* パランティーア [#h290ec2e]
** 概要 [#Summary]

|~カテゴリー|[[物・品の名前]]|
|~スペル|Palantír((複数形パランティーリ(Palantíri) ))|
|~異訳|パランティア|
|~その他の呼び名|七つの石(Seven stones)、見る石、遠見の水晶球|
|~その他の呼び名|七つの石(Seven Stones)、見る石(Seeing Stones)、遠見の水晶球|

** 解説 [#Explanation]

「遠くを見るもの」の意。見る石、遠見の水晶球などと呼ばれる。
[[フェアノール]]の作によるとされる、覗き込むと遠方を見ることができる丸い石。パランティーアは互いに通信する機能を持ち、石を使う者同士は、意思の疎通を図ることもできる。だが、石の使用者が自分の望むものを見るためには、強い意志の力が必要とされる。

>水晶のように透明な暗い球で、中心は火と燃えていました。((『[[指輪物語]] [[二つの塔]] 下』「十 サルマンの声」))

石は全部で七つあり、[[ヌーメノール]]の没落以前に、[[トル・エレッセア]]の[[エルフ]]から[[ドゥネダイン]]に贈り物として与えられた。
ヌーメノールが没落したとき、[[エレンディル]]達は[[中つ国]]に漂流したが、その時にこの七つのパランティーアも持っていた。パランティーアはエレンディル、[[イシルドゥア]]、[[アナーリオン]]によって分割され、[[アルノール]]([[エミン・ベライド]]、[[アモン・スール]]、[[アンヌーミナス]])と[[ゴンドール]]([[ミナス・イシル]]、[[ミナス・アノール]]、[[オスギリアス]]、[[オルサンク]])に配置されて、国の連絡と警戒のために使われた。

だが、[[第三紀]]にイシルの石が[[サウロン]]によって奪われた後は、他のパランティーアを覗くとサウロンの石に繫がってしまい、心を蝕まれてしまう危険性があった。そのためパランティーアの存在を知る者であっても、あえてそれを覗こうとする者は長らく現れなかった。
さらに戦乱で多くの石が失われた結果、賢者達ですらパランティーアに関する伝承を重視しなくなり、一部の者を除いて次第にその存在は忘れ去られていった。

だが[[指輪戦争]]において、機能する石が三つ現存していたことが明らかとなり、非常に重要な戦略的役割を果たした([[オルサンクの石>パランティーア#l76404ac]]、[[アノールの石>パランティーア#l67a1598]]、[[イシルの石>パランティーア#saed3d66]])。

***性質 [#w361c337]

『[[終わらざりし物語]]』にはパランティーアの性質や機能についての詳しい記述がある。

パランティーアは、外見はなめらかな漆黒の水晶玉のようで、中心には赤々と燃える光があった。これは非常に堅固であり、人の手により破壊する方法は知られていない。大きさは石ごとに違いがあり、小さいものは直径1フィート(約30cm)ほど、大きいものは数人がかりでないと運べないほどだったという。(後述する親石ほど大きい傾向があったらしい)

その主要な機能は、石同士の通信である。石は互いに呼応する性質があり、相手の石の周囲の景色を映し出すことができた。石はいかなる場合でも音声を伝えることはできなかったが、石を用いた者は互いが望めばその思考を言葉や映像のような形で伝達することができた((イシルの石を奪ったサウロンはこれを悪用し、強制的に思考を伝達して相手を支配しようとした。))。石同士の通信は一対一でのみ可能であり、他の石がその通信に割り込んだり傍受したりすることは不可能だった。''親石''としての機能を持つ石のみが、他の石同士の通信を傍受する機能を持っていた。
また石は、空間的にも時間的にも遠方の事柄を映し出すこともできた。とはいえそれが何を意味するものかはしばしば不明瞭だった。強い意志で働きかければ、ある程度望むものを映し出したり、映像を選択したり、拡大や集中といった操作が可能だったが、それは精神を疲労させ、後世の人間にはますます難しくなっていった((サウロンがイシルの石を手に入れ悪用しはじめてからは、使用者は石の操作による疲労に加え、たえず自分の側に引き寄せて支配しようとするサウロンの意志とも戦わねばならず、大きく精神の健康を損ねることになった。))。

また石には、一度映し出した映像を記憶する機能もあったようで、ただ眺めているとそのような記憶映像をランダムに映し出すことがあったという。石は物理的な障壁(石の壁など)を透過して映像を映し出すことができるが、暗闇を照らして映し出すことはできなかった。従って、石の映像は暗闇や「覆い」によって遮蔽することができ、無用に映像を送ったり記憶したりすることがないよう、普段は覆いをかけて保管されていたという。
さらに一説によれば、特定の場所や物に'''覆い'''をかけてパランティーアから見えないようにする方法もあったらしいが、後世には失われた奥義となった。

石は制作者によって、正当な持ち主、つまりエレンディルに連なるドゥネダインの王統のものか、彼らから正当に許可を得た者にもっとも良く従うように調整されていた((そのため、サウロンやサルマンといった不当な使用者は、石を完全に制御することは難しかった。デネソールやアラゴルンが、石を通じてサウロンと互角以上に戦うことができたのはこのためである。))。王国の全盛期には、石には選任の管理者が置かれ、それが一定時間ごとにあるいは必要に応じて石を見分して、得られた情報を王に報告するようになっていた。

また一説によれば、石には決まった上下の「極」があり、それが正確に垂直になるよう設置しなければ機能しないようになっていたという。さらに多くの石には極に加え、東西南北の「方向」もあり、これも正確にそちらを向いていなければ機能しなかった。このため映像を見るときは石そのものを動かしてはならず、見る者の側が石の周囲を巡るようにして観察しなければならなかったという。
たとえば西方の事柄を映し出したければ、観察者は石の東側に立って石を眺めた。視線を巡らしたければ、観察者は石を挟んで見たい方位とは反対の方角へ移動すればよい。さらに石を上方から覗き込むようにして見れば、より遠くのものを見ることができた。(ただしそうすると像は不鮮明になった)

さらに一説によれば、それぞれの石には有効な通信範囲があったとも言われている。一般に、巨大な上位の石ほどより遠方を見ることができた。それ以外の下位の石は、おおよそオルサンクからミナス・ティリスまでの距離ほどが有効で、それを越えると通信も映像も不安定になると考えられる。(イシルの石の有効範囲はさらに狭かったという記述もあるが未詳)

*** [[オスギリアス]]の石 [#sc2c7cc1]

7つの石の中で中心となる親石であり、これのみが傍受機能を持っていた。そのためゴンドールの首都[[オスギリアス]]の[[星辰殿]]に配置されたが、オスギリアスが[[エルダカール>エルダカール(ヴァラカールの息子)]]と[[カスタミア]]の戦闘の戦場となったとき、[[大河アンドゥイン>アンドゥイン]]に失われた。

*** [[ミナス・イシル>ミナス・モルグル]]の石 [#saed3d66]

[[モルドール]]にサウロンと[[ナズグール]]が帰還したときに、サウロンに奪われる。以後サウロンが使用するようになり、その戦略の一端としてオルサンクの石およびアノールの石を捕捉するのに主に用いられた。
最終的にサウロンの消滅による[[バラド=ドゥーア]]の崩壊によって廃墟の中に失われたと思われる。

*** [[ミナス・アノール(ミナス・ティリス)>ミナス・ティリス(ゴンドール)]]の石 [#l67a1598]

戦乱の中でも無事だったが、この石と結び付きの強いミナス・イシルの石がサウロンに奪われると、使われることはなくなり、やがてその存在は[[執政]]家にのみ代々伝えられる秘密となった。だが[[デネソール二世]]は密かにこれを使って、サウロンの意志に抵抗しながら国の内外について多くの知識を得ると同時に、消耗して次第に精神をむしばまれていった。
オルサンクの石の存在が明らかになった時、[[ガンダルフ]]は喪失したという歴史のないアノールの石もまた現存しているに違いないと思い至り、デネソールとモルドールの繫がりを危惧して急ぎミナス・ティリスへ向かうことを決めた。
最後には、石を通してミナス・ティリスに迫るモルドールの軍勢を見たデネソールは絶望して狂気に陥り、石を持ったまま焼身自殺する。以後は強力な意志の持ち主以外は、この石を覗いてもしなびた老人の手しか見ることはできなくなったという。

*** [[オルサンク]]の石 [#l76404ac]

[[オルサンク]]をゴンドールが放棄して以後忘れ去られる。[[サルマン]]はゴンドールで伝承を調査する内にこの石の存在と使い方を知ったらしく、彼がオルサンクの管理権を得たときに実際に発見された。長い間、サルマンはあえてそれを使用しようとはしなかったようだが、3000年頃にとうとう使用し、イシルの石を持つサウロンに捕捉されて毒されることになった。サルマンは定期的に石を通じた報告を行うことを強いられたが、表向きは恭順したふりをしつつ、内心ではサウロンを出し抜こうと目論んでいた。
[[指輪戦争]]においてアイゼンガルドとモルドールは石を通じて連絡し、[[パルス・ガレン]]において共同で[[指輪の仲間]]を襲撃するなど連携した行動を取った。だが[[アイゼンガルド]]の敗北後、[[グリマ]]はガンダルフとサルマンのいずれかに向かってこの石を投げ落とすが逸れて地面に落ち、[[ペレグリン・トゥック]]が石を拾い上げる。このときにはこの石がパランティーアだとは気づかれなかった。
その後ペレグリンは衝動に駆られてこの石を覗き込み、サウロンに自分の姿をさらしてしまう。サウロンは長時間ペレグリンを尋問しなかったため、[[フロド>フロド・バギンズ]]や[[一つの指輪]]についての情報が漏れることはなかったが、この事件がきっかけで、石がパランティーアであることが判明、アイゼンガルドとモルドールの連携の理由も明らかとなる。すると[[ガンダルフ]]は、([[エレンディル]]の後継者としてパランティーアの正当な所持者である)[[アラゴルン二世]]にこの石を渡す。
後にアラゴルンは、[[角笛城]]を出発する前にこの石を使い、サウロンに自分の姿と[[アンドゥリル]]を見せつけて挑戦。そうすることによって、サウロンの目を[[モルドール]]国内(つまり[[フロド・バギンズ]])から逸らさせようとした。またその時同時にアラゴルンは石の力で、ミナス・ティリスに対し[[海賊]]などによる南方からの攻撃が迫っていることを知った。これが、アラゴルンが[[死者の道]]を通り、[[死者の軍勢]]を招集することを決意するきっかけのひとつとなる。またこの一連の経緯は、アラゴルンが一つの指輪を手に入れたのではないかという印象をサウロンに与えることになった。

[[指輪戦争]]の終結後は、この石が西方に残された唯一の機能する石となった。

*** [[アンヌーミナス]]の石と[[アモン・スール]]の石 [#b1d73ed1]

[[アングマール]]の攻撃を受けたとき、[[アルノール]]人によって[[アンヌーミナス]]及び[[アモン・スール]]から避難させられる。だが、アルノール最後の王[[アルヴェドゥイ]]の船が[[フォロヘル湾>フォロヘル]]で難破したとき、船と共に海中に没した。
アモン・スールの石はオスギリアスの石と並んで最も力が強く、北方のパランティーアの要だった。

*** [[エミン・ベライド]]の石 [#t64a958a]

[[エロスティリオン]]の塔に置かれていた。この石は他の石とは違い、西方の海の方だけを見ることができたという。[[エレンディル]]はこの石を使って[[ヌーメノール]]を偲び、また[[トル・エレッセア]]の[[アヴァルローネ]]の塔を見ることさえあったという(そこには全てのパランティーアの親石が置かれていると言われていた)。
エミン・ベライドの石は[[キーアダン]]と[[リンドン]]の[[エルフ]]によって管理されており、中つ国に残っていた[[上のエルフ]]も、時折この石を使って[[アマン]]を見たという。
この石は、[[エルロンド]]が西方へと去るとき、[[キーアダン]]が彼の船に乗せたという。

** 映画『[[ロード・オブ・ザ・リング]]』における設定 [#Lotrmovie]

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ミナス・ティリスの石は登場しない。
『[[ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還]] [[スペシャル・エクステンデッド・エディション]]』に於いてアラゴルンは、オルサンクの石をミナス・ティリスで使用し、サウロンに自分の姿を見せる。

** ゲーム『[[ロード・オブ・ザ・リングス オンライン]]』における設定 [#Lotro]

オスギリアスの石は敵の手に奪われており、[[アングマール]]の[[モルディリス]]によって使用されている。

** コメント [#Comment]

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