日本のマスコミが「イスラム国」の名称を使い続ける別の理由

CNN.co.jp : 「イスラム国」「ISIS」「ISIL」 その違いは?

イスラム教国や日本のムスリム(イスラム教)団体はISILを、「イスラム教と直接関連づけているようで差別を招くし、国家として認められていない」などとして“イスラム国”と呼ばないように要請しており、日本政府もISILと呼ぶようになりました。欧米のマスコミもISILあるいはISISの表記を使用しています。ですが日本のマスコミはかたくなに“イスラム国”の表記を使い続けており、「最初に過激派と言っており、鉤括弧つきで表記することで区別し、配慮している」などと詭弁を使っています。

呼称「イスラム国」使用中止を求めるキャンペーン実施中。NHKはゼロ回答! | 中妻じょうた

マスコミが「ISIL」を「イスラム国」と呼び続ける理由に関する考察 - Togetterまとめ

こちらでは、ISILが企業名、商品名とかぶっているからだと推測しています。その理由を否定するわけではありませんが、私は別の理由を推測しています。

まず日本のマスコミは、大手TV局と新聞社が実質的に同じ系列と言うこともあり、さらに古い思想に固まっていて“新聞原理主義”です。また日本的“横並び”思想もあって、新聞、TV、他社で同じ用語を使いたがり、「他の会社がどうしようと、うちの会社はこう表記します」と単独判断したがりません。

そして“新聞原理主義”のため常に縦書きにしたときのことを考え、極力アルファベットのみの表記は避けようとします。特に“ISIL”などという、縦書きにしたとき“1(いち)”か”ー(長音記号)”かわかりにくい“I”が2つも入っている表記は嫌がります。

また、特に新聞は、「ひと目見ただけでは意味がわからない単語」は嫌います。例え記事の頭で“イスラム過激派組織ISIL”などと説明したとしても、読者は新聞記事を頭から読むとは限りません(ニュースも同じですが)。そして“ISIL”という表記を見ただけでは、知らない人には意味が全く推察できません。その一方で“「イスラム国」”と書いておけば、文字を見ただけで“イスラム系の国なのかな”と読者は納得します。記事冒頭に“イスラム過激派組織「イスラム国」”と書いておけば、途中から記事を読んで“イスラム国は国なのか”、“イスラム教はこういうことをやる宗教なのか”と読者が誤解するのは読者の責任です。読者が勝手に誤解しているだけなら抗議は来ません。ですが「ISILなんてわかりにくい、読みにくい書き方にするな」という抗議は来ます。それに比べれば、日本国内の健全なムスリムという少数派は、無視できる数で放置できます。さらにイスラム教に対する差別が出ても、ちゃんと記事を読まない読者が悪いということにできます。だから色々と理屈をつけては“ISIL”という表記を避け「イスラム国」と記述していると思われます。そして、新聞がそう書くのだからTVのニュースなどでもそれにあわせます。他の会社が「イスラム国」と言っているからどこも変えません。

“「子供」の「共」は「野郎共」などという言葉を連想させる蔑称なのでイメージが悪い”として“子ども”に切り替えるなど、日本人に対する日本語の言葉狩りについては、誤解であろうと素早く反応します。 日本にはそういうことにうるさい連中がたくさんいますから。ですが日本のムスリムはごく少数で、抗議運動を起こされてもたかが知れています。だから無視して「イスラム国」と表記し続けているのでしょう。