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ロード・オブ・ザ・リング 字幕問題について(2/13)

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日本語版『指輪物語』について

日本語版小説『指輪物語』は1972年に出版された。その時の翻訳を行ったのが瀬田貞二氏である。
瀬田氏は、トールキンの意志の再現を試みた。そのため作中に登場する英語は、ほとんどが日本語に翻訳された。その翻訳がとにかく絶妙なのである。例えばStrider(大股で歩くもの)を馳夫はせおとしたり、Rangerを野伏のぶせとするなどといった具合に。ライトノベルやゲーム全盛の現在の日本ならば、そのまま「ストライダー」「レンジャー」とされただろう。だが、そうするとトールキンの意思に反することになるのだ。

しかし確かに瀬田氏の訳は名訳で絶妙ではあったのだが、問題もあった。その一つが固有名詞の混乱である。例えばElessarをある場所では「エレッサル」と書いていて、別の場所では「エレサール」と書いている。Thranduilを「スランデュイル」と書いていたり「スランディル」と書いていたりする。その一方で「エレンディル(Elendil)」と「エアレンディル(Earendil)」は別人だったりと、かなり分かり難かった。『指輪物語』の1000を越える膨大な固有名詞を考えれば、無理もないことではある。

イギリスにて、トールキン生誕100周年記念の『指輪物語』ハードカバー本が出ると、それに合わせて日本語版も版と翻訳を改めようという動きが起きた。そこで、既に他界していた瀬田貞二氏の仕事を引き継いだのが、田中明子女史である。
田中女史は日本語版『指輪物語』初版翻訳当時に瀬田氏の補佐も行っていた。改訂版において田中女史が行ったのは、瀬田氏の名訳の雰囲気を崩さず、固有名詞の日本語訳を統一すること。そして一部の誤訳(トールキンの意志に反した翻訳)を、トールキンの意志通りに直すこと(トールキン自身の『翻訳上の注意』に従い漏れていた点を直す)。さらに、劇中に登場するエルフ語などを、可能な限り実際の発音に近い片仮名で表記することである。その田中女史の姿勢は、トールキンの意志と瀬田氏の訳を非常に大切に扱った立派な仕事だった。

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