F-35は航空自衛隊のFXには不的確なのか?

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F-4EJ改の後継機となる、自衛隊の次期戦闘機(F-X)にロッキードF-35AライトニングIIが決定したという発表がありましたが、各マスコミがそれを批判しています。

F-35A

もっとも私は、それらのマスコミがF-X決定前に「F-35を選ぶべきではない」と言っていたのをほとんど見た覚えがないので何とも不思議です。ともあれ、色々とF-35に対する批判が出ていますが、その中には非常に的外れなものもありますので、検証していきたいと思います。

ステルス戦闘機F-35は、敵地に侵入して爆撃するための攻撃的兵器である。従って専守防衛の日本には相応しくない?

確かにF-35にはそういう任務をこなすのに有利ですが、F-35はそれしかできないわけではありません。ステルス能力は、地対空ミサイルなどが使用する地対空レーダーだけではなく、戦闘機などが使用する空対空レーダーにも有効です。つまりステルス能力を持っていれば敵戦闘機や敵ミサイルに発見されにくいため、空戦で優位に立つことができます。

領空侵犯対応では、自分の姿を相手に見せて領空侵犯機に警告する必要があるため、その段階ではステルス能力は確かにあまり役に立ちません。ですがいざ空戦しなければならないとなった時には、はっきりとステルスの意味が出てきます。

また一部で「F-35は対地攻撃専門」と間違って書かれていますが、決してそんなことはありません。空対空戦闘を最優先したF-22ラプターに比べますと、F-35は対地攻撃能力が重視されているのは確かですが、だからといって空戦能力を捨て去っているわけではありません。そのことは、アメリカ軍がF-15、F/A-18、ハリヤーなどの戦闘機・戦闘攻撃機を、将来的にF-35に置き換える予定であることからも明らかです。

それに今時の戦闘機は「対地攻撃能力もついているのが当然」です。昔みたいに戦闘機、(地上)攻撃機、(地上)爆撃機などとかっきり分かれていた時代とは異なり、今は軍用機の単価が非常に上がっていますので、可能な限り多様な任務をこなせるマルチロールな戦闘機が求められます。現在、自衛隊で運用しているF-15JもF-2Aも、対地攻撃能力を持っています。

さらに自衛隊の戦略の基本は「奪われた土地を後から奪い返す」ものです。そうなりますと、例えば尖閣諸島などに上陸してきた敵軍を爆撃する必要性などが表れます。その時、敵が上陸と共に持ち込むはずの対空レーダーや対空ミサイルで捕らえられにくいF-35は有利なわけです。

そして、自国でステルス機を運用するということは、ステルス機に対抗する戦術・技術を研究開発するためにも有効です。知っての通りロシアはPAK FA、中国はJ-20というステルス機を開発中であるため、日本も早めにステルス機を導入し、対抗策などを研究しておきませんと、時代に取り残される可能性があるわけです。

F-35は生産の遅れが心配。他の機種を繋ぎにした方が良かったのでは?

この意見には一理あります。ですが先に書いたように、中ロに対抗するためには日本もなるべく早くステルス機を導入した方が良いのです。また、今回選ばれたF-Xの次の戦闘機、F-2やF-15Jの後継機となるF-XXには、F-35の発展型が採用されるのはほぼ確実です。先に書いたように、将来的に米軍はF-15、F-16、F/A-18などを皆F-35で代替する計画ですし、F-35とは全く異なる新型戦闘機を開発する資金も技術も当分現れないでしょう。

であれば、日本もなるべく早くF-35国際開発のJSF計画に関与しておいた方が良いのです。そうすることで、日本の戦闘機開発技術を他国に売り込める可能性も出てきます(武器輸出三原則を見直す必要がありますが)。また、今回のF-XでF-35以外を40機ほどだけ調達し、将来また別の戦闘機を調達し……と無闇に運用する機種を増やしますと、補給・訓練・整備などさまざまな方面でめんどくさい問題が発生します。1つの会社にWindowsとMacとLinuxマシンとその他諸々が混在するようなもので、管理がややこしくなるのです(余談ですが、博物館のように雑多な機種を取りそろえた『エリア88』は、整備・補給を行う人間にとっては地獄でしょう)。同一機種だけに依存するのも、いざその機種にトラブルが発生したとき「他の全ての機体も危ない」という恐れが出てくるためまた危険ではありますが、40機程度の導入であれば統一した方が良いのではないでしょうか。

また「F-35はトラブル続きで信用できない」という意見は的外れと言えます。F-35は最新の技術を盛り込んでいるため、初期段階である程度のトラブルが発生するのはどうしても仕方がないことです。「今、現行のパソコンを買うか。もうちょっと粘って新型パソコンが出るのを待つか」という問題は誰だって悩むでしょう。「最新ハードやOSはバグが怖い」とはよく言われますが、最新のものは性能がいいのは間違いないのです。

そのため「F-35の開発がどうしようもないほど遅れたのに、自衛隊の他の機が退役し、日本の防空体制に穴が空く」ということにならない限りは、F-35を調達するのが良いということになります。問題は、今後のF-35開発計画がどれほど順調に進むかですが、こればかりは本当に占い師か未来人でもない限り断言は出来ません。

結果論ですが、F-35の調達時期がはっきりするまで、F-2を生産終了しなければ最良でした。ですが生憎F-2の生産終了が決定した時には、現在の状況は読めなかったでしょう。私個人としては「F-35を導入するまで、タイフーンをリースして運用する」という案も思い浮かびました。タイフーンはリース可能という話はユーロファイター社が発表していたのですが、機体だけリースしてきたとしてもパイロットや整備員は日本人を訓練しなければなりません。その費用対効果が現実的なものなのかどうかは、正直なところ私にはわかりません。

F-35は日本で満足にライセンス生産できないから、他の機種の方が良いのでは?

F-35は、機体の4割が日本でライセンス生産可能ということです。この記事にもあるように、将来的にはライセンス生産の割合を引き上げたいということですが、これがタイフーンもしくはF/A-18Eであれば、ライセンス生産の比率は最初からもっと高かったでしょう(タイフーンは「ブラックボックスなし」ということですので、全面的なライセンス生産も可能だったかもしれません)。ですがこの問題は「最新鋭機の生産に少しでも関わって技術の向上を求めるか、目先の金だけを目当てに旧世代機を生産するか?」「強い防空体制の確立と、国内に金を落とすことのどちらを重視するか?」の二者択一と言えます。またこれも先に書いたように、将来のことを考えるならば、世界各地で使用されることになるF-35の生産・開発に、日本もなるべく早く関与しておくのが理想的でしょう。問題はその「将来」まで、日本の防衛産業がもってくれるかですが……。多数の下請け企業によって支えられている日本の防衛産業ですが、昨今の情勢により防衛産業から撤退している企業が多数あります。これを阻止するためには武器輸出三原則の見直しが早急な課題なのですが、別の話になるのでその点についてはまたの機会にします。

「F-X選定は最初からF-35ありきだった」という批判もありますが、JSF計画に参加していなかった日本にライセンス生産が認められたというのは、大きな譲歩の獲得と考えて良いでしょうし、本当にF-35一択だったのであればこの譲歩を獲得できたかは疑問です。

日本独自の兵装は搭載できるの?

実のところ、この点が一番不安です。日本が独自開発したAAM-4AAM-5という空対空ミサイルが搭載できるのか? 特にAAM-4は大きいため、F-35の機内ウェポンベイに搭載するのは難しいという声がありますし、AAM-5にしてもF-35とのデータリンクをどうにかしなければなりません。改修が可能かどうか、今後の課題となるでしょう。

心神はどうした?

何度か「日本製のステルス戦闘機」として心神が紹介されていますが、まずこの文章には間違いがあります。心神はステルス戦闘機ではありません。先進技術実証機(ATD-X)であり、日本のステルス技術を研究するための機体です。心神は2014年に初飛行予定ですが、これが今すぐ飛んだとしても、心神は通常の戦闘機よりも小型であり、兵装搭載能力もありません。要するに戦闘機として使えません。心神の研究成果は、F-35と組み合わせることで、将来のF-XXに生かすこともできるでしょう。ですが現時点ではどうにもなりません。また現在のご時世で国産戦闘機を開発しても、開発費だけは高くつき輸出できないので生産期数は少なくなって単価は高くなり、F-35を購入するよりも遙かにコストが跳ね上がります。ニュース番組で「なんで高い金を払って外国製のものにするのか。なんで国産しないのか」とTVで言っていた馬鹿なコメンテーターがいたそうですが……。

F-35を導入したということは、日本も将来的に空母を持つの?

F-35B

F-35には、飛行場を使って離着陸を行う空軍型のF-35A、強襲揚陸艦などの狭い甲板を使って離着陸を行う、短距離離陸・垂直着陸(STOLV)のF-35B、空母の飛行甲板に離発艦を行う海軍型のF-35Cがあります。日本が採用を決定したのはF-35Aですので、日本の護衛艦のヘリ甲板では使えません。

ではなぜF-35BではなくF-35Aを採用したのかというと「F-35AはB型やC型に比べて開発が進んでいる」「B型は、垂直離着陸に使用するリフトファンを搭載しているため、そのスペースの分燃料搭載量が少なく、航続距離が短い」などの理由に寄ります。

「今導入するのはA型でも、将来的にB型を導入するための布石にできないか?」という意見もあるでしょうが、日本の護衛艦のヘリ甲板は、F-35Bのエンジンが垂直離着艦時に飛行甲板へ叩き付けるジェット噴流の熱に耐えられるように作られていませんし、F-35Bの重量も考えていませんので、魔改造しないと搭載は不可能です。改造するにしても相当のコストがかかるものと思われますし、米海軍のニミッツ級から比べるともちろん、英海軍のプリンス・オブ・ウェールズと比べても小型なひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦に少数のF-35Bをちょこっと搭載しても、費用対効果に似合うとは思えません。改造するなら、いっそのこと新しく空母を作った方がましです。

そもそも日本が空母を持つべきか? 私個人としては費用対効果が悪すぎますので、空母に金を使うくらいなら別の方面に防衛費を回した方が良いと考えています。空母を運用するには、空母独自の技術の確立、艦載機の購入、艦載機パイロットの運連、整備員の訓練など、とてつもなく金がかかります。

一方で、なぜ中国は空母を持ちたいのでしょうか? その目的は、第一列島線を越えた地域での行動が目的と言えます。例えば台湾有事が発生した際、台湾を援護に行こうとするアメリカ海軍を牽制するためには外洋艦隊、すなわち空母が必要であるということです。中国の戦闘機は航続距離が向上していますが、台湾や沖縄列島を飛び越えていくのは危険です。ですが空母に乗せて第一列島線を越えれば、第二列島線の間で思う存分航空兵力を運用でき、接近する米海軍を牽制することが出来ます。

逆に日本からしますと、日本の軍用機が超えなければならない列島線はなく、航続距離の問題さえクリアできれば(空中給油機でクリアできるでしょう)、南洋でも十分に活動が可能です。さらに南洋での航空機運用はアメリカ軍の空母に任せ、海上自衛隊は潜水艦などを使って、列島線付近から中国空母の封じ込めを図るのが理に適っています。つまり日米同盟がある限り、日本が独自に空母を持たなければならない理由は非常に低いと言えます(対潜能力が高く、航続距離が短いヘリコプターを乗せたヘリ空母を持つ意味はありますが)。「アメリカに頼らなくても済む、日本独自での国防を可能にするのが理想」という意見ももっともですが、これは日本の国力という身の丈を見ない発言ではないでしょうか? 「アメリカは近い将来、東アジアの紛争に介入することはなくなる」という予想の元に行動するならまた話は変わってきますが、これ以上いうと話の本筋が大きく逸れるのでここまでにしておきます。

結局F-XとしてF-35Aは理想的なのか?

個人的には、開発の遅れなどの不安はありますが、F-35AはF-Xとして他機種(タイフーン、F/A-18E)に比べると理想的と言えます(ただ、いざというときF-35A決定をひっくり返すだけの度胸を持っていないと、細部の交渉の時足下を見られますが)。そしてこれは究極の問題ですが、そもそも新兵器の導入は常に賭であり、その時点でわかる答えなど存在しません。答えは10年以上経ってからやっと判明するものです。それを、決まる前はただ「慎重に選べ」としか言っておらず具体的機首も上げていませんでしたのに、決まってから「おかしい決定だ」などと批判するのは御都合主義もいいところでしょう。