#author("2016-11-16T22:01:41+09:00","","")
* &ruby(やみ){闇};の&ruby(もり){森}; [#k3c86c70]
#contents
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[地名]]|
|~スペル|Mirkwood|
|~その他の呼び名|タウア エ=ンダイデロス(Taur e-Ndaedelos)((『[[終わらざりし物語]]』では「タウア=エ=ンダイデロス」(Taur-e-Ndaedelos)と表記))&br;エリン・ガレン(Eryn Galen)&br;&ruby(みどりもりだいしんりん){緑森大森林};(Greenwood the Great)&br;エリン・ラスガレン(Eryn Lasgalen)&br;&ruby(みどりば){緑葉};の&ruby(もり){森};(Wood of Greenleaves)&br;タウア=ヌ=フイン(Taur-nu-Fuin)(([[ベレリアンド]]の[[ドルソニオン]]の別名だが、『[[終わらざりし物語]]』では闇の森のエルフ語名としても言及される。だが『[[追補編]]』では、闇の森のエルフ語名は「タウア エ=ンダイデロス」とされている))|

** 解説 [#Explanation]

>明るくなったばかりのころ、ゆくてにあたって、黒々としたいかめしい城壁のような森が、待っていたぞというかのように立ちあらわれました。大地はしだいにゆるくのぼりはじめ、ホビットにとっては、無言のいかめしさが、一同の上にかぶさりはじめたような気がしました。鳥は、はたとうたわなくなりました。シカはいず、ウサギさえも見かけません。ひるすぎになって、やみの森の外がわにたどりつき、そそり立つ木々の張りだした枝の下にすわって、一休みしました。それらの幹はまことに大きく、こぶこぶだらけで、枝はねじくれ、葉は黒くてだらりとしています。ツタカズラが木々の上にまつわって、地上にさがっています。 &br; 「さて、ここが、やみの森じゃ!」と、ガンダルフがいいました。「北のくにの森のうちでは、いちばんに大きな森じゃ。」((『[[ホビットの冒険]]』「7 ふしぎな宿り」))

[[ロヴァニオン]]北方、[[アンドゥイン]]の東岸に広がる大森林。
かつてここは''緑森大森林''と呼ばれる非常に古い森林であったが、[[第三紀]]に[[死人占い師]]の影響によって影が落ち、恐ろしく危険な場所に変わってしまったことで''闇の森''と呼ばれるようになった。
北東部のはずれには[[シルヴァン・エルフ>シルヴァン]]の国があり、西の外れは[[ビヨルンの一党>ビヨルン一党]]が支配し[[森人]]が住んでいる。

木々の密集した森の中は重苦しい暗闇に覆われており、得体の知れない様々な生物の気配で満ち、巨大な[[蜘蛛]]の巣が張り巡らされている。陽が落ちると鼻先にかざした自分の手すら見えないほどの真の暗闇となり、蛾の大群をはじめとした夜の生物を呼び寄せるために火を焚くことすらままならない。
食糧になるものもほとんどなく、森の動物は肉まで黒くとても食べられたものではなかった。北部の中ほどには[[魔の川]]が流れているが、この川の水は飲んだり浴びたりすると眠気に襲われて物事を忘れしまうため、飲用には適さない。
ひとたび道を外れでもすれば生きて帰れる望みはないが、かつて使われていた森を東西に横切る[[古森街道]]は荒れ果てて使えなくなっており、それとは別に北に[[エルフ]]たちの使う小道があるが、そこすら安全ではなかった。しかし北東部のシルヴァン・エルフの国の近くでは、暗闇と危険はいくらか鳴りを潜める。

*** 歴史 [#jcb98c61]

かつてこの森林は[[シンダール語]]で''エリン・ガレン''、[[共通語]]で「緑森大森林」と呼ばれていた。
[[星々の時代]]に[[エルフ]]が[[西方>アマン]]へ向けて旅をしていた時、既にここには森が広がっており、[[霧ふり山脈]]に阻まれて足を止めた[[テレリ]]の一団はこれら[[アンドゥイン]]の谷間の森一帯に広がり、[[シルヴァン・エルフ]]と呼ばれるまばらな民となった。[[第二紀]]以後、緑森大森林には[[シンダール]]の公子達によって統治されるようになったシルヴァンの王国があった(詳細は[[後述>#Realm]])。

しかし[[第三紀]]1050年頃から緑森に影が兆すようになり、1100年には森の南端アモン・ランクに[[死人占い師]]の拠点[[ドル・グルドゥア]]が設けられていることが判明する。死人占い師の投げかける恐怖の影は断続的に森に広がっていき、やがてエルフがいる地域以外は、巨大な[[蜘蛛]]([[シェロブ]]の末裔)をはじめとした邪悪なものが徘徊し、昼でも太陽の光がほとんど差さず、川の水すら真っ黒な恐ろしい場所となってしまった。このため森林は[[シンダール語]]で「大いなる恐怖の森」(Forest of the Great Fear)の意である''タウア エ=ンダイデロス''、共通語で「闇の森」の名で呼ばれるようになる。

当時、緑森の周辺には[[北方の自由の民]]が住み着きつつあり、東側の[[早瀬川]]流域では[[北国人]]による長年の伐採で[[東入地]]が形成されるなどしていたが、やがて[[東夷]]との相次ぐ戦乱と広がる[[死人占い師]]の影のために[[人間]]の勢力も次第に北へと追いやられていった。

[[第三紀]]末(2941年頃)にはほとんど全体が暗闇に覆われており、森を東西に抜ける[[古森街道]]も荒廃して使用不能になっていた。[[エレボール]]遠征の途上、[[トーリン二世]]率いる[[13人のドワーフ>トーリンとその仲間]]と[[ビルボ・バギンズ]]の一行は闇の森を通過するため北にある[[エルフ]]の古道を使用したところ、[[蜘蛛]]に襲われている(『[[ホビットの冒険]]』)。
同年、[[白の会議]]の攻撃によって死人占い師は要塞を捨てて逃亡し、森も健やかな場所に戻ると思われた。
だが2951年、彼は[[モルドール]]で[[サウロン]]として公然と名乗りを上げ、逃亡は見せかけであったことが明らかとなる。サウロンは[[ナズグール]]を派遣してドル・グルドゥアを再占領し、そのため闇の森は依然として忌まわしい場所であり続けた。

[[指輪戦争]]によって[[ドル・グルドゥア]]が完全に破壊されたことで、ようやく闇の森の影は取り除かれた。
[[3019年>大いなる年]]4月6日に森の中央で会見した[[スランドゥイル]]と[[ケレボルン]]により、闇の森は「緑葉の森」を意味する''エリン・ラスガレン''と改名される。[[闇の森山脈]]より北部は[[スランドゥイル]]の領土に、[[狭隘部(東入地)>東入地]]より南部は東ローリエン(East Lórien)として[[ケレボルン]]の領土に、その間は[[ビヨルン一党]]と[[森人]]の土地として分割された。
エリン・ラスガレンには[[第四紀]]に入っても、[[シルヴァン・エルフ]]たちが落ち着いて暮らしていたという。

** シルヴァン・エルフの国 [#Realm]

>あの魔の川から四日たったころ、一同は、ほとんどブナの木ばかりしげっている場所にでました。はじめのうちは、このかわり方に声をたててよろこびました。それは、びっしり茂る下草がなく、くらがりがひどくなかったからで、あたりには緑色のほの明るさがただよい、道の両がわがかなり遠くまで見とおせるところが、ほうぼうにありました。明るいといっても、とほうもなく大きなたそがれの広間のなかに立ちならぶ柱の列のように、黒っぽい幹が限りなく列をつくっているのが見えるだけです。でも空気には動きがあり、風の音もします。もっともそれはかなしげな音でした。木の葉がひらひらまいおちてきて、森のそとには秋が来ていることを思い知らせました。いままでのかぞえきれない秋ごとに、森の中に落ちてはつもったかぎりない落葉が、ぶあつく赤いじゅうたんとなっていますが、ふきよせられて道の上にもふかくつもったその落葉を、一同はかさかさけちらして歩きました。((同上「8 ハエとクモ」))

闇の森の北東部にあり、『[[指輪物語]]』では''森の王国(Woodland Realm)''とも呼ばれている。

『[[終わらざりし物語]]』によると[[第二紀]]以後、[[ロヴァニオン]]の[[シルヴァン・エルフ>シルヴァン]]は[[ベレリアンド]]崩壊を逃れてきた[[シンダール]]の公子達を統治者として受け入れる。そうした公子の一人[[オロフェア]]は、[[アンドゥイン]]以東一帯の王として認められていた。
かれらは[[最後の同盟]]に参加して[[サウロン]]を敵として戦ったが、独立心が強く[[ギル=ガラド]]の最高指揮権を認めなかったことと、装備が軽装であったことから必要以上の損害を蒙り、大軍であったにも関わらず森林へ帰還した時にはその数はもとの三分の一にまで減少していたという。(とはいえ後に[[あやめ野]]で[[イシルドゥア]]を襲撃することになる[[オーク]]の伏兵部隊が攻撃をさし控えるほどには依然として強力だった)

オロフェアが最後の同盟の戦いで戦死したため、その息子の[[スランドゥイル]]が[[第三紀]]を通じての王であった。
だが第三紀の[[中つ国]]は着実に[[人間]]の住む世界へと変化していき、森のエルフはそれを感じ取って不安に満たされるようになる。森林の周囲に[[北方の自由の民]]が増えていくにつれ、かれらは'''まえよりますます多く、うす暗がりとたそがれにかくれ住むようになり'''((同上))、[[人間]]や[[ドワーフ]]や闇の勢力の拡大にともなって王国は北東部へと後退していった。
王国の中心は第二紀のはじめ、ローリエンの対岸に位置する[[アモン・ランク>ドル・グルドゥア]]にあったが、第二紀末には北の[[エミン・ドゥイア(闇の森山脈)>闇の森山脈]]に移り、[[第三紀]]には森の北東のはずれにある[[森の川]]に面した岩屋である王の宮殿に移っていた。(これはオロフェアおよびスランドゥイルが、[[ローリエン>ロスローリエン]]の[[ケレボルン]]と[[ガラドリエル]]の勢力を嫌ったことも一因であったらしい)。

森のエルフたちは地上や木の上に家や小屋を建て(特にブナの木を好んだという)、森の中で狩りをしたり、森の外にある草地へ仕事に出かけるなどして生活していた。
[[森の川]]を使って[[エスガロス]]の[[人間]]たちとの交易も行っていた。[[古森街道]]が使えなくなってからはこの川だけが森の東西を横切る唯一の安全な通路となったため、森の王国はエスガロスから川の通行料を徴収していた。両者は日頃は商売上の取引をめぐって揉めることも多かったようだが、[[エスガロス]]が[[スマウグ]]の襲撃で潰滅したことを知るといち早く救援に赴くなど、基本的には良好な関係を築いていたようである。([[五軍の合戦]])

[[指輪戦争]]では森の王国も[[ドル・グルドゥア]]からの攻撃を受け、火によって森林に大きな被害が出たが、スランドゥイルは最後には攻撃を撃退した(''闇の森樹下の合戦'')。指輪戦争が終結するとスランドゥイルは闇の森の真ん中で[[ケレボルン]]と会見し、闇の森をエリン・ラスガレンに改名するとともに、[[闇の森山脈]]以北の森を自らの王国とした。
[[第四紀]]になっても森のエルフはエリン・ラスガレンで暮らしていたようだが、スランドゥイルの息子の[[レゴラス]]に率いられてその一部は[[イシリアン]]に移住しそこを美しく豊かにしたという。

*** エルフ王の岩屋 [#Halls]

闇の森の北東部の外れ、[[森の川]]の北側にある丘陵に穿たれた[[スランドゥイル]]の宮殿であり砦。『[[終わらざりし物語]]』によると、この地下宮殿の様式は[[ドリアス]]の[[メネグロス]]に倣ったものであるらしい。
川にかけられた橋を渡った丘の斜面に入口があり、その大扉は魔法によって自在に開閉するようになっている。明かりの灯った幾つもの枝分かれした洞窟通路が地下に広がり、自然石を刻み残した列柱のある王の大広間や、宝物庫、土牢などにつながっている。

宮殿のさらに地下には[[灰色山脈]]から小川が流れこんでおり、これは東の斜面から流れ出て[[森の川]]に注いでいる。森のエルフたちはこの川を[[エスガロス]]との物流に使っており、この小川の真上にあたる部分は[[ドルイニオン]]からの酒樽などを貯蔵する穴倉になっている。穴倉からは落とし戸を上げることで、樽をそのまま小川に投げ落とし、下流の集積場まで流していけるようになっていた。

『[[ホビットの冒険]]』において、森で迷っていたところエルフに捕らえられた[[13人のドワーフ>トーリンとその仲間]]は、旅の目的を話そうとしなかったため、スランドゥイルによって土牢に監禁された。一方[[ビルボ・バギンズ]]は捕らえられる前に、[[魔法の指輪>一つの指輪]]を使って姿を隠し、エルフの食べ物を盗み食いして食を繋ぎながら((その償いとしてビルボは[[五軍の合戦]]後、スランドゥイルに[[真珠の首飾]]を贈っている。))、1~2週間岩屋内を探検しつつ機会をうかがっていた。そして[[ガリオン]]たちが酔いつぶれた隙に牢屋の鍵を盗んで、ドワーフたちを解放。彼らを空の樽に入れて小川に流し、脱出させた。

*** 画像 [#l6fecb59]

&ref(ElvenkingsGate.jpg,,20%,トールキン直筆による、スランドゥイルの宮殿の入り口);

** 映画『[[ホビット>ホビット(映画)]]』における設定 [#Hobbitmovie]

原作の通り、[[ビルボ・バギンズ]]や[[ドワーフ]]たちが闇の森で迷う描写はあるものの、森の中で宴会をしているエルフたちの元に行こうとするがたどり着けない場面など、民話的な雰囲気の描写はカットされ、代わりに[[蜘蛛]]に襲われたビルボ達一行が、蜘蛛狩りをしていたエルフの警備隊に捕らえられるという、アクションを重視した描写に変更されている。また、川を樽で流されるドワーフたちやエルフの守備隊が、[[ボルグ]]ら[[オーク]]に襲撃されるシーンも追加されている。ドワーフが牢に捕らえられている期間は大幅に短縮され、1日に満たないと思われる。

各シーンには、『ホビットの冒険』では存在が言及されていない[[レゴラス]]や、完全オリジナルキャラクターの[[タウリエル]]といったエルフが出演するシーンが追加されている。
[[エルロンド]]の治める[[ノルドール]]には黒髪、[[ケレボルン]]と[[ガラドリエル]]の治める[[ロリアン]]のエルフには金髪・銀髪が多いのに対し、タウリエルなど闇の森に登場するエルフの多くは茶髪や赤毛である。
また、鮮やかな服を纏い、薄い金属板を重ね合わせた鎧で武装するノルドールに対し、衣服が緑と茶色でほぼ統一され、広葉を模した金属片を綴った武具など、多くの点で他氏族との差別化が図られている。

トーリンたちがエルフに捕らえられたとき、ちょうどエルフの宮殿で星の光の祭り[[メレス・エンギリス]]が行われており、そのため葡萄酒が用意されていた。ドワーフたちの脱出場面では、原作に登場する[[ガリオン]]のほか、牢屋番のエルフに[[エルロス>エルロス(闇の森)]]という名がつけられて登場している。

** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#Lotro]

ドル・グルドゥア西部に、ドル・グルドゥアを監視・偵察するための、[[ロスローリエン]]の[[エルフ]]による拠点が複数存在する。
かつて[[人間]]が住んでいたが、廃墟となって亡霊の巣窟となっている場所もある。

2015年段階で実装されているのは南部のみであり、シルヴァン・エルフの国を含む闇の森北部は未実装。

&ref(ScreenShot00108.jpg,,10%,『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』における闇の森の、エルフの拠点となっている廃墟から眺めた光景); &ref(37a14facd49c3dcd968f8f2831e6edcc.jpg,,12%);

** コメント [#Comment]

#pcomment(,,noname,,,,reply)