サウロン]]や[[サルマン]]といった不当な使用者は、石を完全に制御することは難しかった。[[デネソール>デネソール二世]]や[[アラゴルン>アラゴルン二世]]が、石を通じてサウロンと互角以上に戦うことができたのはこのためである。))。王国の全盛期には、石には選任の管理者が置かれ、それが一定時間ごとにあるいは必要に応じて石を見分して、得られた情報を王に報告するようになっていた。

また一説によれば、石には決まった上下の「極」があり、それが正確に垂直になるよう設置しなければ機能しないようになっていたという。さらに多くの石には極に加え、東西南北の「方向」もあり、これも正確にそちらを向いていなければ機能しなかった。このため映像を見るときは石そのものを動かしてはならず、見る者の側が石の周囲を巡るようにして観察しなければならなかったという。
たとえば西方の事柄を映し出したければ、観察者は石の東側に立って石を眺めた。視線を巡らしたければ、観察者は石を挟んで見たい方位とは反対の方角へ移動すればよい。さらに石を上方から覗き込むようにして見れば、より遠くのものを見ることができた(ただしそうすると像は不鮮明になった)。

さらに一説によれば、それぞれの石には有効な通信範囲があったとも言われている。一般に、巨大な上位の石ほどより遠方を見ることができた。それ以外の下位の石は、おおよそ[[オルサンク]]から[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]までの距離ほどが有効で、それを越えると通信も映像も不安定になると考えられる([[イシルの石>#saed3d66]]の有効範囲はさらに狭かったという記述もあるが未詳)。

** 七つの見る石 [#SevenStones]

*** [[オスギリアス]]の石 (Stone of Osgiliath) [#Osgiliath]

七つの石の中心となる''親石''であり、これのみが傍受機能を持っていた。そのため[[ゴンドール]]の首都[[オスギリアス]]の[[星辰殿]]に配置されたが、[[第三紀]]1437年に[[同族の争い]]でオスギリアスが戦場となったとき、[[大河アンドゥイン>アンドゥイン]]に没して失われた。

*** [[イシル>ミナス・モルグル]]の石 (Ithil-stone) [#Ithil]

[[ミナス・イシル]]に置かれていたが、[[第三紀]]2002年にミナス・イシルが[[ナズグール]]に占領されて[[ミナス・モルグル]]と化した時に敵に奪われる。やがて[[サウロン]]が使用するようになり、その戦略の一端としてオルサンクの石およびアノールの石を捕捉するために主に用いられた。
これを使ってサウロンは[[サルマン]]を堕落させて[[アイゼンガルド]]の戦力を動かし、また[[デネソール二世]]の精神を蝕んで[[ペレンノール野の合戦]]で同士討ちを生ぜせしめた。最終的に[[大いなる年]]の[[バラド=ドゥール]]の崩壊によって失われたと思われる。

*** [[アノール>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の石 (Anor-stone) [#Anor]

[[ミナス・アノール(後のミナス・ティリス)>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の[[白の塔]]に置かれていた。
戦乱の中でも無事だったが、この石と結び付きの強いイシルの石が[[サウロン]]に奪われると、使われることはなくなり、やがてその存在は[[執政]]にのみ代々伝えられる秘密となった。だが[[デネソール二世]]は密かにこれを使って、サウロンの意志に抵抗しながら国の内外について多くの知識を得ると同時に、消耗して次第に精神を蝕まれていった。
オルサンクの石の存在が明らかになった時[[ガンダルフ]]は、喪失したという記録のないアノールの石もまた現存しているに違いないと思い至り、デネソールと[[モルドール]]の繫がりを危惧して急ぎミナス・ティリスへ向かうことを決めた。
最後には、石を通してミナス・ティリスに迫るモルドールの軍勢を見たデネソールは絶望して狂気に陥り、[[執政家の廟所>ラス・ディーネン]]で石を持ったまま焼身自殺した。以後は強力な意志の持ち主以外は、この石を覗いても火の中でしなびゆく老人の二本の手しか見ることができなくなったという。

*** [[オルサンク]]の石 (Stone of Orthanc) [#Orthanc]

[[アイゼンガルド]]の[[オルサンク]]の塔に置かれていた。
[[ゴンドール]]がオルサンクを放棄して以後忘れ去られたが、[[サルマン]]はゴンドールで伝承を調査する内にこの石の存在と使い方を知ったらしく、彼がオルサンクの管理権を得たときに実際に発見された。長い間、サルマンはあえてそれを使用しようとはしなかったようだが、[[第三紀]]3000年頃にとうとう使用し、イシルの石を持つ[[サウロン]]に捕捉されて毒されることになった。サルマンは定期的に石を通じた報告を行うことを強いられたが、表向きは恭順したふりをしつつ、内心ではサウロンを出し抜こうと目論んでいた。

[[指輪戦争]]において[[アイゼンガルド]]と[[モルドール]]は石を通じて連絡し、[[パルス・ガレン]]において共同で[[指輪の仲間]]を襲撃するなど連携した行動を取った。だが[[アイゼンガルド]]の敗北後、[[グリーマ]]はガンダルフとサルマンのいずれかに向かってこの石を投げ落とすが逸れて地面に落ち、[[ペレグリン・トゥック]]が石を拾い上げた。このときにはこの石がパランティールだとは気づかれなかった。
その後ペレグリンは衝動に駆られ、[[ドル・バラン]]でこの石を覗き込み、[[サウロン]]に自分の姿をさらしてしまう。サウロンは長時間ペレグリンを尋問しなかったため、[[フロド>フロド・バギンズ]]や[[一つの指輪]]についての情報が漏れることはなかったが、この事件がきっかけで、石がパランティールであることが判明し、アイゼンガルドとモルドールの連携の理由も明らかとなる。すると[[ガンダルフ]]は、([[エレンディル]]の正統な王位継承者としてパランティールの正当な所持者である)[[アラゴルン二世]]にこの石を渡す。
後にアラゴルンは、[[角笛城]]を出発する前にこの石を使い、サウロンに自分の姿と[[アンドゥーリル]]を見せつけて挑戦。そうすることによって、サウロンの目を[[モルドール]]国内(つまり[[指輪所持者]]である[[フロド・バギンズ]])から逸らさせようとした。またその時同時にアラゴルンは石の力で、[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]に対し[[海賊]]による南方からの攻撃が迫っていることを知った。これが、アラゴルンが[[死者の道]]を通り、[[死者の軍勢]]を招集することを決意するきっかけのひとつとなる。またこの一連の経緯は、アラゴルンが[[一つの指輪]]を手に入れたのではないかという印象をサウロンに与えることになった。

[[指輪戦争]]の終結後は、この石が西方に残された唯一の機能する石となった。[[再統一された王国]]の王となったアラゴルンは、この石を国内の観察に用いるものとした。

*** [[アモン・スゥル]]の石 (Stone of Amon Sûl) [#Sul]

[[風見が丘]]のアモン・スゥルの塔に置かれていた。この石はオスギリアスの石と並んで最も力が強く、[[ゴンドール]]との連絡には主にこの石が使われた為、北方のパランティールの要と見なされた。
そのため[[アルノール]]が[[アルセダイン]]、[[カルドラン]]、[[リュダウル]]の三国に分裂すると、この石の帰属をめぐって三国間で争いが起こった。[[第三紀]]1409年に[[アングマール]]の攻撃によってアモン・スゥルの塔は破壊されたが、パランティールは戦火を逃れてアルセダインの首都[[フォルンオスト]]に避難させられた。
だが1975年、[[北方王国]]最後の王[[アルヴェドゥイ]]の乗った船が[[フォロヒェル湾>フォロヒェル]]で難破したとき、アンヌーミナスの石と共に海中に没した。

*** [[アンヌーミナス]]の石 (Stone of Annúminas) [#Annuminas]

[[アルノール]]の首都[[アンヌーミナス]]に置かれ、アルノール王によって用いられた。[[第三紀]]1409年に[[アングマール]]がアルノールを席巻した際に、アモン・スゥルの石と同じく[[フォルンオスト]]へ避難させられた。
上記のように、アモン・スゥルの石と共に[[フォロヒェル湾>フォロヒェル]]に没して失われた。

*** [[エレンディル]]の石 (Elendil Stone) [#Elendil]

[[エミュン・ベライド(塔山丘陵)>塔山丘陵]]の[[エロスティリオン]]の塔に置かれていた。この石は他の石とは違い、[[西方の海>大海]]の彼方だけを見ることができたという。
[[エレンディル]]はこの石を使って失われた[[ヌーメノール]]を偲び、また[[トル・エレッセア]]の[[アヴァッローネ]]の塔を見ることさえあったという(そこには全てのパランティールの親石が置かれていると言われていた)。
塔とこの石は[[キールダン]]と[[リンドン]]の[[エルフ]]によって管理されており、[[中つ国]]に残っていた[[上のエルフ]]も、時折この石を使って[[アマン]]を見たという。
[[第三紀]]3021年、[[三つの指輪の守護者]]と[[指輪所持者]]たちがアマンへ去る時、キールダンは彼らの乗る船にこの石も乗せた。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

[[ミナス・ティリスの石>#l67a1598]]は登場しない。
『ロード・オブ・ザ・リング(旅の仲間)』において、サルマンは自分が持っている[[オルサンクの石>#l76404ac]]を直接ガンダルフに見せ、ガンダルフを引き込もうとしている。
『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 [[エクステンデッド・エディション]]』に於いて[[アラゴルン>アラゴルン二世]]は、[[オルサンクの石>#l76404ac]]を[[ミナス・ティリス>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]で使用し、[[サウロン]]に自分の姿を見せる。
サウロンがパランティールのうちのひとつを手に入れている経緯は描かれていない。

*** 画像 [#r372d634]

&ref(vlcsnap-00005.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるパランティール); &ref(アンドゥーリル/AragornandAnduril.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるアンドゥーリルとパランティール); &ref(vlcsnap-00084.jpg,,25%,『ロード・オブ・ザ・リング』におけるパランティール);

*** グッズ [#e229984f]

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** ドラマシリーズ『[[ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪]]』における設定 [#RoP]

パランティールのうちひとつが[[ヌーメノール]]に保管されているが、他の6つは失われたと[[ミーリエル>ミーリエル(タル=パランティルの娘)]]が語っている(原作設定では、7つのパランティールは皆[[節士派>節士]]が保持し、中つ国にもたらされた)。
ヌーメノールが滅亡する光景を映し出している。

** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#LotRO]

[[オスギリアスの石>#sc2c7cc1]]は敵の手に奪われており、[[アングマール]]の[[モルディリス]]によって使用されている。
冒険者が、デネソールの使っていた石で何を見たのかを体験する場面がある。
冒険者のクラスによっては冒険者がサルマンに囚われたとき、パランティールを使った尋問を受ける場面がある。

*** 画像 [#ib299251]

&ref(サルマン/ScreenShot00497.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるサルマンと、オルサンクのパランティール); &ref(デネソール二世/ScreenShot00400.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』におけるデネソールとパランティール); 

** コメント [#Comment]

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