コンテンツは無駄に捨てられ、ユーザーは裏切られた、日本版『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン』

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さくらインターネットのゲーム事業についてのだらだらとした愚痴です。興味のない人は読み飛ばしてください。

Turbine社は、2007年4月より小説『指輪物語』を原作としたMMORPG『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン(LotRO)』のサービスを開始しました(映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作も『指輪物語』ですが、映画のライセンスと『LotRO』のライセンスは別物)。『LotRO』は、北米では『World of Warcraft』に次ぐ大ヒットになっているということです。また『LotRO』は、ヨーロッパ、ロシア、韓国、中国などでもサービスが開始したか、または開始する予定です。

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そしてさくらインターネットは、ロシア、韓国、中国に先駆けて2007年6月より『LotRO』の日本語サービスを開始しました。サーバ事業を行っていたさくらインターネットは、『ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン』でオンラインゲームに参入しており、『LotRO』は2つめのタイトルになります。ですがさくらは、2009年9月にこれらのサービスを終了することになりました。

4Gamer.net ― さくらインターネット,「DDO」「LotRO」の日本語版サービスを9月30日に終了(ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン アングマールの影)

『LotRO』は原作ファンにとっては、その世界観の完璧な再現度がたまりません。エルフやドワーフなど、現在にまで続くファンタジーのイメージを生み出した『指輪物語』の世界観の完成度の高さは、今も匹敵するものはありませんが、それを見事にゲームで再現しています。それだけではなく『LotRO』は、ゲームとしても非常に良くできています。私のように『指輪物語』に並々ならぬ愛着がある人だけではないプレイヤーの意見も聞きましたが、皆『LotRO』のシステムの完成度の高さを評価していました。

ではどうして日本では(日本でのみ)駄目だったのか。『LotRO』は、キャラクターの造形が日本人向けではないとか、(特にサービス開始直後)ゲームに要求されるマシンスペックが(日本人にとって)高めだったとか、そういった点が日本では厳しいのではないかと確かに思っていました。そのため「やっぱり日本では駄目だったか」ということでサービス終了したのであれば、私も諦めがつきます。しかしさくらインターネットの理解しかねる宣伝態度、そしてサービス終了までに至るまでの詐欺的態度に、私は憤懣やるかたない気持ちなのです。

何故日本で『LotRO』は失敗したか

日本で失敗した理由ですが、想像して細かい点を上げていくときりがありません。ですがまず明らかに、さくらインターネットの宣伝戦略のミスがあります。わかりやすくその例を挙げると以下の2つがあります。

まずは公式サイトの出来が非常に悪いということです。この点は、日本北米EU韓国ロシアの各『LotRO』公式サイトを見比べればすぐわかるでしょう。日本サイトのデザインは「サービス終了が決まったからこんな地味なデザインになった」のではなく、以前からこんなデザインでした(ついでにいうと、これでも日本サイトは1度リニューアルしてましになった方です)。このトップページをぱっと見て「ゲームをやりたい」とは思わないでしょう。このゲームがどんなゲームかさっぱりわからないし、このゲームの売りの一つであるスクリーンショットの一つも貼られていないのです。そしてゲームについての説明は非常に不足しており、ゲーム内でどうやってコミュニケーションを取るべきか、要するに簡単なチャットの方法の説明すらろくに書いていません

また、登録しているユーザーに対して、アップデート告知などのメールを全然送っていないというのは、他のオンラインゲームをプレイしている人からすると信じがたいことでしょう(告知は公式サイトとゲーム起動時のメッセージでのみ)。ゲームによっては、大したネタがなくとも毎週うっとうしいくらいにメルマガが送られているというのに、『LotRO』は「アップデートしたから、休眠ユーザーをゲームに引き戻そう」という試みをまるでしていませんでした。そしてさらに驚くべきことに日本版『LotRO』は、6月30日に発表された日本サービス終了の話についても、未だにユーザーに対してメール通知を行っていないのです。

さくらインターネットがまともに宣伝活動していたとして、それでも日本で『LotRO』が成功していたかどうかはわかりません。ですが「あるはずのチャンスを無駄にした」「もっとましにはなっていたはずだ」とは思わずにはいられないのです。

さくらインターネットの"詐欺"

上記の原因がどこまで影響したのかはわかりませんが、理由はどうあれさくらインターネットのゲーム事業は不振となり、2007年11月22日にさくらインターネットは「オンラインゲーム事業の不振に伴う債務超過」を発表(IR情報)。そして27日には、その責任を取る形で笹田社長が退任しました(IR情報)。さらに2008年3月5日には、Turbineとのゲーム提供契約期間を2009年9月までに短縮するという発表が行われました(ただしこれはIR情報としての発表で、ユーザーに対しての2009年9月以降にサービス移管を行うのかなどの、運営方針についての説明は一切なし)。

こうして不穏な空気ばかりが漂っていた日本版『LotRO』ですが、とりあえず日本での無料アップデートは続き、2007年12月、2008年4月、6月、10月に大型アップデートが実施されています。そして2008年11月3日には、北米で発表された『LotRO』初の有料拡張パック『モリアの坑道(Mines of Moria)』の、日本への早春無料導入が発表されました。

4Gamer.net ― 「ロード・オブ・ザ・リングス オンライン モリアの坑道」日本語版の導入が決定(ロード・オブ・ザ・リングス オンライン モリアの坑道)

The Lord of the Rings Online: Mines of Moria Trailer

これで大方の日本人『LotRO』プレイヤーは一安心しました。私自身も「『モリア』を導入するくらいなら、さくらインターネットでのサービスが終了するにしても、どこか他社が運営を引き継ぐか、あるいは最悪でも日本から北米サーバへのキャラクター転送サービスが行われるだろう」と楽観視することができました。

ところがこの期待は全部裏切られました。さくらインターネットはいつまでたっても『モリア』の導入を行わなず、ユーザーからの質問にも無視を続け、早春をとっくに過ぎた2009年6月末に『LotRO』サービス終了を発表。『モリア』導入も他社へのサービス移管も北米サーバへのキャラクター転送も行われず、文字通り日本の『LotRO』はすべて消滅することになったのです。

今から思い返すと、2008年11月の「拡張パック『モリアの坑道』導入」発表は、最初から嘘のつもりで言ったとしか考えられません。なぜなら、『モリアの坑道』が北米で2008年11月18日に導入され、その後北米で『モリア』の大型アップデートが2009年3月、6月にそれぞれ行われても、日本での『モリア』導入についてはなしのつぶて。その一方で、日本の後から『LotRO』サービスを開始した韓国のほうが、先に『モリア』を導入したのです。日本と同じく2バイト文字を使う韓国でも導入されたのだから、技術的問題によって日本に導入できなかったということはまずありえません。

また、『モリアの坑道』の早春導入を発表したものの、以後さくらインターネットはゲームについての宣伝を全く行わなくなりました。つまり「これから大規模アップデートも入るので、新しいプレイヤーの皆さんも安心してこのゲームを遊びましょう」と宣伝文句に使う気もなかったわけです。要するに「2009年9月でゲーム事業を捨てるのはもう決定だし、これ以上ゲーム事業に宣伝費などびた一文出さないけど、最後までゲームユーザーを引き留めて、可能な限り金を払わせよう」という意図のもとに嘘をついたという結論しか導き出されません。さくらインターネットの社長のブログでも、ゲーム事業に関してはひたすらスルーを続けており、ゲーム事業の切り捨てについてもひと言も触れていません。実際にゲームの運営を行っていたのはさくらインターネットに委託されたDOMIRU社ですが、DOMIRU社もさくらインターネットの方針について、何も知らされていなかったようです。

もともと、さくらインターネットのゲーム事業に積極的だったのは笹田前社長でした。

【4Gamer.net】 さくらインターネット代表取締役 笹田亮氏インタビュー:「D&D Online」をきっかけとし,日本のオンラインゲーム市場の活性化を目指す ―特集―
4Gamer.net ― [AOGC2007#09]「LOTRO」を国産/韓国産MMORPGと同じスタートラインに引き上げる,さくらインターネットの戦略とは?

ところがその笹田氏が去った(去らざるを得なくなった)後のさくらインターネットには、ゲームに愛着も何もない人しかおらず、また現ゲームユーザーに義理立てしようという人もいなかったようです。「さくらインターネットの本業はあくまでサーバ事業。ゲーム事業なんて前社長の道楽で始まったものは、とっとと潰してしまえ」と……。

さくらインターネットによって将来の可能性も潰された日本語版『LotRO』

『LotRO』は北米では『モリアの坑道』導入によってより世界が広がり、さらにシステムの改良によって、新規プレイヤーにとってもよりとっつきやすいものになりました。さらに『LotRO』は、コンシューマ版も開発中と報じられております。ですがさくらインターネットが日本語版『LotRO』の最悪の閉め方(アップデートなし、北米へのユーザー移行無しで突然終了)をしたため、「『モリア』で日本再参入を目指そう」とか「コンシューマ版でなら日本でもいけるんじゃないか」とか思った人がいたとしても、さくらの亡霊によって『LotRO』日本版再導入のチャンスは潰されたと言っていいでしょう。

またさくらインターネットの運営の醜態によって、北米産MMORPGの日本導入についてユーザーに不信感が植え付けられることにもなりました。そのため『LotRO』だけではなく、他の北米産MMORPGが日本導入する可能性をもさらに遠ざけてしまったとも言えます。『スターウォーズ・ギャラクシー(SWG)』、『エバークエスト(EQ)』などの例にあるように、元々北米産MMORPGにとって日本は厳しい市場ですが、少なくとも『SWG』や『EQ』は、日本サービス終了時に北米サーバへのキャラクターの転送サービスをやってくれました。ですがさくらのお陰で「北米製MMORPGの日本語版は、いつ何が起こって潰れるかわからないから手を出さない方が良い」というイメージができたのではないでしょうか。

『LotRO』はクエストが非常に作り込まれていて、ひとつひとつのクエストにじっくり読ませる文章が用意されており、その充実ぶりやストーリーの練り込み具合は1人用RPGに匹敵するほどです。しかし日本でのサービス終了によって、それらの「地獄の翻訳作業」を経てきた日本語文章を見ることも二度とできなくなります。現在私は北米アカウントを取得して『LotRO』のプレイを始めたところですが、私の英語力ではなかなかきついですし、それに他の国の人とのプレイでは「日本人でないと通じないネタ」が話せないのも寂しいです(他にも北米に移住した日本人『LotRO』プレイヤーもいるのですが、常に一緒に行動できるわけでもありません)。

それに、日本語版『指輪物語』の瀬田貞二氏の翻訳にどっぷり浸かった私としては、やはり日本語で中つ国(『指輪物語』の世界)を味わいたかったのです(最初はミスが多かった日本版『LotRO』の翻訳も、アップデートによってどんどん質が向上していました)。『指輪物語』を愛する私にとっては、ロシア語版や韓国語版での『モリア』の動画を見ると「母国語で『LotRO』を続けられるのが羨ましい……」と、本当に悲しくむなしい気持ちでいっぱいになります。

とりあえず私はさくらインターネットという会社を信用できなくなった(いつユーザーを切り捨てるかわからない)ので、レンタルWebサーバのさくらインターネットからの移住を考えているところです。

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このブログ記事について

このページは、教官が2009年7月14日 11:57に書いたブログ記事です。

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