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連続放送活劇 「不帰の迷宮 −THE GREAT MAZE OF OVERKILL」

登場人物
GM
土師孝也
ココ
山寺宏一
ドコ
古本新之輔
スミン
藤谷文子
メインタイトルまで兼用――
あざとく盛り上がる緊迫した音楽と共に、前話のラストが繰り返される。
ホーガ
「ムフフフ…その究極の歌姫とは!」
GM
「俄に風雲急を告げるカラオケスナック『コロシアム』。果たして究極の歌姫とは?脚本のラクチンさを根拠にどこまで続くか、川井憲次大出血シリーズ!」
どぉんと重たいSEと共に、
テロップ・サブタイトル
第5夜『死闘! ギヌンガガップ』

GM
「川井憲次。東京都品川区出身。東海大学工学部原子力工学科中退後、音楽の道に入る。本シリーズの音楽担当。まもなく不惑。温泉と相撲観戦、安っぽいソースの匂いをこよなく愛する男……思えば彼も不憫な作曲家ではあった。持ち前のノリの軽さと人の良さにつけこまれ、どうしても断りきれずに引き受けた、怪しげかつ理不尽な仕事数知れず。減少の一途をたどる睡眠時間。にもかかわらず、まるで、おぞましい呪いのごとく、じわじわと増え続ける体重。何故?」
ココ
「(渋く)スタジオで出前ばっかし食ってるから」
ドコ
「(あくまで渋く)缶コーヒーがまた美味しくて」
GM
「大きな顔に小さな微笑み。健気で痛々しくさえもあるその微笑み」
ココ
「(とことん渋く)嗚呼!まう駄目だ。このままでは死んでしまふ……!」
ドコ
「(やっぱり渋く)虎を起こすには、長い棒を使え――毛沢東」
ココ
「(しつこく渋く)なに、それ?」
ドコ
「(くどいけど渋く)なんだろう?」
GM
「もはやこれまで、と思われたその時、女神登場」
ココ
「あ、それが究極の歌姫?」
ドコ
「なるほどぉ、そこに繋がるのね」
GM
「まだ繋がらない。彼女の名前は安田さん、カッコ仮名カッコトジ。それは誰もがうらやむ完全無欠の超有能なアシスタント。整理される仕事、管理されるスケジュール。けして誇張ではなく、彼女の登場によって川井憲次は、危うくその一命をとりとめたのであった。やれ、めでたしめでたし」
ドコ
「おっさん」
GM
「はい」
ドコ
「いや、ハイじゃなくて」
ココ
「めでたしめでたしって、川井憲次を語ってどうする」
GM
「だからさ、苛酷にして劣悪なる状況から、ようやく脱出した彼に大出血シリーズを要求するのは、人道的にも問題があるだろうと」
ココ
「ってことはカラオケデスマッチは、もうない、と?」
GM
「ない」
ドコ
「ふんじゃ、究極の歌姫もなし?」
唐突に、
スミン
「あるよ」
大仰に流麗な音楽と共に――
テロップ<究極の歌姫 スミン>

GM
「フクロモモンガかアライグマラスカルか。そこに、夜行性の森の小動物を思わせる一人の少女が立っていた」
スミン
「夢の逢ひは 苦しかりけり おどろきて かき探れども 手にも触れねば――
解釈:夢で逢うのは、つらいものであることよのう。はっと目が覚めて手探りしても、あなたは手にも触れないのだから」
ドコ
「歌って、そっちの方なの?」
ココ
「ま、これまでの杜撰な展開からして、うすうす予想はしていたが…… しかし、どのへんが究極なんだ?」
スミン
「このへん」
ココ・ドコ
「んん〜?」
GM
「ナンジャロケシティーチェーンが経営するカラオケスナック『コロシアム』のリーサルウエポン・究極の歌姫スミン。その究極たる所以とは――」
地の底より湧き上がるような土俗の響き。
スミン
「(ジャングルの鳥の声)」
ドコ
「ちょっとぉ。あんた、何すんの、いきなりぃ!?」
スミン
「(ジャングルの猿の声)」
ココ
「あなた、もしかして江戸家一門?」
スミン
「違います――(さらに、怪しげな鳥の声)」
GM
「念のために言っておくが、これはSE、つまりサウンドエフェクト、要するに効果音、ではない。スミンの肉声である。そして――おお、見よ!」
ずごごごごごと凄まじい地鳴り。
ココ
「おおおおおおぉ〜〜っ!」
ドコ
「ど〜ゆ〜こと、これ〜?」
砕け散る波涛。
GM
「ねじれる縦!」
ココ
「よじれる横!」
ドコ
「たわむ高さ!」
スミン
「屈折するななめ!」
ココ
「ななめ?」
GM
「変容する時空間!! 緋毛氈にミラーボール、壁には真紅のドレープカーテン。ついさっきまでカラオケスナックだったこの場所に、今、天井を突き破って生い茂るのは蘆木、鱗木、封印木。夜光苔の仄かな燐光に照らされて、水辺の葉陰に群れなす太古の両生類アンドリアス・ショイクゼリ。見よ!目の前に現出せしはジュラの花咲くテラ・インコグニータ!見よ!およそ10メートル四方。驚くべし!ここは30坪の人外魔境!」
ココ
「驚くべし、と言われても……」
ドコ
「困るよね……」
スミン
「説明しましょう」
ココ
「聞きましょう」
ドコ
「そうしましょう」
スミン
「私はスミン。リアノーン・シーのスミン・クローネ」
短い間。
ココ
「そんだけ?」
スミン
「えっ?だめ?」
ドコ
「う〜ん……ま、いいか」
ココ
「おい!」
GM
「ジェイン・フランセスカ・ワイルドはその著書の中で『リアノーン・シーは生命を与える妖精で、詩人や歌い手に霊感を授ける』と述べている。が、彼女の友人、詩人にして劇作家のウイリアム・バトラー・イェイツは『リアノーン・シーは、生命を燃焼させながら霊感を与えるため、優れた詩人や歌い手は短命なのだ』と説明している――強引であることは認めるが、こちらさん、歌とはけして無関係ではないわけだ」
ドコ
「ははぁ、妖精さんでしたか」
スミン
「私はスミン。リアノーン・シーのスミン・クローネ」
ココ
「あんたが何者かは判った」
スミン
「私はスミン。リアノーン・シーのスミン・クローネ」
ココ
「それは判った!」
スミン
「私は囚われの身でした」
短い間。
ココ
「そんだけ?」
スミン
「えっ?だめ?」
ドコ
「いいんでないかなぁ」
ココ
「本当に、いいのか?」
ドコ
「えっ?だめ?」
スミン
「いいかも」
ココ
「おまえらな〜!」
スミン
「“力”が……」
ココ
「“力”って何よぉ〜っ?」
スミン
「この世界には、私に長いセリフを言わせまいとする目には見えない“力”が働いているようで……」
ドコ
「うわぁ、あぶないセリフだ……」
GM
「私はゲームマスター。背広の上下はお父さんの戦闘服。私は――」
ちゅど〜んと爆発。
GM
「それはそれとして――妖精譚には時間と空間が超自然的に変移するというモチーフがしばしば登場する。リアノーン・シーのスミン・クローネ。彼女はその変移を体現する存在であった」
ココ
「てことは、なに、彼女ってば店に不利益をもたらす客を、不連続な時空間に放り出す、いわば用心棒?」
スミン
「切られると痛ぇぞ」
ドコ
「んなネタ、判らんて」
GM
「判った人はアンケートのお便りコーナーに元ネタを明記してテック編集部まで。正解者の中から抽選で、もしかしたらなんか送るかも」
ココ
「閑話休題」
GM
「まぁ、そういう認識でおおむね間違ってはいないのだが、実のところ『コロシアム』の連中も、彼女の本当の力は知らなかったのかもしれないねぇ」
スミン
「ねぇ」
ドコ
「なんで?」
GM
「用心棒、ボディガードの類ってものは守るべき者の近くにいてこそ機能するものでしょ。あんたらと、ここにこうしているのは筋が通らない」
ココ
「そう言えばあの連中はどうなった?」
GM
「時空の間に落ち込んで、運良くロストしてなければ、今も懲りずにカラオケやってるんじゃないの」
ドコ
「彼らは死んでもマイクを放しませんでした。そりゃ、また壮絶」
ココ
「じゃぁ、俺たちは、あの不毛なバトルの場から、彼女に助け出されたわけだ」
ドコ
「どうせならオーダーしたもん食ってからだと、もっと嬉しかったけど」
カランと氷の音。
GM
「バーボンのダブルとモロきゅう。自分のぶんだけは確保してある」
ココ
「きったねぇ〜」
GM
「意地きたなく注文するから」
ドコ
「もちのいい乾き物も注文しときゃよかったね」
ココ
「済んだことは仕方がない。とりあえず、どっかで立喰いコーナーでも探すか」
ドコ
「ふんじゃ、まぁ、そういうことで。スミンちゃん、ありがとね」
ココ
「縁があったらまた会おう」
ドコ
「さらばだ!」
スミン
「ところが、どっこい。そうは問屋がout of stock」
ドコ
「あうと おぶ すとっく?」
ココ
「在庫ぎれ?」
スミン
「そう、わかるかな。卸したいんだけど卸せないって、このニュアンス。私の方にも事情というものがありまして」
GM
「30坪の人外魔境。ココとドコは、その空間から逃れることができなかった
ココ
「なんでよ?たかが30坪だろ?10メートル四方なんだろ?」
GM
「定量的にはそのとおり。しかし、主観的には無限大。なぜなら、ここは――」
スミン
「私はスミン。リアノーン・シーのスミン・クローネ」
GM
「――が支配する閉鎖空間なのだから」
ドコ
「じゃぁ、どうしろって言うのぉ!」
ココ
「どうやら、ようやく事の核心に近づいたようだな、金田一くん」
ドコ
「おれ、そんな名前じゃない」
ココ
「雰囲気だからいいのだ、明智くん。要するに、ここから出たければ、上納金を献上しろとか、怪獣退治をしてこいとか、牛丼の出前をしろとか、どうせ、そういうことだろう!」
スミン
「そのとおりだ、法水(のりみず)くん!」
ココ
「おのれ……居直ったな草薙浅黄!」
スミン
「あ、それベタ」
GM
「ここでスミンの事情を語らなければならない。話はアイルランドの神話時代に遡る」
ドコ
「(ぼそっと)……好きにして」
GM
「女神ダーナを始祖とするトゥアハ・デ・ダナンはミレシウス族と戦って敗れ、海の彼方と地下へと逃れた」
スミン
「その地下へ逃れた一族こそ、シー。つまりゲール語で言うところの妖精なわけです。ちなみに、海へ逃れた者たちはティル・ナ・ノーグ、常若(とこわか)の国と呼ばれる不老不死の楽園を作って神様になりました」
GM
「シーという言葉が本来意味したものは“土の塚・丘”であり、彼の地には今もなお“妖精の丘”と呼ばれる場所がいくつも存在する」
スミン
「ねぇ、みんな。満月の夜に、妖精の丘のまわりを三度回るとね、妖精の国への入口が見つかるんだよ」
ドコ
「教育番組のおねぇさん、入ってるね?」
スミン
「ちょっと」
GM
「人々はシーという言葉を口にすることさえはばかって“善い人”あるいは“善いお隣さん”といった替え名で呼んで畏れ、敬い、妖精たちとなんとか折り合いをつけて暮らしてきた。んが――」
ココ
「見えた。みなまで言うな――最近の人間どもはなっとらん。私らシーをなんと心得る。ここらで一発ガツンとやっとかないと、ますます増長して手に負えなくなるに違いない、と――恫喝かけに人間の世界へ来たわけだ」
スミン
「(コギャルふうに)そうそうそう、最近の連中ってばぁチョベリバだしぃ〜」
GM
「は?チョベリバ?」
テロップ
<チョベリバ=超 very bad =超最悪>
ココ
「あんた何者?」
スミン
「私はスミン――」
ココ
「判った!聞いたオレが悪かった!ごめん、あやまる!」
ドコ
「でも、なんでまたこの地下迷宮に?」
GM
「思うに、シーの地下世界とこの迷宮とはどっかで交差してるのかもしれないねぇ」
ココ
「だとしても、それがまたなんでカラオケスナックに?」
スミン
「私は囚われの身でした」
ドコ
「……ひょっとしてループしてない?」
ココ
「台本で言うと*ページ前に戻ったな」
画像<猫を抱いた筆者・顔にモザイク>
テロップ<ごめん>
                  F.O.
強引に、盛り上がる音楽。
スミン
「シーの国から、私に与えられた使命。それは人類抹殺!太陽の光降りそそぐ地上に、シーの国を作るための第一歩をしるすこと!」
ココ
「言っちゃぁなんだが……」
ドコ
「あんまり説得力感じないねぇ」
スミン
「そうなんですよ……困ったな」
GM
「実際、迷宮内で最初に遭遇した『コロシアム』の連中からは、いいように丸め込まれ、手も足も出ないまま虜となっていたのであった」
ドコ
「アホじゃ……」
スミン
「アホ言うたらあかん」
ココ
「人類抹殺だの、地上侵攻だの、そんだけの大それた使命があるなら、普通、作戦とか戦略とか、いろいろ考えるだろうに」
スミン
「そこで、私は考えました」
ココ
「遅いわい!」
GM
「妖精にもさまざまな種類があるが、シーは元来、享楽的な種族なのである――たぶん。あんまり自信ないけど」
スミン
「今、ここにいるのは私たちだけです。ここで私はシーを代表し、あなたたちはヒトを代表しているわけです」
ココ
「うん、まぁ」
ドコ
「そうも言えるかな」
スミン
「では、ヒトの代表としてシーに全面降伏なさい!」
GM
「よりにもよって、この二人に――それは、あまりにも唐突な、なんともコメント不可能な申し出だった」
ココ
「ふむふむ。そうすれば、ここから出してもらえるわけ?」
スミン
「約束するよ」
ドコ
「んじゃ、降伏する」
スミン
「うそ?」
ドコ
「えっ?だめ?」
ココ
「いいよな、別に」
スミン
「だって、そんな簡単に……ほんとに、いいの?」
ドコ
「どうせ俺たち、ギルドから追われる身だし、今さら全人類、敵にまわしたところで、どうってことないもん」
ココ
「それ以前に、俺たちがここで降伏しても、それが外でヒトの総意として受け入れられるか、どうか。あんたがどう言おうと、世間は認めちゃくれんだろうな」
GM
「言ってて自分でむなしくないか?」
ココ
「たとえ明日、全人類が滅ぶとしても、私には今晩のおかずのほうが大切なのです。個人の利益が国家の利益に優先するのと同様、個人の利益は種の利益よりも優先されるべきものなのであります。そうだなドコ」
短い間。
ドコ
「それはともかく……」
ココ
「おい!」
ドコ
「あ、そうだ。どうせなら一緒にやろうか。人類抹殺、地上侵攻」
スミン
「いや、それは、ちょっと……」
ココ
「うむ。意外といいかもしれないな、それ。そうすりゃギルドの連中にも一泡ふかせられる。うん。いいかもしんない」
ドコ
「じゃぁね、俺たちが妖精の使者としてギルドの連中と交渉するってのは、どう?」
ココ
「いいねいいね。『人類の未来はあんたらの返事一つにかかっているんだ。さぁ、どうする?』」
ドコ
「『俺たちは、ま、どっちだっていいんだけどね』」
ココ
「『そこで提案――この際、これまでの行きがかりは水に流し、力をあわせ、共に、この難局に立ち向かおうではありませんかっ!』」
ドコ
「『我々は使者という立場を十分に生かし、必ずや人類有利に事を運びまする』」
ココ
「『うむ、こういう場合だ仕方あるまい。ココくん、ドコくん。よろしく頼む』」
ドコ
「やたっ!」
ココ
「これで晴れて自由の身!」
ココ・ドコ
「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
GM
「あんたら、頭に虫でもわいたか?」
スミン
「もういい」
ココ
「な?」
ドコ
「に?」
スミン
「私は別の人を探します」
ドコ
「そんなぁ〜!」
ココ
「ねぇ、ムーミン」
スミン
「私はスミン!」
ココ
「リアノーン・シーのスミン・クローネ! OK。判ってる」
スミン
「じゃ、行くね」
ドコ
「待って!」
スミン
「待てよ。そうか……」
ドコ
「そうそう」
スミン
「その手もあるね」
ドコ
「ね、ね、あるでしょ」
スミン
「出会った人をかたっぱしから閉じた世界に封じ込めていけば、世界はずいぶん住みやすくなるな、きっと」
ドコ
「ちが〜うっ!」
ココ
「あのね。落ち着いてよぉ〜く考えてごらん。そんなことをしていたら、いったい、どれほどの手間が掛かることか。効率が悪すぎる。それに、違う人を探すと言ってもだ、次に会うのはどんな奴か判ったもんじゃない。囚われるくらいならまだしも、今度は、君がロストされるとも限らない」
ドコ
「そうだそうだ」
スミン
「あうぅ」
ココ
「でだ、こういうのはどうだ?」
スミン
「なるほど!」
ココ
「まだ、何も言ってない!」
スミン
「お約束だから」
ココ
「これからドコが言うことを、忠実に再現できたら――」
ドコ
「え?おれ?」
ココ
「俺たちはもう何も言わない。君の好きにしてくれ。だが、できなかったら――そのときは、俺たちに従ってもらおう。忠実に再現できるかな?」
GM
「それはスミンの弱点を突いた、実に狡猾な申し出であった」
スミン
「一応、聞きます」
ココ
「ふっふっふ。かかったなっ!ドコ、口の中、血だらけにしても、これを言うのだっ!」
ドコ
「ジャズ歌手シャンソン歌手の新春シャンションショーに行く途中、シャー少佐の乗ったバス、ガス爆発」
ココ
「さぁ、君の番だ」
スミン
「あ〜。私、人間の言葉、よくわからない」
ドコ
「しゃべってたじゃないの、さんざん!」
スミン
「今は、これがせいいっぱい」
ココ
「充分だよ!」
ぺぽぱぴぷ、と安っぽい電子音。
スミン
「さて……突然ではありますが、どうやら迎えの者が来たようです」
ココ
「迎え?」
ドコ
「妖精の世界から?」
スミン
「いいえ」
強引に流麗なスミンのテーマ in。
スミン
「私は帰らなければなりません。私の故郷、17万光年の彼方、あなたたちの銀河系をはるかに越えて、あなたたちの銀河系と三連銀河をなす大マゼラン銀河。その中にある星の一粒。私の故郷。ああ、なにもかも美しい。遠い遠いあの星へ」
ドコ
「へ?」
ココ
「待て、こら。話が違うぞ」
スミン
「いずれにしても私は異界の女。みなさん、もうお別れです。つかのまではありましたが、楽しゅうございました。おかげで、おもしろいデータが取れました」
ココ
「なんじゃ、そりゃ!?」
スミン
「スミンは星に帰ります。さようなら、みなさん。さようなら〜」
ドコ
「そんなん、ありかぁ〜〜っ!」
遠ざかる安っぽい電子音。
GM
「行ってしまった…… 結局は正体不明の異界の女・
スミン
が去ってしまえば、そこは、およそ10メートル四方、30坪ほどのがらんとした地下空洞にすぎなかった」
ドコ
「なんか、どっと疲れたね」
ココ
「振り出しに戻る、ってとこかな……さ、一服したら、隠し扉でも探すか」
GM
「と、そのとき――」
ずごごごごと振動。
ドコ
「あ、ヤな予感がする」
ココ
「(げんなり)そういう予感はあたるんだな」
大崩壊の大音響。絶叫するココとドコ。
GM
「スミンが作った結界が決壊した結果なのか?」
ココ
「ややこしいこと――」
ドコ
「言うな!」
GM
「まだ無駄口をたたくだけの余裕はあるようだが、周囲の壁が、天井が、そして床が、がらがらと崩れていく!ココとドコは、このまま生き埋めになってしまうのか!?彼らを包む漆黒の闇、それは天使のしとねか悪魔の腕か。このままでは土に埋もれて死んでしまうぞココとドコ。昨日を知らず、今日を迷い、ココとドコの明日はどっちだ!」
   エンディングテーマ in。
GM
「連続放送活劇、不帰の迷宮 THE GREAT MAZE OF OVERKILL
第五夜『死闘! ギヌンガガップ』
出演、山寺宏一、古本新之輔、藤谷文子、そして私、土師孝也でお送りしました。なお、またしても、サブタイトルと内容に、あまり関連がなかったことをお詫びします」


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