R2-D2と小人症と差別

8月13日、『スター・ウォーズ』シリーズにて、ドロイドであるR2-D2の中に入りR2-D2を動かしていたケニー・ベイカー氏が死去しました。

「スターウォーズ」R2-D2役の俳優が死去 | NHKニュース

イギリスの公共放送BBCなどによりますと、バーミンガム生まれのケニー・ベイカーさんは、幼い頃、小人症と診断され、16歳の時からサーカスでパントマイムなどをしていました。
映画「スター・ウォーズ」には、1977年に公開された第1作目から出演し、1メートル12センチの小柄な体を生かして、ジェダイの騎士の活躍を支えるロボット「R2-D2」の中に入ってコミカルな動きを演じ、一躍有名になりました。
「スター・ウォーズ」には、2005年まで合わせて6つの作品に出演しましたが、ここ数年は呼吸器系の病気を患い、13日、ベイカーさんが自宅で亡くなっているのを親族が見つけたということです。
「スター・ウォーズ」の監督を務めたジョージ・ルーカスさんは、ベイカーさんの訃報を受け、「困難な状況下でいつも懸命に役を務め、本当に紳士的な人だった。いつも人を笑わせる芸人で、R2-D2の心と魂を持ち、彼を知る世界中の人たちに惜しまれるだろう」と話したということです。

彼の死について、ルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミル氏や、エピソードI~IIIでオビ=ワン・ケノービを演じたユアン・マクレガー氏なども、Twitterで追悼のコメントを残しています。

さて先のNHKの記事にもある通りベイカー氏は小人症で、だからこそあの小さなR2-D2のボディの中に入ることができました。シリーズが進むにつれ、ラジコンなどで遠隔操作できるR2-D2が発達したことや、CGで描くこともできるようになったため、次第にベイカー氏がR2-D2の中に実際に入ることは少なくなりましたが、それでもエピソードI~VIまで通してベイカー氏はR2-D2としてクレジットされています。ストーリー上、R2-D2がほとんど動かないエピソードVII『フォースの覚醒』でも、ベイカー氏の名はクレジットされています。

さて『スター・ウォーズ』の大ヒットによりR2-D2も人気となり、ベイカー氏も一躍有名人となったわけですが、実はR2-D2やベイカー氏に対しては批判もありました。それは「小人症という障害を見世物、商売にしている」というものです。恐らくR2-D2が機械音しか発しないのも「障害者に対する揶揄だ」と受け取られたのではないでしょうか。

ですがその批判に真っ先に反論したのがベイカー氏本人でした。彼は小人症を自分の個性と捉え、「これで仕事を獲得したのだ」と語ったのです。

同様のことは過去に日本にもありました。ミゼットプロレス、簡単に言えば小人症など身長が低い人が行うプロレスで、主にメインの試合の前座として行われていました。ですが人権団体から「小人症を笑いものにしている」という批判が起こり、日本ではミゼットプロレスはほとんど行われなくなりました。ところがその結果、小人症の人が貴重な職を失ってしまうことに繋がり、かえって彼らを追いつめ、生活を困窮させてしまうことになったのです。とにかく皮肉な結果と言わざるを得ませんが、“よそ者が余計なことを言うべきではない”の一言に尽きるでしょう。

『スター・ウォーズ』に話を戻すと、この映画に出演することは(特にシリーズが進むにつれ)俳優の憧れとなりましたが、実のところこの作品に出演したことがきっかけで人生を狂わされるような結果になった人物もいます。エピソードIにて、幼いアナキン・スカイウォーカーとして出演したジェイク・ロイド氏などはその典型で、1000人以上とも言われる候補者の中から選ばれた彼ですが、狂信的なファンからストーカーのようにつけ回されたり学校でイジメを受けたりして俳優を引退。さらには統合失調症と診断されたそうです。私は、『スター・ウォーズ』の魅力はその世界観にあると思っているため、こういった俳優の話を聞くと何ともいたたまれません。

他にも『スター・ウォーズ』に関しては語り尽くせない色々な思いがあるのですが、とりあえず今はケニー・ベイカー氏および、全ての障害者の真の平穏を願うのみです。